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THE WORLD  作者: SEASONS
4月21日
1730/1873

目覚めない可能性

…ひとまず危機は脱したわね。



北条辰雄の生存は私としても喜ぶべき出来事になったと思うわ。



少なくともこれで雪の悲しみが一つ減ったのは間違いないからよ。



それだけでも大きな意義があるわね。



…最初はどうしようか悩んだけれど。



結果的に北条辰雄を救出したのは間違いではなかったということよ。



もしも救出を途中で諦めていたら?


もしも雪の治療を止めさせていたら?



北条辰雄は助からなかったはず。



だけど雪が懸命な努力を続けたことで助かったのよ。



死んでいてもおかしくはなかったはずの状況から生還したの。



今はまだ意識を失っているけれど。


呼吸が安定して血色も良くなっているからもう心配はいらないはず。



…外傷はともかくとして。



内部に大きな問題がなかったから助かったのかもしれないわね。



脳や心臓を含めた臓器に関しては運よく致命傷を避けていたんじゃないかしら?


そのおかげで奇跡的に意識を取り戻せたんだと思う。



…とは言っても。



今後の経過を見ないことには、

まだまだ安心なんて出来ないけどね。



最悪の場合『このまま目覚めない』という可能性も十分に考えられるからよ。



…ここまできて植物状態は避けたいところよね。



本来なら医師に委ねるべきかもしれないけれど。


残念ながら残存する仲間達の中に医師は存在しないわ。



…そもそも雪と北条辰雄を引き離すわけにもいかないし。



今はこのまま様子を見るしかないわね。



「それじゃあ、北条辰雄が目覚めるまでしばらく様子を見ましょう。どの程度の時間がかかるのかは分からないけれど、今は他に手の施しようがないわ。」


「うん!ありがとう!お姉ちゃん♪」



本気で北条辰雄の生存を喜んでいる様子ね。



「…お父さん。お父さんは私が守るからね♪」



…ふふっ。



眠り続ける北条辰雄に微笑みを向ける雪の幸せそうな表情を見て、

自然と私も微笑みを浮かべてしまったわ。



…今はこれで良いのかもしれないわね。



雪の笑顔が見れるなら。


雪が幸せでいてくれるなら。


今はこれで良いと思うのよ。



…ひとまず問題の一つが解決したわけだから。



残る問題は慶太の部隊との合流だけね。



太陽の位置から予測する現在の時間を考えれば、

慶太の部隊はすでに反乱軍の砦を出発しているはずよ。



…このままここで反乱軍の到着を待っていても合流できるけれど。



今後の方針を話し合う為にも、

出来る限り合流を急ぐべきよね?



本来なら雪の精霊を介して慶太と通信を行う手筈だったんだけど。


雪の精霊は全て解除されてしまっているから、

今から精霊を生み出しても慶太の手元には届かないわ。



…精霊だけ飛ばすっていうのもまあ、有りだとは思うけどね。



どうせ同じだけの時間がかかるのなら移動しても変わらないわ。



…ここに留まるのはミッドガルムの軍隊や竜の牙の部隊に見付かる可能性もあるし。



身を隠すためにも移動は続けておくべきよね?



少しでも早く慶太と合流して今後の活動に備えるべきなのよ。



「もう少し休んだら北に移動しましょう。まずは慶太と合流するのが最優先よ。」


「うん!…あ、でも、お父さんを一緒に連れていっても良いの?」



…どうでしょうね?



慶太がどう思うかは分からないけれど。



「ダメだって言っても聞かないんでしょ?だったら良いわよ。まあ、本人が嫌だといえば話は別だけどね。」



北条辰雄が暴れださない限りは特に問題ないわ。


私としても一人くらいなら同行を許可しても良いと思うしね。



…でも、まあ、何ていうか。


…お父さん、ね。



竜崎一成様ではなくて、

北条辰雄を父と呼んでいるのよ。


そこまで思い込める雪に、

今更ここで口を挟むつもりなんてないわ。



「雪の好きにしなさい。慶太には私から説明してあげるから。」


「うん!ありがとう、お姉ちゃん!」



…ふふっ。


…可愛いわね。



「それぐらい構わないわよ。」



妹のためなら、この程度のことで文句を言うつもりなんてないわ。


むしろ頼ってもらえて嬉しいくらいよ。



「あと30分ほど休憩したら出発するわよ。」


「うん♪」



喜んでくれる雪の頭を撫でてから、

周囲の仲間達にも声をかけておくことにしたわ。



「もうすぐ反乱軍の本隊と合流できるはずだから、それまでもう少しだけ頑張るわよ!!」



「「「「「はいっ!!!」」」」」



…うんうん。良い返事ね。



本来なら『私』はみんなの敵なのに、

こうして私の指示を聞いてくれるのは素直に有り難いと思うわ。



…普通ならありえないから。



現在、反乱軍にとって戦うべき相手は竜の牙なんだけど。


当然、竜の牙に所属する魔術師は全て敵とみなされるわ。



…でもね。



私はその竜の牙の一族の血を受け継いでいるのよ。



竜崎一族に反乱を起こした、

『裏切者の血』を受け継いでいるの。




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