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THE WORLD  作者: SEASONS
4月21日
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1698/1897

心の迷い

《サイド:鈴置美春》



…う~ん。



どうやら手詰まりっぽいわね。



懸命に戦う黒柳所長の様子を眺めてから、

周囲の海軍にも視線を向けてみる。



…私はどうすればいいいのかしら?



戦闘区域に入ってからも何をどうすれば良いのかが分からなかったから、

親友と一緒に大人しく戦況を眺めていたのよ。



「私達も戦うべきかしら?」



今のところ私も治療班の一員として親友の千夏と二人で戦場の様子を窺っている状況なのよ。


ちなみに後輩の瑞希ちゃんは医務室で待機中だけどね。



…まあ、それはそれとして。



徐々に減速する船の運航速度を見ていた私も焦りを感じ始めていたわ。



「負傷者がいるのに助けにいけないなんて…最悪の状況よね?」



今すぐにでも助けたいのに、

海に落ちた共和国軍の海兵達を助けにいけないのよ。



こうして立ち往生になってしまった間にも、

セルビナ軍の漁船に狙われて次々と殺されていく様子を船の上から見ていることしか出来なかったの。



…このままだとたどり着く前に全滅しかねないわ。



「急いで何とかしないと…っ!」



…って、言ってもね?



思い付く方法なんて何もないのよ。



…あ~、でもね〜?



一つだけ…あるのはあるんだけど。


そこに踏み込めないでいるっていう感じなのよね〜。



私自身の心を守る最後の迷いのせいで、

動き出せずにいるのよ。



…黙って見ているだけだと何も解決しないわ。



それは分かってる。


そのくらいのことは私だって分かっているのよ。



…だけど、ね?



それでも心が拒絶しているの。



『戦う』ことを。



『命を奪う』行為を心が拒絶しているの。



…この手で、人を殺す?



それが出来るのなら迷いはしないわ。



もちろん攻撃魔術も学んでいたけれど。


あくまでもそれは護身程度の考えであって、

決して殺害を目的として学んできたわけじゃないのよ。



…そうじゃないとしても。



私も戦えば少しは前に進めるのよね?



だけどね?



…もしも戦えば。


…魔術を放てば。



誰かが死ぬことになるのよ。



名前も知らないセルビナ軍の誰かが死んでいくの。



その結果として殺人という罪と一生向き合っていくことになるのよ。



その覚悟と意志を持たなければ罪の意識に押し潰されて心が壊れてしまうかもしれないわ。



…私はどうなのかしら?



罪の意識と向き合う勇気が持てないと思う。



…人を殺すという一歩を踏み出す勇気が持てないから。



死ぬ、死なない…なんていう問題じゃないわ。



人の命を奪う行為が許容出来ないの。



一度でも踏み出せば、

二度と元には戻れないから。



一度でも誰かを殺せば、

その罪は一生消えないから。



…だから私には出来ないのよ。



仮にも医師を目指している立場の私としては、

人の命を奪う行為は本来の想いに反する行動だから。



もしも命を奪ってしてしまったら?


もしも人を殺してしまったら?



引き返すことなんて出来ないわ。



殺人の罪を侵した医師なんて恐怖の象徴でしかないからよ。



…人を救う為に、人を殺す?



それが正当防衛だとしても。


それが戦争だとしても。


心は割り切れないものよね?



…一度でも罪を侵せば、もう元には戻れないのよ。



そんなふうに思ってしまうからこそ、動けないでいるの。



「…どうすればいいの?」



思わず呟いた言葉が聞こえたのかしら?



隣にいた千夏が、

不意に私と向き合って微笑んでくれたのよ。



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