戦争に巻き込んだのは
…やっぱり。
やっぱり一緒にいるんですね。
出来ることならそうではないことを祈っていたんですけど。
なかなか思い通りにはならないですね。
例えこの状況が全て事前に定められた計画通りだったとしても、
常磐成美さんにはジェノスに留まっていてほしかったと思っていたからです。
それが…私の願いだったからです。
ですが、私の願いでは常磐成美さんの運命を変えることは出来ませんでした。
ただ想うだけでは何も変わりませんので、
こうなってしまったのは必然だったと言えるのかもしれませんけれど。
それでも私としては戦争と関わることがないまま、
平穏な日常を過ごしてほしいと願っていたのです。
…本当に、これで良いのですか?
常磐成美さんから少し離れた場所にあるベッドで眠りについている御堂さんの寝顔を眺めながら届かない想いを問いかけてみました。
…本当に、戦争に参加させるのですか?
常磐成美さんまで戦争に参加させる必要なんてないはずです。
こんなふうに戦場に連れて行かなくても、
常磐成美さんを守る方法は他にも幾つかあるはずです。
…それなのに、巻き込んでしまうのですか?
決して御堂さんを責めるつもりはありません。
ですが、これでは確実に『終焉』が訪れてしまいます。
もしもこのまま計画が遂行されるようなことになれば、
常磐成美さんの瞳は必ず光を失ってしまうからです。
…それでも。
その先に進む勇気を持つことが定められた運命でもあるのですが、
私としては悲しみを乗り越えた先にある未来よりも、
優しい幻想と共に生きる日常のほうが幸せのように思えます。
例えそれが…誰も望まない未来だとしてもです。
そう思うことが私の勝手な願いだとしても、
常磐成美さんには幸せな夢を見ていてもらいたいと思うんです。
…ですが。
もしも貴女が望むのなら。
もしも常磐成美さんが願うのなら、
私は私の役目を果たそうとも考えています。
それが『私に課せられた役目』だからです。
…いえ、違いますね。
それが『私の犯した罪』だから…と言うべきかもしれません。
私が行ったことに対する最終的な結果を知りながらも、
無関係な常盤成美さんの運命を捻じ曲げてしまったからです。
…本当に巻き込んでしまったのは私ですね。
御堂さんが戦争に巻き込んだわけではありません。
私がそうなるように仕向けてしまったんです。
平和な日常を願いながらも、
戦争への道のりを用意してしまったんです。
何も知らない常磐成美さんを、
私達の都合で勝手に計画に加えてしまったんです。
それが常磐成美さんのためであり。
同時に御堂さんのためだとしても。
他人の人生を勝手に操作しているという罪悪感はどうしてもぬぐえません。
…本当に悪いのは私ですね。
御堂さんを責めることはできません。
私にはそんな資格がないからです。
…ごめんなさい。
眠る御堂さんに謝罪しながら、
常磐成美さんにも頭を下げました。
離れた場所から思うだけでは意味はありませんけれど。
それでも謝らずにはいられなかったんです。
…ごめんなさい。
…巻き込んでしまって、ごめんなさい。
届かない想いを何度も呟きながら、
ただただまっすぐに水晶玉を見つめ続けます。
そうして申し訳ない気持ちで二人の様子を眺めていると。
常磐成美さんは周囲に気を使うような動きでゆっくりとベッドから下りて一人で歩きだしました。




