成美が見る景色
《サイド:???》
地上に戻った竜崎さんが部隊を召集して出発の準備を進めている頃。
地下の一室に取り残された私は、
竜崎さんから受けとった水晶玉と静かに向き合うことにしました。
…本当に見えるんですね。
一人きりで席について、
テーブルの上に置いた水晶玉を見つめています。
先ほどまでは何も映っていなかったのですが、
ついさきほどから見たことのない景色が映り始めたからです。
おそらくこれが…常盤成美さんが見ている世界なのではないでしょうか?
…不思議ですね。
ここではない景色が水晶玉に映し出されているからです。
おとぎ話や占いで水晶玉に何かが見えるという逸話は聞いたことがありますけれど。
まさか本当に映像を映し出す水晶玉が存在するなんて思ってもいませんでした。
こことは全く異なる景色。
映し出されているのは船内の様子でしょうか?
…どうやら目が覚めたようですね。
眠りから目覚めたのだと思います。
ゆっくりと体を起こした常盤成美さんは、
静かに室内を見渡してから、
隣のベッドで眠る人物の寝顔に視線を向けていました。
…この人は確か、栗原薫さんですよね?
以前に数回だけですが、
栗原薫さんとお会いしたことがあります。
だから水晶に映る人物を見て、
すぐに誰かは気付けました。
…気持ち良さそうに寝てますね。
栗原薫さんの寝顔を見ているだけで、
自分でも不思議なくらいに自然と微笑みを浮かべてしまいます。
…元気そうで良かったです。
あまりお互いのことは知りませんけれど。
それでもほのぼのとした温かな気持ちを感じてしまうんです。
その理由は栗原さんの無事な姿が確認出来て安心できたからでしょうか?
自分でも良く分からない感情なのですが、
個人的な理由で栗原さんには幸せでいてもらいたいと願っています。
…栗原さん。
遠く離れた場所で眠る栗原さんを一心に見つめ続けました。
水晶玉に映るのは本当に常盤成美さんと同じ目線の景色のようですね。
ベッドで眠る栗原さんをしばらく眺めていた様子の常盤成美さんでしたが、
不意に視線を逸らして室内を見渡し始めました。
まるで誰かを捜しているかのような仕種です。
…もしかして?
私が気付くのとほぼ同時に、
今度は御堂龍馬さんの姿が水晶玉に映りました。




