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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1528/1587

背後には?

《サイド:近藤悠輝》



…ふう。


…これは、面倒だな。



カルナック山脈を進む道中で、

雨は勢いよく降り続けている。



…足元には気を付けないとな。



止まない雨でぬかるむ斜面。



ただでさえ道なき道を進まなければいけない山中で、

雨で視界が遮られるのは苦痛以外のなにものでもなかった。



…無事に国境を抜けられればいいんだが。



今は黙々と歩き続けるしかない。



…共和国はもうすぐのはず。



先を急ぎたいと思うのだが、

隣を歩く男にも視線を向けてみた。



真剣な表情で先を見据える瞳。


体に宿る強大な魔力。



その波動は今だかつて感じたことのない強烈な威圧感を放っている。



…並の魔術師を超越した魔力だな。



魔力の波動を感じるだけで、

俺では到底歯が立たない男だと理解できてしまうほどだった。



…元、竜の牙の反乱軍か。



竜崎慶太という男と出会ってから数時間。


さりげなく行動を観察して、

竜崎という男を自分なりに考察してみたのだが。


今はまだ何も分からないとしか言いようがないのが実情だった。



実力も目的も、まだまだ分からないことが多いからだ。



…それでも、だ。



今は味方で間違いないと思える。



共に行動できる程度には心を許せる気がしているからだ。



…とは言っても、必要以上に会話をするつもりはない。



知りたいことは幾つもあるものの。


こちらの情報を与えるつもりはないからな。



…共和国にとって不利になる発言は控えるべきだ。



口を閉ざして竜崎との会話を避けるようにしている。



だからだろうか?



俺の意思を感じ取っているのか、

竜崎も必要以上に話し掛けてくることはなかった。



…ただ。



山脈に足を踏み入れてからの竜崎の表情には曇りが見える。



何かを言いたそうな表情で、

どう俺に声をかけるかを悩んでいるように思えるからだ。



…共和国の国境を越える前に、俺に伝えたいことでもあるのか?



考えられる可能は幾つかあるが、

最も可能性が高いのは何だろうか?



…竜崎は自分のことを使者だと言っていたな。



その説明をあとですると言っていたが、そのことだろうか?



まだその辺りの説明は受けていない。


とは言え無理に聞き出そうとは思っていなかった。



敵かもしれない人物の話など信憑性に欠けるからだ。



最終的に敵となるか味方となるか分からない存在だからな。



そんな男の意見を無理に聞き出そうとは思わない。



だからこそ、あえて沈黙を続けていたのだが。


竜崎は俺に何かを伝えようとしているように思える。



…俺から問い掛けるべきか?



正直な気持ちを言えば興味はある。


話を聞きたいとは思っているのだが、

竜崎の言葉をどこまで信じるかが問題なのだ。



…とは言え。



聞いてみなければ判断のしようがないのも事実だ。



「どうした?何か俺に言いたいことでもありそうだな。」


「あ、ああ…。」



こちらから声を掛けてみたことで、

竜崎は苦笑いを浮かべていた。



「やっぱり分かるかな?いつ話そうか迷っていたんだけど、きみはなかなか話を聞いてくれそうになかったからね。少しだけ困ってたんだ。」



控えめに笑う竜崎の笑顔は親しみを持てるものの。


まだ心を開くには早すぎる。



全ては話を聞いてからだ。



「聞くだけなら耳を貸そう。だが、それがどんな内容だとしても、俺に答える義務はないがな。」


「ああ、それでも良いよ。」



竜崎は一度だけ頷いてから言葉を続けた。



「きみが僕の話を聞いてくれるなら、それだけで良いんだ。」


「話があるなら聞く。」



ひとまず情報を求めたことで、

竜崎は真剣な表情で話してくれた。



「まず最初にこれだけは伝えておくよ。」



何か重要な意味でもあるのだろうか?


竜崎は真剣な表情で自分の立場を告げてきた。



「出会った時にも言ったけれど、僕は使者としてきみを迎えに来たんだ。きみを守り、きみを導くためにね。」



…使者として俺を守り導く?


…どういう意味だ?



竜崎の言葉に違和感を感じてしまう。



何故そうなったのか…という部分も不明だが、

そもそも何故俺を知っているのかという疑問があるからだ。



それになにより、どうして俺なのだろうか?


他の人物ではダメなのだろうか?



疑問は他にも幾つもある。



俺は国境警備隊の隊長ではあるが、

それほど重要な役職ではない。



兄貴ほどの才能はなく。


決して天才ではないと自分でもわかっているからだ。



飛び抜けた能力があるわけでもなく、

並の魔術師より多少強いと思える程度でしかない。



そんな俺を知っていて、

守り導くという意味が分からない。



竜崎は…いや、違うな。



竜崎に指示を出した人物は、

俺に何をさせようとしているのだろうか?



使者と告げた以上。


竜崎は誰かの指示を受けて行動していると考えるべきだ。



自らの意思で動いているのであれば使者という立場はありえないからな。



竜崎の背後には竜崎を動かせるほどの人物がいるはず。



俺では到底、手も足も出ないと思う竜崎を意のままに操る人物がいるということだ。



…竜崎の背後にいるのは誰だ?



俺のことを知っているということは、

俺も知っている人物なのだろうか?



…分からない。



思い浮かぶような心当たりは全くなかった。



…問いかけてみるべきか?



名前を聞けば誰なのか分かるかもしれないと思ったのだが、

その前に竜崎が説明を続けてくれるようだった。




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