気持ち悪い視線
《サイド:芹澤里沙》
………。
「………。」
………。
「………。」
…う〜〜〜~ん。
何となく居心地が悪いわよね?
無言で佇む兄は特に機嫌が悪いという感じには見えないけれど。
ほとんど会話に参加することがないまま、
ただまっすぐに私の姿だけを視線で追っているからよ。
…うぅ〜〜〜。
気持ち悪いわね。
兄の視線にそこはかとない恐怖を感じるから、
絶対に目を合わせないように行動しているの。
親友である百花の手をぎゅっと握り締めながら、
絶対に百花から離れないように少しずつ兄から逃げているのよ。
…はあ。
…ったく、ホントにもう。
何でついて来たのよっ!!
個人的には不満全開だったけれど。
それを言葉にすることは出来なかったわ。
もしも言葉にすれば言い争いになるのは確実だし、
喧嘩になるのは目に見えているからよ。
…でもね?
今の私には抵抗するだけの力がないの。
指輪によって力を封印しているということもあるけれど。
すでに全員が事実を知っているということもあって、
本来の本性を露わにしてでも狙いを定めてくる兄の説得なんて不可能だからよ。
そのせいで兄に対して逆らえない状況になっているの。
…怖いって言うか。
視界に映るだけでも気持ち悪いのよね〜。
なのに…それを言葉には出来ないのよ。
いざとなれば百花と淳弥が二人がかりで変質者を押さえ込むことは可能だとしても、
それだと淳弥はともかくとして百花まで怪我を負いかねないわ。
…それはちょっと、ね。
それだけは困ると思うのよ。
…私のせいで百花が傷付くなんて絶対に嫌っ。
私を大切にしてくれる百花に危険な思いはさせたくないわ。
そう思うからこそ兄に対して無駄な抵抗は諦めているの。
…とりあえず大人しくしていれば暴走しないはずよね?
願いにも似た心境で考えていると。
「大丈夫よ。ずっと私が側に居てあげるから。」
百花が耳元で囁きながら優しく微笑んでくれたのよ。
…あぅぅっ。
百花ってば、素敵すぎっ!
百花の笑顔に心から感謝したわ。
たった一人の親友の存在が何よりも頼もしく思えたからよ。
「ありがと、百花っ♪百花だけが私の心の支えよ!」
「ふふっ」
小声でやり取りをする私と百花。
そんな私達の姿を…兄はいつまでも見つめていたの。




