↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE WORLD  作者: SEASONS
4月21日
PR
1660/2361

その程度の自由は

《サイド:カーター・ベルナンド》



セルビナ方面にある国境警備隊の砦。


リン・ラディッシュ学園長が率いる部隊の活躍によって無事にセルビナ軍からの奪還に成功した国境警備隊の基地だったのだが、

その戦闘において砦の各所に被害が出たことと基地を制圧していたセルビナ軍が砦としての機能を破壊していたことによって、

国境警備隊の基地はまともに使えるような状態ではなかったようだ。



塀は打ち崩されてしまい、

見張り用の櫓も破壊されて、

すでに砦は砦としての役目を果たせなくなっているうえに、

多くの物資や食料までもが失われる結果となっていたらしい。



…あまり拠点としての意味はなさそうだな。



それでも基地を奪還したリン学園長の指示によって、

普段は訓練場として使用しているらしい大部屋が一時的に医務室として使用出来るように改装されている。



そして現在。



仮設の医務室にはこれまでの戦いによって負傷した魔術師達や、

その負傷者達の治療を行う為の魔術医師達が集まっていた。



…今はこれが精一杯だろうな。



戦時中に完璧な医療設備を整えるのは難しいからだ。


在り合わせの仮設でも仕方がないと思う。



…まあ、休めるだけでもまだマシか。



急造で整備された室内の片隅において、

セルビナ軍との戦いで倒れたフェイ・ウォルカも静かな眠りについている。



多くの負傷者が集まっていることと慌ただしい騒ぎで次々と人が出入りする医務室の一画。


布団さえない床に直接寝かせられている状況はどうかとも思うが、

安心して眠れるだけでも休息にはなるだろう。



「フェイ…。」



魔力を使い果たしたせいで意識すら失ってしまったフェイを祈るような心境で見守っているのは恋人のマリアだ。


マリアはフェイの傍に腰を下ろして、

眠り続けるフェイの右手をしっかりと握り締めながら、

ただじっと目覚めを待ち続けている。



「…お願い、フェイ。目を覚まして…」



想いを込めて祈り続けるマリアだが、

魔力を失って倒れた魔術師は魔力が完全に回復するまで数日間は目覚めない。



魔力が底を尽いて倒れたフェイの場合。


多国籍軍の中において最も魔力が多いマリアほどではないが、

オルバ学園長や鞍馬隊長に迫る魔力の総量だからな、

目覚めるまでに数日はかかるだろう。


それが医師の判断であって、

マリアがどれほど祈っても変わることのない現実でもある。



「…フェイ…。」



意識を失ったフェイに何度も呼び掛けるマリアの健気な姿を見て、

一人で小さくため息を吐いてしまう。



…完全に二人の世界だな。



だから何だと言うつもりはないが、

マリアの反対側に座ってフェイの様子を見ていた俺は二人を残して立ち上がることにした。



「フェイは任せる。」


「………。」



瞳に涙を浮かべて今にも泣いてしまいそうな表情で俺に視線を向けるマリアを見て、

再びため息を吐いてしまう。



…はぁ。



そんな顔で見られても、

俺にはどうにもならないんだがな。



助けを願うような表情のマリアだが、

この状況で俺に出来ることは何もない。



怪我をしているわけではなくて、

魔力を失っただけだからな。



何日か待てばいずれ目覚めるだろう。



それまでは何をしても無駄だと思いながらも、

一応マリアに声をかけておくことにした。



「俺は一足先に国境に戻る。」



戦力は一人でも多いほうが良いだろうからな。


フェイやマリアほど役立つとは思わないが、

ここでじっとしているよりは良い。



「マリアは無理に戦場に戻る必要はない。フェイが目覚めるまで魔力の回復に努めておけ。」



マリアはフェイが目覚めるまでここにいればいい。


待ってさえいればフェイは必ず目覚めるんだ。



「だからそんな悲しそうな顔をするな。すぐに目覚めると信じてフェイの傍にいてやれ。」



その程度の自由は認めるべきだろう。



「フェイが復帰するまでの間は俺達だけで何とか凌いでおくからマリアはここに残れ。」



戦いに集中できないマリアを残して、

一人で医務室を出ることにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。