所長命令であれば
《サイド:黒柳大悟》
「はっはっはっは!!」
…それで良い!
「それでこそ、きみらしいというものだ!」
上司を上司とも思わない西園寺君の発言だが、
それでも俺は満足している。
俺の考えを理解して即座に従ってくれる部下の存在には素直に喜びを感じるからだ。
…良い部下を持ったものだな。
研究所に残してきた職員達もそうだが、
西園寺君も藤沢君もいざとなれば俺の指示にしっかりと従ってくれる。
その事実には感謝の気持ちさえ感じてしまう。
…命を預けられる仲間がいるというのは実に素晴らしいことだ。
…お前もそう思うだろう?慶一郎。
かつてアストリア王国の王都において共に戦い、
共に助け合いながら生き延びた戦友の名を思う。
多くの仲間を失い、
心に傷を負った過去は消せないが。
それでも生きてさえいれば、
新たな出会いは訪れるものだ。
…生きてさえいれば必ず未来は訪れる。
だからこそ。
もしも生きて帰れたなら。
その時はまた…酒を酌み交わしたいものだな。
研究所の仕事が忙しいせいでなかなか思うように時間の都合がつけられなかった俺達だったが、
それでも『もう一度』と願ってしまう気持ちはあった。
…お前と酌み交わす酒が一番美味い。
それだけはどれだけ時が過ぎても変わらない事実だ。
例えどれほどの傷を負っても。
例えどれほどの絶望を感じても。
それだけは変わらないと思えるのだ。
…生きて必ず会いに行く。
だから、お前も死ぬなよ。
…慶一郎。
遠く離れた地にいる親友の無事を祈りながら、
目の前の戦場に立ち向かう覚悟を決める。
「西園寺君、藤沢君。色々と思うことはあるかもしれないが、ひとまず今はセルビナ軍の殲滅に力を貸してほしい。」
生きて帰る為に。
そして共和国を守り抜く為に。
「きみ達の力を貸してほしい。」
真剣な表情で願ってみたことで、
二人は笑顔で頷いてくれていた。
「当然です。その為に私達はここにいるんです!」
「私もですよ〜。所長に従わなかったら、私達は一体誰に従えば良いんですか?」
はっきりと答える西園寺君の隣で、
藤沢君は楽しそうに笑っている。
「大丈夫ですよ。私達は最初からそのつもりですから、安心して後方支援は任せてください。」
…ああ、そうだな。
俺一人では出来ないことを、きみ達に任せよう。
西園寺君と藤沢君の二人に感謝の気持ちを感じながら再び魔術を展開させることにした。
「きみ達には感謝している。」
だからこそ…あとを託そうと思うのだ。
「西園寺君。もしもこの戦いによって俺が倒れたら、あとのことはきみに任せる。」
「…は?」
俺の発言に西園寺君が反論する前に、
強引に説明を続けていく。
「きみならば安心してあとを託せる。」
西園寺君ならば托す価値があるからだ。
「俺の命が尽きるのが先か…それとも魔力が尽きるのが先かは分からないが、どちらにしてもあとのことはきみに任せるつもりだ。共和国の未来の為に、どうか最後まで力を尽くしてほしい。」
「………。」
俺の願いに西園寺君は戸惑っているように見える。
だがそれでも不満を言ってくるようなことはなかった。
「それが所長命令であれば…従います。」
俺の願いを受け入れてくれる様子だった。
「ああ、頼む。そして藤沢君も西園寺君の補佐を頼む。」
「はい!任せてください。つばめの面倒は私が見ますから!」
「…むっ!?今の瑠美の発言はちょっと気になるけど…まあいいわ。私としては最後まで所長の指示に従うだけです。」
…ははっ。
頼もしいことだな。
仲の良い二人に感謝しつつ。
まずはセルビナ軍への攻撃を再開することにした。




