嫉妬
《サイド:マリア・パラス》
…ごめんなさい。
心の中でカーターに謝罪しながらも、
私は眠り続けているフェイに視線を戻しました。
本来なら私も戦うべきかもしれません。
けれど私にはフェイを置いて離れることが出来ませんでした。
…だから、ごめんなさい。
何度も謝り続けます。
私にはカーターと一緒に国境に戻るなんて出来ないから。
沢山の仲間や親友のジェリルが命懸けの戦場にいることが分かっていても、
それでもここから動くことは出来ないのです。
…私はもう。
戦えないと思っています。
ただ純粋にフェイの側にいたいから。
ただそれだけを願ってしまうから。
…他には何もいらないの。
…私はフェイの傍にいたいだけなの。
愛するフェイの傍にいることだけが私の望みだから。
…ごめんなさい、みんな。
…ごめんね、ジェリル。
本来なら仲間と共に戦って戦争を終わらせるべきだというのは理解してる。
…だけど。
私には出来ないの。
…私はダメな女よね。
自分でも分かってる。
仲間の命よりも。
親友の命よりも。
共和国の未来よりも。
フェイの傍にいることだけを選んでいるから。
…私は最低な人間でしょうね。
他の全てを見捨ててでもフェイの傍にいたいと考えているから。
例え何を言われようとも。
誰にどう思われようとも。
ただフェイの傍にいたい。
それだけしか考えていないの。
…こんな私をフェイはどう思うのかしら?
全てを投げ捨ててフェイの傍にいるだけの私をどう思うのかしら?
無責任だと思う?
自分勝手な女だと思う?
少なからず不安を感じてしまうけれど。
それでも私はフェイの傍に留まり続けたい。
…私はフェイさえいればそれでいいの。
他には何も望まないわ。
…私はあなたの傍にいたいだけなの。
一心に願いながら、フェイに寄り添い続ける。
…あなただけが私の全てなの。
「だから…あなたの傍に居させて。」
願いを込めながらフェイに顔を近付けて、
そっと口づけを交わしてみる。
…愛しているわ、フェイ。
世界中の誰よりも。
この世界の何よりも。
ただフェイだけを想っているのよ。
…あなたの傍にいることだけが、私の全てなの。
そう想えるからこそ。
フェイのすぐ傍にある『ラングリッサー』に視線を向けてしまったのよ。
ここにあるのは北条真哉のルーン。
それが何故、フェイに届いたのか?
それが何故、フェイも使えるのか?
それが何故、フェイの魔力が尽きても消えないのか?
私には何も分からないわ。
そしておそらくフェイにも分からないと思う。
…だけど。
ラングリッサーは確かに実在していて、
フェイの傍に存在しているのよ。
…ねえ。
ルーンに嫉妬を感じるなんて言ったら、フェイは笑うかしら?
一人で苦笑してしまうけれど。
愛するフェイの命を守る存在のルーンに対して確かな嫉妬を感じていたわ。
…フェイを守るのは私の役目よ。
…ルーンなんかに負けないわ。
でも、ね。
…例え命が失われてもフェイを守ってくれる貴方には感謝しているのよ。
今は亡き北条真哉のルーンだけが遺されて、
フェイの身を守る武器として存在しているから。
…ねえ?
貴方もフェイの傍に居たかったの?
分からないなりに考えながら、
フェイの左手にラングリッサーを持たせてみる。
…ふふっ。
私と貴方の二人でフェイを守るのも悪くないわね。
そんなふうに思いつつ、
再びフェイの右手を握り締めたその瞬間に、
突如としてラングリッサーが光り輝いたの。
…えっ!?
ラングリッサーがまばゆいほどの光を放つと同時に、
急速に魔力が回復する感覚を感じたのよ。




