砦の地下室
《サイド:竜崎慶太》
…ふう。
…ようやくだ。
ようやくこの地に戻ってきた。
まもなく時計の針が午前5時を示そうという時間。
夜明け間近になった時刻に、
ようやく反乱軍の砦に帰還した。
…準備は整っているようだね。
各地を見渡してみれば、
すでに多くの仲間達が砦に集結してくれている姿が見える。
ここに集まっているのはクイーンの部隊に同行させなかった2000人の仲間達だ。
…とは言え。
この地には僕の仲間とは言えない人物が『一人』だけいる。
その人物に会うことこそが、
急いで戻ってきた理由でもあるんだけれど。
ひとまず多くの仲間達が集まっている砦の内部を目的地に向かって進むことにした。
…だけど、ね。
少し…というよりも、かなりの緊張を感じてしまう。
その理由はただ一つ。
ついに彼女と再会するからだ。
…少し気が重いかな?
竜の牙の情報を得るために一時的に砦を離れてから、
まだそれほど時間は過ぎていないはずなのに。
それでも懐かしい気持ちを感じながら、
砦の地下にある一室に向かって歩みを進めてみる。
…どうも緊張するね。
自分よりも年下の少女なのに。
まだ10代の少女と会うことに自分でも押さえられない緊張を感じてしまうんだ。
…はあ。
今はどうしているのかな?
色々と推測しながら歩き続ける。
その結果として、
気付けば一際大きな扉の前にたどり着いてしまっていた。
…うーん。
どう話し掛けるべきだろうか?
扉の前までは来たものの。
無言で立ち尽くしてしまう。
…困ったね。
ちゃんと話を聞いてくれれば良いんだけど。
だけど…たぶん無理だろうね。
話し合いができる可能性は低いと思う。
それでもここで立ち止まっていても仕方がないから扉に視線を向けてノックしようとしてみた。
…なのに。
自分でも笑いたくなるほどの緊張によって、
自然と手の動きが止まってしまっている。
…うぅーん。
自分で自分が情けなくなってくるね。
ここまで緊張する必要なんてないのに、
頭では分かっているのに体が上手く動かないんだ。
…困ったね。
どうしようか?
ノックの寸前で動きを止めてしまっている。
…はぁ。
…情けないな。
自分自身の気持ちの弱さに落ち込んでしまうけれど。
悩んでいても仕方がない。
…ふう。
深く深呼吸をしたあとで、
意を決して扉を叩くことにしたんだ。
『コンコン…。』と、地下の通路に淋しく響く音。
だけどただそれだけで、
中から返事の声は返ってこなかった。
…いない、わけじゃないはずだ。
ちょっとした不安は感じるけれど。
砦に残っていた仲間達からそういった報告は受けていないからね。
それになにより、
彼女の魔力の波動は確かに存在している。
限りなく『無』に近い波動だけれど。
確かな波動が室内から感じられるんだ。
「開けるよ?」
一声かけてから扉に手をかけてみると。
『キィィ…ッ…』と小さな音を立てた扉はすんなりと開いてくれた。




