ちまちまと
《サイド:黒柳大悟》
「まあまあ、そう怒るな西園寺君。ひとまず漁船の大半が海に沈んだのだ。今はそれで十分だろう?」
あっさりと。
そして気楽に答えてみるものの。
もちろんふざけているわけではない。
…ここでちまちまと漁船を狙い撃ちにしていられるほどの余裕はないからだ。
出来る限り漁船の数を減らして敵の接近を防がなければ救助作業中の海兵達の身に危険が迫ることになるだろう。
そもそも全ての漁船をたった3人で壊滅できるはずがない。
いつかは必ず…とり逃した漁船がこちらの船に接近するだろう。
そうなれば溺れかけの海兵達や救助作業中の海兵達を危険にさらすことになる。
…だからこそ。
多少無茶でも、今は敵の接近を阻むことが最優先なのだ。
…時間に余裕はない。
迷っている暇はないからな。
一人でも多くの仲間達の生存を優先して、
全力で魔術を展開し続けるしかなかった。
「西園寺君!藤沢君!あとのことはきみ達に任せる!!」
攻撃によって発生してしまう反動の処理を二人に任せて再び魔術を放つ。
「フルブレイクっ!!!!」
海を突き破るほどの破壊魔術だ。
再び広範囲に津波を広げながら海底を晒した海の底に、
陰陽師軍が乗り込む船の1隻が沈んでくれた。
…これで残り1隻だ。
都合よく海軍船の周辺にいた漁船の一団も海底に落ちてくれたのだが、
再び生まれた大きな津波が今回も俺達の船に押し寄せようとしていた。




