目測
《サイド:栗原薫》
「お風呂はここね。」
ちゃんと書いてあるから間違いはないわ。
「中はどんな感じなのかな?」
呟きながら入り口を通り抜けて脱衣所まで歩みを進めてみる。
脱衣所までの扉が何箇所もあるのは防犯と言うか…安全のためかな?
隣に並んで歩く成美と手を繋ぎながら室内に入ってみると、
見覚えのある二人がすでに大浴場に向かおうとしていたわ。
「あ…っ。」
二人に気付いて出した私の声が聞こえたんでしょうね。
鈴置さんと森下さんも足を止めて振り返ってくれたのよ。
「あれ?あなた達もお風呂?奇遇ね、私達もこれから入るところよ。」
落ち着いた雰囲気で微笑んでくれる鈴置さんの体にはしっかりとタオルが巻き付けてあるんだけどね。
…うわぁぁぁぁ〜。
隠しきれない体つきを見てしまったせいで、
さりげなく視線を背けてしまったのよ。
…はあぁぁ。
完全に負けたわね。
私とホンの少ししか年齢が変わらないはずなのに!
鈴置さんはしっかりと成長していて、
大人っぽい印象があるのよ。
…それに比べて。
私はまだまだ子供よね。
そこはかとなく敗北感を感じながらも、
ついでとばかりに視線を動かしてみると。
鈴置さんの隣に並んでいる森下さんは、
堂々と胸を張っていたわ。
…ええ〜〜〜っと?
もちろんタオルは巻いてあるんだけど。
…だけどね。
その大きさは…あれよ。
…勝った?
決して私が大きいとは思わないけれど。
森下さんには勝ってるような気がしたわ。
…うぅ~ん?
成美はどうなのかな?
幼い顔をして以外と?なんて、
くだらない疑問を感じていると。
「先に行ってるわね。」
鈴置さんが笑顔で声をかけてくれたのよ。
颯爽と立ち去る鈴置さん。
そのあとを追う森下さんと二人で大浴場に行ってしまったの。
…まあ、ここにいても仕方がないし。
お風呂が目的なんだから。
「私達も行くわよ〜。」
「はいっ♪」
二人の背中を見送ってから話しかけてみると元気良く答えてくれたのよ。
「ちょっぴり楽しみです♪」
「そうなの?」
「はい!お母さんとお姉ちゃん以外の人と一緒にお風呂に入るのは初めてなので♪」
…あ〜、うん。
まあ、そうでしょうね。
ずっと目が見えなかったわけだから、
付き添ってくれた人はいたでしょうけど。
そうなると選択肢は限られてくるわよね。
「美袋さんとは一緒に入らなかったの?」
「翔子さんは喜んで引き受けてくれたんですけど…お姉ちゃんが遠慮して断ってましたので…。」
…ああ、うん。
まあ、それもそうかもね。
好き嫌いの問題じゃなくて、
友達に家族の介護を任せるなんて、
本人がやる気でも落ち着いていられないと思うわ。
「それじゃあ、成美が失敗しないように私が見ていてあげるわね。」
「あうぅぅ…。お願いします〜。」
…ふふっ。
本当に可愛いわね。
「服を脱いでお風呂に向かうわよ〜。」
「はい♪」
二人きりになった脱衣所を進んで、
仲良く二人で服を脱ぎ始める。
他には誰もいないから人目を気にする必要はないんだけど。
どうもそれ以前の問題があるみたいね。
「あ、あの…っ。後ろのリボンを解いてもらっても良いですか?」
「ええ、良いわよ。」
まだまだ一人での着替えに慣れていない成美が手間取っているからよ。
背中を向ける成美に振り向いて、
さっき手直ししたスカートのリボンに手を伸ばすことにしたの。
…とは言っても。
それほど難しい作業でもないけどね。
水色のリボンはスルッと簡単に解けて役目を終えたわ。
「あ、ありがとうございますっ♪」
「どういたしまして。」
少し恥ずかしそうな笑顔でお礼を言ってからスカートを下ろした成美は、
もたつきながらも上着を脱ぎ終えて下着姿になったわ。
その様子が気になって、
さりげなく視線を向けてみる。
さっき着替える時はシャツを着てたから、
そこまで気にしてなかったけれど。
可愛らしい下着を身につけている成美の胸に自然と視線が向いてしまったのよ。
…そのせいでね。
気付いてしまったの。
負けた…ってね。
それも完敗って言っても良いほどに。
明らかな敗北を感じて密かにため息を吐いてしまったわ。
…人は見かけによらないってことかしら?
自分よりも幼くて可愛らしい存在なのに。
年下の成美に惨敗してしまったのよ。
…鈴置さんほどではないけれど。
確実に将来は期待できる感じよね?
現状での私の目測だと。
『鈴置さん>成美>私>森下さん』っていう順番になるわ。
実際の測定までは考えたくないけどね。
計るだけ虚しいと思うし。
…胸の大きさだけが全てじゃないわよね?
自分に言い聞かせながら服を脱ぎ終える。
…まあ、いっか。
これだけは悩んでも解決しないのよ。
それにまだまだ成長の余地はあるはず!!
…と言うか。
あって欲しいと思うのはみんな同じよね!?
無理やり信じることにして、
タオルを抱えながら成美に話しかけることにしたの。
「準備はもう良い?」
「はいっ♪大丈夫です♪」
「そう。それじゃあ行くわよ〜。」
笑顔で答えてくれる成美と二人で、
脱衣所の奥にある浴室に向かって移動することにしたのよ。




