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THE WORLD  作者: SEASONS
4月21日
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1729/1965

雪の異変

「い、嫌っ!?嫌ぁぁぁぁっ!!嫌〜〜〜〜~~~っ!!!!!」



泣き叫びながら北条辰雄の体に抱き着く雪だけど。


それでも北条辰雄は何の反応も示さなかったわ。



意識を失った北条辰雄にはもう…何も言えないから。



力尽きた体。


消え去る命。



死者はもう何も応えない。



それでもね。


それでも私は思うの。



…最後の最後に意識を取り戻しただけでも奇跡的なのよ。



雪に残した感謝の想い。



その言葉だけでも奇跡だと思ってる。



…あの状況から意識を取り戻しただけでも、本来なら凄いことなのよ。



命が尽きる最後の瞬間に雪に想いを伝えた北条辰雄の意志の強さには敬意すら感じたわ。



…さすがは北条真哉の父だけのことはあるわね。



絶望的としか言いようのない戦場において、

自らの命よりも愛する人の幸福を願った北条真哉と同じように、

北条辰雄もまた雪の幸福を願って…想いを言葉にしてくれたのよ。



その意志の強さには尊敬の念を抱かずにはいられなかったわ。



…北条親子には敵わないわね。



最期まで優しい想いを貫いた二人を心から尊敬したいと思えたのよ。



…こんな魔術師が世界中にいれば、きっとこの世界から争いなんてなくなるんでしょうね。



魔術師狩りが横行する世界。


それでも北条親子のような存在が沢山いれば、

世界は変わるのかもしれないわ。



北条辰雄ほうじょうたつおね。



その名前は絶対に忘れないわ。



力尽きた北条辰雄に感謝しながら雪の体に手を伸ばす。


悲しみにくれる雪を抱きしめようと思って手を伸ばそうとしたんだけどね。



……ん?



…あれ?



不意に疑問を感じてしまったのよ。



…どうしたの?



泣いていたはずの雪の声が途切れていることに疑問を感じたの。



…雪?



疑問を感じながら雪の表情を覗き込んでみる。



そんな私の視線の先で、

北条辰雄の体に抱き着いていた雪はすでに泣き止んでいたわ。



まだ頬は濡れたままだけど。


それでも涙は止まっていたのよ。



「雪?どうしたの?」



喜びも悲しみもなく、

ただまっすぐに北条辰雄を見つめている雪に問い掛けてみると。



「えっと…?えっと…ね。」



雪は震える声で答えてくれたのよ。



「動いてるの。」



…動いてる?


…何が?



「動いてるのっ!」



…って、言われてもね。



「何を言ってるの?動いてるって何が?」



疑問を感じるばかりの私に、

雪は微笑みを浮かべながら答えてくれたのよ。



「だから!心臓が動いてるのっ!!」



…は?



悲しみから一変して喜びを表現する雪の笑顔を見た私は、

自分でも珍しく思うほど激しい動揺を感じてしまっていたわ。



…う、嘘でしょっ!?



雪の言葉が信じられずに北条辰雄の体へと手を伸ばしてみる。


そして胸の上に手を置いて心臓の鼓動を探ってみると。



…そんなっ!?



死亡したはずの北条辰雄の心臓が確かに動いていたのよ。



確実に死亡したと思った私の判断を否定するかのように。


北条辰雄の心臓は動き続けていたの。



…もしかして?



最期の言葉じゃなくて、

本当に目覚めたっていうの!?



雪の懸命な努力によって北条辰雄は死の淵から生還したということ?



その事実に気付いたことで

私も微笑みを浮かべてしまったわ。



…さすがは北条辰雄ね。



「雪の努力で何とか助かったようね。」


「う…うんっ!」



北条辰雄の生存を確認したことで、

雪は嬉しそうに何度も何度も頷いていたわ。



「生きてる!生きてるよっ!」



心臓の鼓動を確認して、

口元の呼吸を確認して、

幸せそうに微笑んでいるのよ。



かつては果たせなかった想いだけど。


今回は北条辰雄の命をつなぎ止めることが出来たことで幸せを感じている様子だったわ。



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