救世主様
《サイド:岩永一郎》
「ったく!!キリがねえっ!!」
…ああ、そうだな。
相棒がボヤきたくなる気持ちは俺にもわかる。
絶望的な状況というよりも、
際限のない敵の数に辟易していたからだ。
「そろそろヤバいぞっ!!」
…言われなくても分かってる!
学園では上位にいる俺達だが、そもそも学生だ。
本物の戦争に参加しても出来ることには限りがある。
…さすがにもう魔力が持たない!
俺もそうだが、相棒にも限界が迫っている。
二本のナイフから次々と雷撃を生み出しながら迫り来る漁船を必死に撃退していた遼一だが、
すでに魔力の限界が近付きつつある様子だな。
「…くそっ!」
疲労が限界に達したのだろうか?
遼一の動きが止まった瞬間に、
慌てて声をかけることにした。
「休んでる暇はないっ!!迎撃を急げ!!」
必死に叫びながらも両手で握り締める槍から炎を放ち続ける。
…とは言え。
俺の魔力もすでに底を尽きかけている状況だからな。
周りを気にかけている余裕はない。
…ちっ!!
「これだから物量戦は面倒なんだよっ!!」
苛立ちが抑えきれずに愚痴ってしまったが、
それでも攻撃の手を止められる余裕はない。
そんな俺の戦いに目を向けた遼一も、
即座に周囲の状況に視線を戻していた。
「はあ…。キリがねえ…まだまだ居やがる。」
…ああ、確かにな。
これまでの戦闘でかなりの数の漁船を沈めたはずなのに、
それでも周囲に迫る漁船の数は半分にもなっていないように感じられる。
…さすがにまずいか?
俺達だけに限らず、
海軍の魔術師達の魔力にも限りがあるからな。
「…どうやら向こうは、俺達の魔力を消耗させる作戦のようだな。」
「まあ、この状況だと…それしか考えられないよなぁ。」
遼一も同意してくれたが、
攻撃よりも回避を優先する漁船の命懸けの包囲作戦によって、
共和国軍の魔力は確実に消耗されている。
「一気に殲滅出来れば話が早いんだがな。」
「ははっ。確かにそうだけど俺達には無理だぜ?」
…まあな。
疲労を隠しきれない表情を見せながら深くため息を吐いてしまう。
詳しい戦況までは分からないものの。
東側に迫っていたセルビナ軍の艦隊は何らかの攻撃によって壊滅した事実だけは目撃している。
その事実は朗報だったが、それだけだ。
俺達の周囲を取り囲むセルビナ軍の数は何も変わらない。
「誰の攻撃かは知らないが、来るなら早く助けてほしいな。」
そうすればこの状況から脱出できるはずだ。
…と、考えたところで。
遼一が笑顔を浮かべながら話しかけてきた。
「その救世主様が到着したみたいだぜ。」
…はぁ?
…救世主だと?
笑顔を浮かべる遼一に視線を向けようとしたところで、
俺の視線がある一点で止まった。
…まじかっ!?
「あれは!!御堂龍馬じゃないか!?」
共和国軍の船の中でも一際巨大な軍船に乗り込んでいる人物に気付いた俺は、
今まで感じていた疲労も忘れて御堂の姿に視線を釘付けにしてしまっていた。
「とうとう来たのかっ!!」
自然と笑顔を浮かべてしまう。
御堂が生きているという噂話は聞いていたものの。
本人の姿を確認できたおかげで、
再び気力を取り戻すことができたからだ。
「東の艦隊を潰したのは御堂か!!」
「だろうなぁ。」
その事実に気付いた俺の言葉に同意するかのように、
遼一も嬉しそうな表情で頷いている。
「さすがは特風の代表だな!」
気力を取り戻した遼一が再びナイフを構え直す。
「ここまできたらありったけの魔力を込めて援護するぞ!!御堂の道を切り開くっ!」
…ああ、そうだな!
漁船への攻撃を再開する遼一の隣に並んだ俺も覚悟を決めることにした。
「軍船の進行を塞ぐ漁船に狙いを定めるぞ!しくじるなよ、遼一っ!」
「ああ!任せろっ!!」
二人揃って漁船に狙いを定める。
御堂の道を切り開く為に!
漁船に向けて攻撃を再開することにした。




