明日の朝
《サイド:黒柳大悟》
…そろそろ良いだろうか。
御堂君達の表情を順番に眺めてみる。
常盤君と栗原君は二人で仲良くオレンジジュースを飲んでいるようだな。
御堂君はまっすぐに俺と向き合っている。
鈴置君と森下君は残った果物を適当につまみながら時間を潰している様子だが、
俺が話し始めたことで手を止めて姿勢を正している。
そんな5人の生徒達の様子を眺めてから、
ようやく本題の会議を始めることにした。
「それではそろそろ始めようか。」
全員が俺に視線を向けてくる。
御堂君、常盤君、栗原君、鈴置君、森下君。
そして西園寺君と藤沢君の7人だ。
それぞれの視線を受けながら説明を始める。
「まず最初に、これまでの状況を説明しておこう。」
まだ状況を理解出来ていない者もいるだろうからな。
…情報の共有は必要条件だ。
会議の前に現時点までの一通りの流れを説明しようと思う。
「まずはこの船に関してだが、現在はセルビナ王国に向けて航海を行っている。」
国境近海までの所用時間は通常ならおよそ9時間だ。
「順調に進めば明日の早朝5時頃には国境近辺の海域で待機している海軍と合流出来るだろう。」
もちろんこれは通常なら…だがな。
「ただ、今日の雨と風で船の速度が低下しているのは事実だ。予定では明日の早朝だが、実際には少し遅れるだろう。」
早くても7時。
場合によってはそれ以降の可能性も考えられる。
海を越えるというのは自然との戦いだ。
これだけは簡単に解決出来る問題ではない。
極論すれば乗組員は大半が魔術師の為に、
風の魔術を駆使すれば船を加速させる程度はたやすいのだが。
その為には多くの魔力を消耗するという問題が発生してしまう。
戦地に急ぐのは重要だが、
戦地で戦えないようでは意味がないからな。
なによりこの大荒れの海の中を無理に加速して突き進むとなると、
転覆や座礁の可能性も大いにありえる。
せめて天候が良くなれば魔術による加速も考慮できるが、
現在の天候では自殺に等しい行為と言えるだろう。
そのため。
今は雨が止むのを待つしかないというのが実情になる。
「到着予定時刻は天候次第だが、ひとまず向こうに到着できれば20隻の艦隊と合流できるはずだ。詳しい戦況報告は届いていないものの。まだ大きな戦いになっていないとすれば、およそ2万の海軍と合流できることになる。」
20隻の船のそれぞれに乗り込む1000名の海軍。
合計2万の部隊だ。
その中には非戦闘員もいるのだが、
魔術師ではない一般人も多数参戦している。
海軍の全てが魔術師で構成されているわけではないからな。
前衛部隊としての非魔術師も多数配備されているのだ。
それは陸軍も同様なのだが、
軍には前衛と後衛の両方が求められるからな。
桜井由美が率いる魔術師ギルドを主軸とする傭兵部隊や、
リン・ラディッシュが率いる多国籍軍のように魔術師だけで構成されているわけではない。
…そのため。
実際の総数は5000程度になるだろう。
海軍の全てを集められればいいのだが、
ミッドガルム方面や周辺海域の偵察にも部隊を派遣しているからな。
どうしても頭数は限られてしまう。
攻撃部隊となる魔術師が5000。
防衛部隊となる前衛の兵士が10000。
そして非戦闘員である医師や船大工に船の乗組員などが2000。
各学園から参戦してくれた生徒達3000。
計2万人がセルビナ方面に配備されている。
そこには残る5人の特風の生徒達も参加しているのだが、
全員が無事かどうかは現時点では分からない。
「セルビナ方面の艦隊には和泉由香里を含めた生徒達がいるからな。彼女達の協力も得られるだろう。」
すでに全滅していなければ…という前提はあるものの。
目的地に友軍がいるということで、
御堂君達は安心している様子だった。




