シェリルの指摘
《サイド:澤木京一》
…大丈夫。
僕達はこんなところでめげたりなんてしないさ。
もう二度と負けるわけにはいかないからね。
僕の思いは仲間達も同じだし、
それぞれに成長を望んで今回の作戦に参加してくれている。
だからこそ弱音は絶対に口にしないと誓い合って黙々と移動を続けているんだ。
そんな僕達の真剣な表情を眺めるシェリルは、
少し楽しそうな表情で微笑んでくれていた。
「まあ、その心意気は褒めてあげるわ。」
見守るような雰囲気で見つめてくれている。
シェリルの予想ではイーファに向かうまでの間に愚痴の一つでもこぼすだろうと考えていたんだろうね。
だけど僕達が文句一つ言わずに付き従っていることで、
少しは考えを改めてくれたように感じられるんだ。
「その意志は認めてあげるわよ。」
…意志か。
どうなのかな?
認めてくれるのは嬉しいと思うけれど。
抑えきれない不安を感じている事実を否定出来ない。
その理由はセルビナ王国の山間での出来事がきっかけになるんだけど。
共和国がセルビナ王国の内部に密かに用意している魔術師ギルドに立ち寄った時に、
セルビナ王国が戦争を再開して共和国に襲いかかっているという事実を聞かされたからだ。
その事実を知った時点で僕達は共和国への帰還を提案したんだけどね。
即座にシェリルに却下されてしまっていた。
『心配になる気持ちが分からないとは言わないわ。でもね?今はイーファの魔術師達を救うことが最優先よ。放置すれば全滅するのが分かっているのに救助を諦めるなんて、それは見殺しと同じよ。』
…確かにね。
その通りだと思ったんだ。
しっかりと説明を行ってから僕達を説得したシェリルは、
反論と同時に僕達の限界も指摘してきた。
『そもそもイーファで苦しむ魔術師達ですら救えないような実力で共和国に戻っても足手まといになるだけよ。』
…本当にね。
シェリルの指摘に対して、
僕達は何も言い返せなかったんだ。
はっきりと足手まといだと言われてしまったということもあるけれど。
…それ以前にね。
僕達が戻ったところで何も変わらないと思ってしまったんだよ。
単純な実力を比べれば、
僕よりもシェリルのほうが魔術師としては上だと思っている。
試合で勝てるかどうかは分からないし、
真剣勝負ならなおさら勝てる気がしない。
シェリルには僕の知らない技術があるからね。
実戦経験と言う絶対的な差があるんだ。
『無理に引き留めるつもりはないけれど、今よりも強くなりたいのなら自分達の目的を見失わないことね。』
目指すべき方針を宣言してから、
シェリルは僕達に問い掛けてきたんだ。




