なかったことに
《サイド:長野淳弥》
「そろそろ代わりましょうか?」
「いや、大丈夫だ。」
交代が必要かどうかを訊ねてみたのだが、
特に必要がない様子だった。
「グランバニアはもうすぐだからな。心配はいらない。向こうに着いてから休憩をもらうつもりだ。」
………。
どうやら神崎に代わるつもりはないらしい。
それはそれで構わないと思うのだが、
他にすることがないせいで手持ち無沙汰を感じてしまう。
…誰かさんのおかげで中途半端に寝たせいで眠くないんだよな。
正確に言えば寝ていたわけではなくて気を失っていたのだが。
今更そこを問題にしようとは思わない。
里沙にしろ、芹澤啓輔にしろ。
人の言うことを聞かないどころか、
謝罪すらしなさそうだからな。
だからこそ二人に対しては極力関わらないようにしていた。
…とりあえずはなかったことにしておこう。
それが一番無難だからな。
諦めの心境で溜息を吐きつつ、
里沙から離れた場所へと移動する。
そしてこれまでの流れを改めて頭の中で整理することにした。
…まあ、思い出したくない問題もあるが。
姉との再会。
秘宝の存在。
米倉宗一郎の行動。
自分の潜在能力。
そして翔子の死。
それら様々なことに思考を巡らせる。
…まあ、少しでも考える時間が出来たのは好都合だな。
これから先も続いていく未来に進み続ける為に。
グランバニアに到着するまでの僅かな時間の間に気持ちの整理を行うことにした。




