神如き存在
《サイド:フェイ・ウォルカ》
「誰の声かは分からないが言葉自体は覚えている。『もう少しだけ力を貸してやろう』と告げる言葉が聞こえた気がした。」
曖昧な記憶の中で微かに覚えている言葉をマリアに告げてから、
再びラングリッサーに視線を向けてみる。
「もしかすると、北条真哉が俺に力をくれたのかもしれないな。」
「………。」
それしか考えられないと思ったのだが、
俺に抱き着いたままのマリアにも異変が起きていた様子だった。
「今の一瞬で私の魔力も回復したわ。何がきっかけでそうなったのかは分からないけれど…。」
…どういうことだ?
マリアの魔力も回復しただと?
俺だけなら理解できなくもないが、
マリアの魔力まで回復した理由が分からない。
…魔力の供給が出来るのは誰だ?
心当たりは限られている。
…いや。
むしろそうとしか考えられない。
…まさかっ!?
あの話し方と、あの力だ。
思い付く人物は一人しかいない。
…まさかこのルーンは!?
天城総魔が残した力なのか!?
今まで気づかなかった可能性にようやくたどり着いた。
…このルーンは北条真哉ではなく、天城総魔が委ねた力なのか!?
北条真哉の力を具現化して俺の下に送り込んだ人物。
それが天城総魔だと理解したことで、
急速に全ての状況が理解出来た気がした。
…何故、天城総魔が北条真哉のルーンを俺に送り込んだのかはともかくとしてだ。
これでルーンの秘密は全て解決できる。
何故、俺の下にラングリッサーが現れたのか?
何故、俺にラングリッサーが使えるのか?
何故、俺とマリアの魔力が回復したのか?
それら全ての理由が特定の人物の名前だけで解決してしまうからだ。
…天城総魔。
魔術大会においてたった一度だけ対戦した相手だが、
それでも俺は天城総魔という人物に対して畏怖とも言える感覚を感じていた。
…あの男ならば、この奇跡を実現できるのか?
圧倒的な実力を持つ強者。
あらゆる魔術を構築する能力を持ち、
神話級の天使すら従える最強の魔術師。
それほどの男でもアストリア王国との戦争において亡くなったと聞いている。
…つまり。
死してもまだこれほどの奇跡を継続できるということか。
ラングリッサーに秘められた秘密に気付き、
再び天城総魔という人物に恐怖を感じてしまう。
…まさしく神如き存在だな。
ルーンに秘められた力と想い。
北条真哉の力を残した天城総魔は、
その存在が失われた今でも俺に力を与え続けているということだ。
その事実に崇拝とも言える想いを感じてしまう。
…この世の神か。
出来ればあの時に、
もう少し話をしておきたかったな。
過ぎ去った過去に想いを馳せても仕方がないが、
天城総魔が遺したルーンを握り締めながらマリアと共に立ち上がることにした。
「もはや恐れるモノは何もない。」
俺には北条真哉と天城総魔の力が托されているのだからな。
この『力』が俺に在る限り、
俺に恐れるモノは何もない。
「行くぞ、マリア!俺の中に友の想いが在る限り、俺が全力で共和国を守り抜いてみせる!」
マリアと手を繋ぎながら砦の外を目指して走り出す。
この手にラングリッサーを握り締めながら、
国境を目指して移動することにした




