狙撃が無理なら
《サイド:岩永一郎》
「遼一!?まだ生きてるかっ!」
甲板を駆けながら大声で友の名を叫ぶ。
特風の一人として海軍に参戦している俺の呼びかけに、
同僚の大森遼一も戦闘を続行しながら何とか返事をしてくれていた。
「はあ!?当然だろっ!!」
二本のナイフ『ライトニングエッジ』を構えながら迫り来る漁船に向けて雷撃を放っている。
「雷王!!!!」
ナイフを一振りする度に幾つもの雷が発生して、
次々と迫り来る漁船に降り注いでいるんだが。
それでも遼一の攻撃で沈むのは1隻か2隻程度でしかなかった。
数百にも及ぶ漁船は小型だからこそ機動力が高いのか、
魔術が直撃する前に回避してしまうからだ。
「ちっ!破壊力が足りないか!」
直撃すれば漁船を沈めるのはたやすいんだが、
逆に言えば直撃しなければ漁船は沈まない。
「もっと速射性が高い魔術じゃないと、漁船を捕らえきれないだろうな。」
雷も決して遅くはないのだが。
そもそも動く標的を遠距離から狙い打ちにするという難易度が非常に高いせいで、
直撃を狙うのは容易いことではなかった。
「あるいはもっと大規模な魔術での範囲攻撃が妥当か?」
攻撃を続けつつも次々と軍船に接近して来る漁船を見た遼一は焦り始めている。
「このままだとセルビナ軍に乗り込まれるぞっ!!」
…ああ、そうだな。
焦りたくなる気持ちは俺も分かるが、
文句を言ってもどうしようもないだろう?
ひとまず遼一の隣に並んでルーンを構える。
「とりあえず落ち着け。」
真っ赤に燃える炎の槍を海に向ける。
『バーニングスピア』と名付けた槍を両手で構えながら俺も攻撃を仕掛けることにした。
「狙撃が無理なら、接近した所を撃墜すればいい!!」
遠距離への攻撃が無理なら、
近距離のみを潰せばいい。
「焔!!!」
炎の槍から放つ巨大な炎が、
軍船のすぐ側にまで接近していた漁船に命中する。
「まずは一隻!」
炎が直撃して一気に炎上していく。
「さっさと次を狙うぞ!」
漁船に乗り込んでいた数名のセルビナ軍の兵士達は、
炎に飲み込まれた漁船と共に海へと沈んでいったようだ。
「この状況なら敵を引き付けてから迎撃するのが妥当だろう?」
…とは言え。
次々と迫る漁船の全てを止めるのは難しいかもしれないな。
ナルベウス渓谷側から川を下って次々と姿を見せる漁船は刻一刻と数を増やしているからだ。
国中の漁船を全てかき集めたのかと思えるほどの数を揃えてきている。
これほどの数になると迎撃も簡単じゃない。
「漁船が近づいているぞ!!」」
漁船の多くは共和国軍の攻撃によって次々と海に沈んでいるんだが、
それでも全ては止めることは出来なかった。
「セルビナ軍が侵入したぞーーっ!!」
「すぐに殲滅しろっ!!海に叩き落とせっ!!!」
「軍船に漁船を近付けさせるなっ!!」
各地から聞こえる声。
幾つもの軍船が漁船からの攻撃を受ける中で、
共和国軍も必死に抵抗を試みている。
…だが。
セルビナ海軍の攻撃はまだこれだけではない様子だった。




