力量を超える役割
《サイド:鞍馬信彦》
「北条司令官が不在という現状だからな。ここから先はきみに部隊の指揮を任せたい。」
………。
部隊の指揮を?
「北条司令官が抜けた穴埋めを僕が…ですか?」
「俺やリンでは力不足は否めないが、きみならば全部隊を有意義に動かせるはずだ。」
…いや、それはどうだろうか?
確かに僕は軍人としての教育を受けているから部隊の指揮をとることも出来なくはないと思う。
だけど全部隊を上手く動かせるかどうかとなると自信がない。
僕にはまだまだ北条司令官ほどの実力がないからだ。
知識も経験も北条司令官には全くと言っていいほど届かない。
それになにより、
これほど大規模な部隊の指揮なんてどうすればいいのかが分からなかった。
…どうするべきだろうか?
必死に頭を働かせてみる。
だけど思い浮かぶ言葉は『分からない』という不安ばかりだった。
…僕には無理だ。
部隊の隊長として指揮をとるくらいなら出来るものの。
全軍を動かすとなると話が変わってくる。
ただ単に部隊を率いるだけではなく、
敵軍の動きも読んで数手先までの作戦を考える必要があるからだ。
部隊の指揮ならともかく、
軍の指揮となると僕にはまだ無理だ。
自分の力量を超える役割が回ってきたことで極度の重圧を感じてしまう。
僕にとって北条司令官は誰よりも尊敬すべき人物であり、
たどり着きたいと願う憧れの存在だったからだ。
…なのに。
北条司令官の代わりなんて出来るはずがない。
はっきり言うならこれほどの大役をこなせる自信がなかった。
…それでも。
指揮官が不在では軍が軍として動けないのも事実だ。
統制のとれていない軍では壁の役目すら果たせない。
だからこそ全ての軍をまとめられる指導者は必要になる。
…どうする?
すでにリン様とオルバ様の指揮官としての実力は把握しているために、
二人と比べればまだ自信が持てるとは思う。
北条司令官には届かないとしても、
現状を考えれば自分が最も適任だというのは理解できる。
…北条司令官が不在の間は僕が補うべきだろうか?
これからずっと、というわけではないんだ。
北条司令官が復帰するまでの間だけだと考えれば、
一時的に指揮官として立ち回るのは良い経験になるかもしれない。
それに何事もやってみなければ結果なんて出ないとも思う。
やる前から出来ないと言っていては何も始まらないんだ。
それでは北条司令官に顔向けできないうえに、
総司令官を務める父さんにも叱られてしまうだろう。
そんなことでは何のために日々努力しているのかが分からなくなってしまう。
…考え方を変えよう。
北条司令官に頼るようではダメだ。
やったことがないことをやる以上、
自信がないのは当たり前のことだ。
…だとすれば。
ここで悩んでいるよりも、
前向きに努力するべきかもしれない。
「…分かりました。僕が共和国軍の指揮をとりたいと思います。全てのセルビナ軍を迎撃して共和国を守り抜いて見せます。」
自分自身を追い込むために宣言してみたことで、
二人は笑顔を浮かべながら軍の指揮を託してくれた。
「よろしくね~!」
「きみを信じよう。」
「はい!」
リン様とオルバ様から部隊の指揮権を譲り受けた僕は、
さっそく二人に指示を出すことにした。




