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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1547/1574

西か東か

《サイド:リン・ラディッシュ》



「全軍突撃!!敵の包囲網の突破を急ぐわよっ!」



何が何でもね。


諦めるわけには行かないの。



「国境警備隊の救出を急いで!!」



大きな声を響かせながら必死に戦場を駆け抜ける。



…とは言ってもね。



私が指揮をとる部隊はギルドの魔術師や学園の生徒を中心とした寄せ集めの集団でしかないから統制が取れているとは言い辛いわ。



対するセルビナは3万前後の正規軍の大部隊。



そのせいでしょうね。



攻撃力では並の兵士に勝る魔術師といえども、

正規の訓練を詰んだ軍隊を相手だとまともな戦闘経験の少ない魔術師達では思うように包囲網を崩せずにいるのよ。



「く…っ!あと少しなのにっ!!!」



悔しさを感じて、唇を噛み締めてしまう。



国境警備隊の救出を急ぐためにセルビナ軍への突撃を指示したのに、

思うように進まない戦況に焦りを感じていたからよ。



…まずいわねっ。



このままだと私達の部隊まで包囲網に取り込まれてしまうわ。



前方にセルビナ軍の部隊がいるのはもちろんだけど。


必死に突撃を行っている現段階でもすでに周囲のセルビナ軍が私達の部隊の側面にまで部隊を展開し始めているからよ。



…まずい、まずい、まずいっ!!



数という戦力差は馬鹿にできないわ。



個人の実力では戦力として優秀な魔術師だけど。


部隊としての訓練を詰んでいない寄せ集めでは、

なかなか思い通りには動けない。



…このまま突き進めば、セルビナ軍に取り囲まれてしまうでしょうね。



だからと言って部隊を下げれば国境警備隊の救出は不可能になってしまうわ。



今でさえ国境警備隊が全滅してないのが奇跡的とも言える現状なのに、

今更、部隊を後退させて作戦を立て直す余裕なんてないのよ。



…ったくぅ!!


…せめてシェリルがいればっ!



この状況で最も頼りになるシェリル・カウアーがいないのが辛いわね。



戦争が停戦になってつかの間の平和が訪れたことで、

セルビナの隣国であるイーファに派遣してしまったから、

最も戦力として期待できる人材がここにはいないのよ。



…ああ~!!


…もうっ!


…全ての作戦が裏目に出てるわねっ!!



ミッドガルムが撤退したことでセルビナも軍を引くしかないと思い込んでいたことも。


国境に部隊を残さずに和平交渉を優先して停戦を受け入れたことも。


各地から集めた部隊を解散したことも。


シェリル・カウアーをイーファに派遣したことも。


全てが裏目に出ているのよ。



…完全な油断ね。



戦争を回避して和平を進めるために下した決断によって、

共和国はセルビナ軍の侵攻を許す結果となってしまったのよ。



…くぅっ。



こうなった以上はそれ相応の責任は負うべきだとしても。


その責任を果たす前に死ぬわけにはいかないわ。



…どうにかしてセルビナ軍の排除を行わないとっ!



共和国が滅んでからでは責任のとりようがないのよ。



…どんな罪を受けるとしても、ここから逃げるわけにはいかないの。



指揮官としての役目だけは果たさなければいけないから。


そのために戦場に意識を向け続ける。



…だけどね。



私が思う以上に、戦況は刻々と悪化してしまっているのよ。



「魔術師共を追い込めーー!!」


「魔術を使う前に突撃しろー!」



「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっっ!!!!!」」」」」



全力で叫ぶセルビナ側の指揮官の指示によって、

戦場に響き渡るセルビナ軍の雄叫び。


必死の気合いで特攻を試みる兵士達によって戦場は乱戦となり、

まともに魔術を発動させる余裕もないまま仲間達が次々と倒れてしまう。



「うわあああああっ!?」


「ぐはぁぁっ!!!」


「もう…ダメだっ!?うぁぁ…」



セルビナ軍の猛攻を受けた共和国軍が瓦解し始めているのよ。


容赦なく攻め寄るセルビナ軍は共和国軍の前後左右に部隊を広げて、

全方角から攻撃を仕掛けてようとしているの。



それなのに。



セルビナ軍の動きが分かっていても、

勢いを止める余裕なんてない共和国軍は応戦だけで精一杯で包囲網を阻止するだけの余裕がなかったのよ。



国境警備隊の救出を急ぐ為に決死の突撃を試みたけれど。


救出どころかセルビナ軍に取り囲まれて退路を断たれるという絶望的な状況に追い込まれつつあったのよ。



…このままだと包囲網に取り込まれるのは時間の問題ね。



無理に突出しすぎたのは分かってる。


そうしなければいけない理由があったとはいえ、

作戦も何もないまま突撃したのはやっぱり無理があったわね。



これが救出作戦じゃなくて殲滅戦だったら範囲攻撃で一気に攻め込むところだけど。


自軍を巻き込むような攻撃はさすがにできないわ。



そのせいで乱戦になってしまったわけだけど。


こうなるともう戦況を把握するのも一苦労よね。



…ふう。



大きくため息を吐いてしまう。


戦場に駆け付けてから僅か数十分の間に私達の部隊はセルビナ軍に包囲されれつつあるのよ。



…作戦を急ぎすぎたわね。



国境警備隊の救出を焦るあまりにセルビナ軍へと近付きすぎたことで、

肝心の国境警備隊と合流できないままセルビナ軍によって包囲されてしまったの。



…数の差は面倒ね。



国境警備隊も私が率いる多国籍軍も、

どちらもセルビナ軍に包囲されてしまったわ。



現時点で『8』の字の形に取り囲まれてしまったことになるでしょうね。



「セルビナ軍に完全に包囲されましたっ!!」


「退路を塞がれ、撤退は不可能ですっ!!」


「南北に配置していた部隊が壊滅。セルビナ軍が突撃してきますっ!!」



…くっ!?



次々と報告が届く度に、

私達の部隊も全滅に近付いていく。



…ここまで来て届かないなんてっ!!



救うべき国境警備隊の部隊はすぐそこにいるのよ!



…それなのにっ!



そこまで辿り着けないの。


友軍にたどり着く前に、

私達の部隊まで壊滅の危機にあるのよ。



…どうすればいいの!?



今ここで私達の部隊まで潰れれば、

町の防衛も出来なくなるわ。



…かと言って、国境警備隊を見捨てることも出来ないのよ!



今ならまだ後方のセルビナ軍を突破することはたやすいけれど。


その為には国境警備隊を見捨てなければいけないわ。



町を優先するか、国境警備隊を優先するか。



…どっちなの!?



「「「「「うぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」」」



自分に問い掛けてみる間にも犠牲者は増え続けてしまう。



「ぐああああああっ!!!」


「誰かっ!助け…っ!ぐぁ!!」


「嫌だっ!死にたくないっ!!」



戦場に響く悲鳴。


絶望の声が響く度に、

一人、また一人と共和国軍の数が減ってしまう。



…うあぁ~っ!!


…もう!



悩んでる暇なんてないわねっ!!



西と東に視線を向けて、

どちらに進むかを考えるしかないのよ。



救助?


撤退?



その判断を下そうとした瞬間にね。


突然『ボオオオオオオッ!!!!!』と、

幾つもの強大な炎が夜空に打ち上げられたの。




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