鏡に映る姿
…どこへ行くのでしょうか?
同じ視線で見る景色に常盤成美さんの姿は映りません。
水晶玉に映るのは常磐成美さんが見る景色だけです。
だから常磐成美さん自身の姿は見えませんし、
常磐成美さんが見ていないモノは決して見えません。
…何かを探しているのでしょうか?
推測しながら水晶玉を見つめている間にも、
常磐成美さんはキョロキョロと周囲を確認しながら歩みを進めていました。
そして。
…あっ!
常磐成美さんの視線が止まったことですぐに気付いたんです。
そこが実際にそうなのかは分かりませんけれど。
何となく予想は出来ます。
まっすぐに歩みを進める常磐成美さんの手が扉に伸びて、
扉が開かれるのとほぼ同時に水晶玉から視線を逸らそうとしたのですが、
その前に一瞬だけ『その場所』を見てしまいました。
最後に見えたのは、お手洗いです。
そこで何をするのかなんて考えるまでもないので水晶玉から視線を逸らそうとしたのですが、
その前に鏡に写る常盤成美さんの姿を目にすることができました。
…今の人が常盤成美さん?
もう一度確認したい気はするのですが、
この状況で水晶玉を眺めるわけにはいきません。
…あとでもう一度見られるでしょうか?
しばらく水晶玉から視線を逸らして、
数分ほど待ってからもう一度水晶玉を覗いてみると。
今度は洗面台で手を洗っている常盤成美さんの姿が映っていました。
可愛らしい小さな手を綺麗に洗ってからタオルで水分を拭き取る姿です。
手を洗い終えた常磐成美さんは、
ホンの数秒間だけでしたが洗面台の鏡に視線を向けていました。
…この人が常盤成美さんなんですね。
初めて目にした常磐成美さんの顔をじっと見つめます。
…この人が。
美袋翔子さんと常盤沙織さんの心を受け継いでいる人だと初めて知りました。
…可愛い人ですね。
常盤沙織さんの面影を持つ常磐成美さんの顔を知ったことで改めて謝罪しようと思いました。
…ごめんなさい。
今の私にはその一言に思いを込めることしかできません。
常盤成美さんを戦争に巻き込むつもりはなかったにも関わらず、
受け継いだ力によって戦争に巻き込んでしまったからです。
…力がなければ戦争に巻き込まれずにすんだのに。
だけど。
力を受け継がなければ目が見えるようにならなかったのも事実です。
だからこそ謝罪することしか私にはできません。
…ごめんなさい。
…出来ることなら助けてあげたいけれど。
私はここから動くことができません。
ここにいなければいけない理由があるからです。
…だから今は、ごめんなさい。
本当なら今すぐにでも救いの手を差し延べたいと思うのですが、それは出来ませんでした。
ただ一つの目的の為に、
この砦から離れることが出来ないからです。
…ごめんなさい。
何度も謝りながら水晶玉から視線を逸らしました。
…ごめんなさい、成美さん。
今は祈ることしか出来ませんけれど。
…もしも全てが終わったら。
その時はちゃんと謝りに行きます。
…だからそれまでは。
私は私の役目を果たす為に。
そして全ての想いを叶える為に。
今日という日を生きていこうと思います
…私もここで戦います。
例え目的と内容は違っていても、
私は私の叶えたい願いの為に生き続けることを選びました。
…いつか逢えますよね?
…成美さん。
その日の訪れを待ち続けながら、
今日という日の朝を迎えました。




