私の代わりに
《サイド:冬月彩花》
…さて、と。
準備は万端ね。
いよいよ暗黒迷宮の突破を目指して動きだすことにしたわ。
「それじゃあ、行ってくるわね。」
まずは休憩室の隣にある迷宮への入口を目指そうとしたんだけど。
「もう行くの?」
その前に背後から未来が声をかけてきたのよ。
「ええ、そうよ。」
振り返らずに足を止めることもないまま歩みを進めていく。
「奈々香とあずさの二人は未来に任せるわ。魔力が戻るまでの間、当分目覚めることはないと思うけれど。しばらくは様子を見てあげて。」
未来に二人を委ねて扉に手をかける。
そして『ガチャッ…』と音を立てて開く扉の向こう側へと歩みを進めながら、
一つだけ未来に伝言を託すことにしたわ。
「ああ、そうそう。もしも私がいない間に乃絵瑠が戻ってきたら、その時は私の代わりに伝えてもらえないかしら?」
隣の部屋に入ってから足を止めてお願いしてみたのよ。
「お帰りなさい…ってね。」
それだけをお願いしてみたことで、
未来は笑顔で引き受けてくれたわ。
「それくらいなら良いわよ~。伝えておくわね。」
「ええ、よろしくね。」
話を終えてから扉を閉める。
そうして私は休憩所をあとにして迷宮の入口を目指すことにしたの。
「7番目の迷宮。ここを乗り越えられるかどうかが私の戦いね。」
奈々香は失敗したわ。
歴代においてもここを突破できた魔術師は数えられるほどしかいないらしいわね。
…だけど、それでも。
ここを乗り越えられなければウィッチクイーンには手が届かないのよ。
最低でも暗黒迷宮を突破できる程度の実力を身につけなければ、
ウィッチクイーンに立ちはだかることさえ出来ない。
「今はまだ届かないとしても、いつか必ず追いついて見せるわ。例えあの女が女性最強の魔術師であったとしてもね。」
誓いを立てながら7番目の扉に手をかける。
「必ず乗り越えて見せるわ。」
想いを込めて迷宮に足を踏み入れる。
…全てを踏み越えて見せるだけよ。
何度も何度も心に誓いながら、
新たな一歩を踏み出すことにしたの。




