布団の中
「…って!!あっ、朝から何をしてるんですかっ!!」
必死に抗議してみるけれど、
美咲さんは笑顔で答えてしまうのよ。
「何って、もちろん目覚めのキスよ♪」
…は?
さらっと答える美咲さんの返事を聞いて言葉を失ってしまったわ。
…目覚め?
もちろん言葉の意味は分かるわよ。
だけど美咲さんの行動は理解できないの。
「…で、でも、寝込みは襲わないって…昨日…?」
「ええ、そうよ♪寝込みは襲わないわ♪」
控え目に反論してみたことで、
美咲さんはすごく楽しそうに説明してくれたのよ。
「そんないたずらは趣味じゃないからしないわ♪だけど起こす為には襲うわよ♪慌てる乃絵瑠ちゃんが見れるから…ねっ♪」
…は?
…嘘でしょ?
超ご機嫌な表情で答える美咲さんの笑顔を見て全力でため息を吐いてしまったのよ。
…結局、同じよね?
私はそう思うんだけど。
美咲さんにしてみれば違いがあるみたい。
「寝てる子にいたずらなんてしないわ♪乃絵瑠ちゃんの服を脱がしたり、胸を揉んだり、キスの跡を残したりはしてないから安心してね♪」
…………………………………えっと?
笑顔で告げてくる美咲さんの言葉を聞いて激しい不安を感じてしまう。
…ま、まさかっ!?
慌てて布団の中を確認してみたわ。
………。
…どうなのかな?
ひとまず服は脱がされていないみたい。
だけどそれ以外のことは確認しようがないのよ。
…だ、大丈夫、よね?
寝ている間のことは分からない。
でも、昨日の夜に無理矢理、美咲さんが私のベッドに潜り込んできた時には特に何もなかったはず。
少なくとも寝る前にキスを要求されただけで、
ただそれだけだったはずなのよ。
だけど眠りについてからのことは分かるはずがないわ。
…って言うか?
いつ寝たのかも覚えてないのよね。
すぐ傍に美咲さんがいるという緊張感と恐怖によって、
なかなか寝付けなかったのよ。
私よりも先に美咲さんが眠ってくれたことで少しは安心出来たんだけど。
その油断によって私もいつの間にか眠っていたみたい。
…で、何もされてれないわよね?
必死に考えても答えは美咲さんにしか分からないわ。
「本当に何もしてませんか?」
「ええ、何もしてないわ♪安心して♪」
無邪気に微笑む美咲さんの表情が全く信用できないのよ。
だけどここで言い合いをしても答えには辿り着けないの。
…何を言われても信用できないしね。
そう思うから、ひとまず追求は諦めたわ。
…何もなかったっていうことにしておこうかな?
今はそう思うしかないし、
何あったと知らされるのも怖いし。
「えっと、一応確認しても良いですか?」
「ええ、良いわよ♪」
疑惑の視線を向ける私に笑顔で頷いてくれる美咲さんに念のために問い掛けてみる。
「…まさかとは思いますけど。もしかして、これから毎日?」
目覚めのキスをするんですか…と言い終えるよりも先にね。
「もちろん、そうよ♪」
美咲さんはしっかりと頷いてしまったの。
「『おはようのキス』と『おやすみのキス』はこれから毎日してもらうわ♪」
…うわぁ〜〜〜〜。
はっきりと断言する美咲さんの言葉を聞いて、
再び深々とため息を吐いてしまったのよ。
…一日2回は必須なわけね。
朝と夜。
さらに不定期に美咲さんの要求が加わるのよ。
…本気でキスだけで汚される気がするわ。
今日という日も朝から絶望を感じる一日みたい。
「さあさあ、朝食の準備はもう出来てるわよ。今日は食べれる?それともまだ食欲がないかしら?」
笑顔で問い掛けてくる美咲さんの笑顔を見たことで、
『たった今、食欲がなくなりました』なんて思うけれど。
とりあえず無駄な抵抗しないほうが良いわよね?
「今日は食べます。」
「ふふっ。良かったわ。」
大人しく答えたことで微笑んでくれる美咲さんだけど。
今の私にとっては絶望の象徴でしかないのよ。
…でもまあ。
とりあえず今は一日でも早く美咲さんから卒業できるように、
ささっと訓練を終えたほうが良いわよね?
自分自身に言い聞かせながらベッドから降りることにしたの。
そして改めて挨拶をすることにしたのよ。
「えっと…おはようございます。」
「おはよ♪乃絵瑠ちゃんっ♪♪」
きちんと挨拶をしたことで、
美咲さんは幸せそうに微笑んでくれていたわ。
「早く食べましょう♪」
「あ、はい。」
機嫌良く歩き出す美咲さんに連れられて寝室を出ることになったのよ。
…今日も美咲さんは絶好調ね。
美咲さんのキスによって目覚めた私は、
今日も恐怖の一日を迎えることになってしまったの。




