経験不足
《サイド:ウィッチクイーン》
ここまできたらもう誰にも邪魔はさせないわっ!
「テラ・フレア!!!」
激しく燃え上がる炎を生み出す。
だけど今回は7つじゃなくて単発の炎よ。
退路を確保するだけなら広範囲に攻撃する必要なんてないわ。
進行方向の障害だけを取り除けば十分なのよ。
そのために攻撃を開始することにしたの。
「どきなさいっ!!」
退路を塞ぐかのように僅かに残っているセルビナ軍に向けて魔術を放つ。
直線に放つ炎が残存するセルビナ軍を飲み込んで、
一瞬にして強大な火柱を巻き起こしたわ。
「っあああああああ!!!」
「ぐぅぁぁぁぁっっっっ!!」
「があああああっ!!!!!!」
炎に飲まれたセルビナの兵士達は骨も残さずに燃え尽きていく。
そして炎が消え去ると同時に全力で離脱を急ぐことにしたのよ。
「退路を開いたわっ!逃げるわよっ!!」
共和国軍を取り囲んでいたセルビナ軍は壊滅して、
退路を阻む敵は一人もすでに存在しないわ。
その状況を確認してから仲間達に呼びかる。
「あとは共和国軍に任せて、私達はこのまま離脱するわよ!」
「了解ですっ!!」
「戦線を離脱しますっ!」
素直に言うことを聞いてくれる反乱軍のみんなだけど。
残存数は1000名には程遠い僅か200名程度でしょうね。
共和国軍が3000から100名ほどにまで数を減らしたことを考えれば、
200人も残れたのは十分な結果だと言えなくもないけれど。
それでも絶対数に限りがある反乱軍にとって、
800もの犠牲を出したのは大きな痛手としか言いようがないわ。
…部隊としては最悪の状況だけど。
今回は雪が助かっただけでも、
ひとまず良しとするしかないわね。
共和国に恩を売ることにも成功したわけだから悪いことばかりじゃないわ。
そんなふうに考えながら戦場からの離脱を急ぎ続ける。
…あとは。
北条辰雄を連れて来たことが吉と出るか凶と出るかだけど。
…どうかしらね?
仲間達の意見を聞き入れて北条辰雄を救助してみたものの。
まともな治療を行う暇さえない現状では、
北条辰雄の容態を確認することすらできないわ。
…さすがに治療を始める前に死なれたらどうしようもないわね。
そもそも生きているかどうかさえも疑わしい容態なのよ。
すでに死んでいる可能性のほうが圧倒的に高いでしょうね。
…まあ。
それでもまだ生き延びられるのなら、
助ける甲斐はあると思うけれどね。
とは言え。
今はここから撤退することを優先して思考を中断することにしたの。
…何をするにしても安全の確保が最優先よ。
そのために共和国軍の部隊に接近しておいたほうがいいわね。
反乱軍の後方を追走する共和国軍を率いている女性の名前はリン・ラディッシュだったかしら?
私と比べて2倍近い年上の女性だけど。
あまり頼れる感じはしないと思うわ。
もう少し頭の良い人物だと思っていたけれど。
…まだまだ経験不足は否めないわね。
圧倒的に実践経験が足りないのよ。
…でも、まあ。
国境警備隊と合流出来た現状なら、
これ以上の無茶はしないでしょうね。
たぶん大丈夫だと信じることにして、
リンに話し掛けることにしたの。




