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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1529/1574

3人の能力

「一応、誤解のないように言っておくけれど。僕は誰かの指示を受けて動いてるわけじゃないよ。僕は僕の意思で動いているからね。」


「だとしたら、使者とはどういう意味だ?」


「単なる名目だよ。きみが僕の話を理解しやすいように告げただけにすぎない。」



…名目だと?



その言葉を信じるなら、

竜崎は自らの意思で使者と名乗ったことになる。



…だとすれば、だ。



何に関する使者なのだろうか?



今度はそこが問題になってくる。



「使者とはどういう意味だ?」


「うーん。そうだね。おそらくきみは何も知らないはずだから手短に説明するけれど。僕は天城総魔の想いを叶えるために動いていると考えてくれればいい。」



…天城総魔?


…何者だ?



何度か噂話程度には耳にしたことがあるような気はするが直接的な面識はないはず。


もちろんどんな人物かも知らない。



「その人物は何者だ?」


「うーん。おそらく彼は最強の魔術師だっただろうね。」



…最強の魔術師だと?



そんな人物がいるという話は聞いたことがないぞ?



「きみがどう思うかは知らないけれど、僕はそう思っているんだよ。まあ、彼の活躍はわずか数日の短期間だったから、彼の名を知っているのはごく一部の関係者だけかもしれないけどね。」



…ごく一部の関係者だけが知る最強の魔術師?



それでは無名と同じではないだろうか?


どうしてそんな人物が最強と判断されるのかが理解できない。



それに、だ。



そもそもそんな存在がいれば俺も知っているはずだ。



仮にも国境を守護する責任者なのだからな。


国内外における主要な魔術師の情報は常に集めるようにしている。



だが、その名前に心当たりはない。



だからこそ無名の魔術師を最強と呼ぶ竜崎の言葉は素直には受け止められなかった。



「一つ聞いてもいいか?」


「ああ、いいよ。」


「その人物は竜崎よりも上という判断で良いのか?」


「そうだね。そう思ってもらって構わないよ。」



………。



竜崎は否定しなかった。


それどころか一瞬の迷いも見せずに即答していたのだ。



「僕の言葉の真偽に関しては共和国に戻ってから米倉宗一郎と話し合えば良い。彼の話を聞けば、きみが感じている疑問は全て解決するはずだ。だから天城総魔に関する詳細は省略させてもらうよ。今の僕達には時間が限られているからね。」



…時間か。



確かに共和国は目前だ。



今後、竜崎がどうするつもりか知らないが、

共和国に入るつもりがないとすればまもなく別れることになるだろう。



その前に話を終えたいのだとすれば、

余計な説明に時間を費やす暇はないと思われても仕方がないのかもしれない。



…とは言え。



米倉元代表は知っているような口ぶりだからな。



天城総魔という人物に関しては共和国に戻ってからでも調べられるのだろう。



「まあ、良い。それはそれとして、だ。その人物が俺とどんな関わりがある?」



仮に最強の称号が事実だとすれば、

それこそ俺とは無関係の存在のはずだ。



それなのに顔も名前も知らない相手が俺を知っているのはどうしてなのだろうか?



「彼はアストリア王国の滅亡と引き換えに戦場で命を落としたんだ。アストリアの地で倒れた多くの仲間達の意志を受け継いで自らの命を代償として共和国を守った。そして共和国に住む人々を守ったんだよ。それがどういう意味なのか、きみなら分かるだろう?アストリアで散った命。そこには国境警備隊の兵士達や、きみのお兄さんの命も含まれているんだからね。」



…なっ!?



竜崎の説明を聞いてしまったことで、

今まで微かに感じていた不安が真実なのだと思い知らされてしまった。



「兄貴は…!?兄貴はっ!?」


「きみのお兄さんは死んだよ。」



…くっ!



俺よりも強いと思っていた兄貴でさえも、

戦争という舞台においては消え去ってしまう程度の存在だったというのか。



「アストリアの地において彼はアストリア軍と真っ向から立ち向かった。そして最期の一瞬まで戦い続けて戦場に散ってしまったんだ。でもね?それはきみのお兄さんだけじゃない。アストリアに攻め込んだ共和国軍は全滅したからね。米倉美由紀や鞍馬宗久も含めた3万5千の部隊は壊滅。生存者は一人を除いて存在しないのが現状になる。」



…一人を除いてだと?


…だとすれば生存者がいるのか?



「一人だけ生きているのか?」


「ああ、そうだよ。きみも名前くらいは知ってると思うけれど。唯一の生存者になったのは御堂龍馬だ。彼だけが生き残って今もまだ続く戦争に挑もうとしているようだね。」



…ああ、御堂龍馬か。



その名前なら俺も知っている。



直接会ったことはないものの。


魔術大会においての活躍は何度も噂話として聞いているからだ。



ジェノス魔導学園に所属する生徒ということで少なからず親近感を感じていたのも事実だった。



…彼だけが生き残ったのか?



もしもそれが事実だとしても俺とどう関わってくるのかが分からない。



「一体何が起きているんだ?」


「説明は難しいけれど。アストリアとの戦争の結末は全滅だということをまず覚えておいてほしい。その内容に関してはいずれ時間がある時にゆっくり話をしよう。今重要なのはアストリアに向かった共和国軍が全滅したということだからね。そのうえで天城総魔が自らの命を犠牲にして共和国を守ったことに大きな意味がある。」



共和国軍は全滅。


そしてアストリア王国は天城総魔という人物の活躍によって消滅したということだろうか。



「そしてここからが本題になるんだけど。天城総魔は死の直前に自らの力を駆使して『特定の人物』に幾つかの力を分け与えているんだ。」



…特定の人物?


…幾つかの力?



それらの言葉の意味は分からないが、

何故、竜崎が俺に接触したのかは理解出来たような気がした。



「つまり、それが俺ということか?」


「ああ、そうだよ。」



確認する俺に頷いてから、

竜崎は説明を続けてくれた。



「きみもその一人になる。きみも天城総魔が遺した遺産を受け継いでいるんだよ。」



…遺産だと?



その言葉から思い浮かぶモノが一つだけあった。


それは兄貴のルーンだ。



兄貴のルーンの名はアルビオン。



俺には扱えないはずの兄貴のルーンが俺の手にあったからだ。



「天城総魔という人物が俺に兄貴のルーンを与えたということか?」


「いや、その程度じゃないよ。」



それしか思い浮かぶ心当たりがなかったのだが、

竜崎は左右に首を振って俺の言葉を否定していた。



「彼は複数の力をきみに分け与えているからね。具体的な能力までは僕には分からないけれど、他に心当たりはないかい?」



…他にだと?



逆に問い返されて悩んでしまう。



…心当たりか。



はっきり無いとは言いきれないものの。


思い付くことは何もないはずだ。



…いや、まてよ?



一つだけ違和感を感じることがあったのを思い出した。



それは兄貴のルーンが光り輝いたことだ。



俺に襲いかかろうとしていた魔術が全て切断されたことがあった。



…確か、あの時は蒼い光を放っていたはず。



だが、兄貴のルーンにそんな能力はなかったはずだ。



「あの蒼い光が別の力なのか?」


「へえ、心当たりがあるようだね。」



疑問を呟いてみたことで、

竜崎は小さく微笑んでいた。



「それが何なのかは僕も知らないけれど。きみには3人の想いが込められているそうだ。一人は近藤悠護で、もう一人は近藤悠理だね。そして最後の一人は近藤悠理の彼氏である武藤慎吾だそうだ。その3人の能力がきみに宿っているらしいよ。」



近藤悠護と近藤悠理は分かる。


俺の兄妹だからな。


武藤慎吾の名前は知らないが、

3人の力が俺に宿っていると竜崎は言った。



…だが。



そこにさらなる疑問を感じてしまう。



「何故、悠理が関わっているんだ?まさか悠理までが戦争に参加していたというのか!?」



…近藤家の落ちこぼれでしかない悠理が戦争に?



素直には信じられない出来事だと思ったのだが、

竜崎は真剣な表情のままで小さく頷いていた。



「近藤悠理は複数の友人と共に戦争に参加したようだ。大切な親友を守る為に。そして自分自身の存在を証明する為に。戦争に参加していたようだね。」



…悠理が戦争に?


…そして死んだだと?



もしもそれが事実だとすれば、

俺は二人の兄妹を失ったことになる。



…特に仲が良かったわけではないが。



どちらかと言えば邪険に接していた妹だが、

それでも俺の妹であるという事実は変わらない。



…兄貴と悠理が死んだのか?



アストリア王国との戦争で二人は亡くなったらしい。


その事実を竜崎から知らされることになってしまった。



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