無念
《サイド:北条辰雄》
…ちっ!
「ここまでが限界か…っ」
舌打ちをしながら僅かに後退してしまう。
これまでセルビナ軍の猛攻を必死に押さえ込んでいたのだが、
ついに魔力の限界が迫ってきたようだ。
…くそっ!
…魔力が足りんっ!!
体力的にも限界なのだろう。
今まで数多くの戦場を駆け抜けて幾度もセルビナの軍を退けたことで国境の守護神と呼ばれるほどの戦果をあげてきたものの。
さすがの俺も万を越える部隊を相手にして勝利を勝ち取れるほどの実力はなかったということだ。
…リンの部隊が合流するまでは何とか堪えきるつもりだったが、もはや救助は間に合わないか。
率いていた部隊はほぼ全滅してしまっている。
残っているのは少数の配下と雪の部隊のみだ。
まだ鞍馬信彦の部隊が辛うじて必死の防衛を続けているようだが、
その数は100にも満たないだろう。
…雪の退路も開けぬまま、ここで終わるのか。
セルビナ軍に追い込まれている今の状況では最期の魔術を展開する余裕さえもない。
必死にセルビナ軍の攻撃を押さえ込んで雪の命を僅か一秒でも長びかせることしか出来なかった。
…ふがいない。
自らの実力の無さを歎いてしまう。
…その瞬間に。
ついに限界が訪れてしまったらしい。
『バシュッ!』と小さな炸裂音を立てて、
ルーンが消失してしまったのだ。
…くっ!?
「ルーンがっ!」
最後の力である槍が消え去った。
…ちぃっ!!!
武器を失ったことで、
もはやシューティング・スターさえも発動できなくなってしまったことになる。
その状況下においてセルビナ軍の兵士達の槍が俺の体に狙いを定めていた。
…まずいっ!
気付いた時にはすでに手遅れだった。
『グサッ!!』と突き刺さる最初の一撃が俺の右足を捕らえ、
動きを止めた俺の体に二本の槍の刃が突き刺さっていた。
「ぐぅ!?がはっ!!!」
武器を失った瞬間に複数の槍を受けてしまったのだろう。
口から血を吐きながらその場に崩れ落ちてしまった。
「くっ…!無念…っ」
うすれゆく意識の中で、
体の痛み以上の後悔が俺の心を支配していく。
…すまない。
…俺は、お前を守れなかった。
父と呼んでくれた雪を最後まで守ることが出来なかったのだ。
その結末に悔しさを感じてしまうが、
もはや手遅れでしかない。
…すまない、雪。
守るべき雪に謝罪しながら、
俺も意識を失ってしまった。




