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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1526/1564

断れない戦力

《サイド:芹澤里沙》


「さて、次はきみ達だが…」



桜井学園長が部屋を出たあとで、

米倉元代表は私達に話しかけてきたわ。



「木戸君と須玉君には引き続き学園と町の安全の為に力を尽くしてほしい。これから先に何が起こるか分からないからな。ある程度の戦力は残す必要がある。」


「はい。出来る限りの努力はします。」


「私も頑張ります!」



米倉元代表の指示を受けた二人は快く引き受けていたわ。


これまでもそうだったけど。


人手が足りなくなった町の治安維持のために誰かが残る必要があるから、

木戸君と須玉さんの二人がこの町の防衛戦力になるのよ。



「きみ達の協力に感謝する。近藤学園長と協力して、これからも町の安全を守ってほしい。」



二人に町の防衛を託して頭を下げていたわ。



…うんうん。



自分より格下の相手にも頭を下げられるのは好感が持てるわよね。


米倉元代表のためなら…って思える瞬間だったわ。



…まあ、木戸君と須玉さんがどう思ってるかは知らないけれど。



ひとまず二人に町を託した米倉元代表は、

頭を上げてから学園長に振り返ったのよ。



「よろしいですか?」


「ええ、私も出来る限りのことはさせていただきます。」



問い掛ける米倉元代表に学園長は笑顔で答えてる。



「亡き孫達のためにも、この命を惜しむつもりはありません。」


「よろしくお願いします。」



はっきりと答える学園長にも、

米倉元代表は深々と頭を下げていたわ。



…う~ん。



さすがの米倉元代表も、

学園長には頭が上がらない感じなのかな?



学園長の方が年上だしね。



長年、共和国の為に苦労してる人だからか、

米倉元代表も学園長にだけは丁寧な言葉遣いを心掛けているように思えるの。



立場的には米倉元代表の方が上でも、

個人としては学園長を尊敬してる感じ?



一国を代表する立場の人間が、

一学園の代表に頭を下げるのは普通ならそうそうないと思うけど。


それだけ米倉元代表が学園長を尊敬している証でしょうね。



…こうして見ると。



結構、学園長もすごい人なのね~。



普段から見慣れてるせいであまり気にしてなかったけれど。


改めてこの国を代表する人物なんだって感じたわ。



…今更だけど、ジェノスにはすごい人が沢山いるわよね?



米倉元代表にしても。


米倉美由紀代表にしても。


近藤学園長にしても。


普通なら会うことさえ難しい人達なのよ。



さらには御堂君や天城総魔なんていう、

圧倒的な実力を誇る魔術師が集まっていたなんて信じられないわ。



一生に一度会えるかどうかって思えるような人達と普通に接していたから、

今まで何も気にしていなかったんだけど。


いつの間にか、すごい人達に囲まれていたようね。



改めて周りの人達のすごさを実感してしまったの。



「さて、これからの話だが…。」



私達に視線を戻した米倉元代表は、

もう一度、木戸君と須玉さんの二人に話しかけてた。



「ひとまずきみ達は学園の状況を報告書にまとめてから近藤学園長に提出してくれ。」



「分かりました!」


「すぐに報告書にまとめます。」



指示を受けた二人は礼儀正しく一礼してから部屋を出て行ったわ。



その後ろ姿を黙って見送ったんだけど。


桜井学園長と木戸君と須玉さんが抜けたことで、

部屋に残っているのは5人だけになってしまったのよ。



米倉元代表と学園長、

そして私と淳弥と百花だけ。



人数が減ったことで少し緊張感が薄れた気がするわね。



「さて、次は俺達の方針だが…」



ここで米倉元代表はとんでもない発言をしてきたのよ。


妙に言い難そうな表情を浮かべてから言葉にしてしまったの。



「きみ達には非常に言い難いことなのだが、今回の戦いに関して参加を申し出る者が二人いてな。断りきれずに引き受けてしまったのだ。まずはそれを許してほしい。」



…へ?


…許すってどういうこと?


…って言うか、二人って誰?



色々と疑問を感じるんだけど。


疑問を感じているのは淳弥と百花も同じ様子で、

二人も困惑の表情を浮かべていたわ。



「誰が参加するんですか?」



率先して問い掛けてみたことで、

米倉元代表は申し訳なさそうな表情で頭を下げてしまったのよ。



「きみには本当に申し訳ないと思っている。だが、戦力が必要なのは事実なのだ。優秀な人材である為に断るに断れなくてな…」



…優秀な人材?


…で、私に謝る必要がある戦力?



…って?



…え?



…もしかして?



…って、ええええええええええええええええええぇぇぇぇ~!?



「まさか…っ!まさか…っ!?」



米倉元代表の言葉の意味に気付いてしまったことで、

絶望的な展開に気づいてしまったのよ。



恐怖を感じて震える体。


本能が危険を訴えているの。



「まさかっ…!!!!!!」



動揺する私を見て、

百花と淳弥も気付いたようね。



「それってもしかして…?」


「まさか…芹澤啓輔かっ!?」


「ああ。」



淳弥が名前を叫んだ瞬間に、

米倉元代表が頷いてしまったのよ。



「本当に申し訳ない。港に向かう前に彼と遭遇してな。その時にきみと共に行動すると言われたのだ。きみ達の関係は美由紀からも聞いているうえに先程の戦闘でも確認しているからな。きみの安全を考慮して何度も断ったのだが、彼には受け入れてもらえなかったのだ。」



…うあぁぁぁぁぁぁ!?



意地でも私につきまとうつもりなのね。



あの変態が人の意見を聞き入れるわけがないのは分かっていたけれど。


まさか米倉元代表にまで意見してくるなんて!?



…最悪っ。



命懸けの戦場を…よりにもよってあの馬鹿と一緒に行動なんて考えたくないもない事態だったわ。



「本当に…兄が来るんですか?」


「申し訳ない。個人的には断りたいところなのだが、俺も共和国を代表する立場として戦力を重要視する必要があるからな。俺の個人的な感情だけで優秀な人材をより分けるわけにはいかないかのだ。参戦を望む者を拒絶は出来なかった…。」



…うっわ〜〜〜~。



何度も謝罪してくれる米倉元代表の説明を聞いて、

今まで以上に死の恐怖を感じてしまったのよ。



…もう無理よね?


…死ぬわ。


…絶対に死ぬの。



…って言うか、殺されるのよ。



戦争で死ぬんじゃなくて。


戦いで死ぬんじゃなくて。


兄の手によって殺されるのよ。



その光景がはっきりと思い浮かんでしまったわ。



…ぅぁぁぁっ!?



絶望を感じて怯えてしまったんだけど。



「大丈夫よ、里沙。」



百花が私の手を優しく握ってくれたのよ。



「私が守ってあげるから、安心しなさい。」



…百花ぁぁぁぁぁ。



慰めてくれる百花の笑顔のおかげでね。


少しだけ落ち着きを取り戻せたような気がしたわ。



「ありがとう、百花。」



まだまだ絶望と不安は消えないけれど。


百花がいてくれるのなら頑張れるかもしれない。



………。



………。



…どうかな?


…無理かな?



どうなるか分からないけれど。


死にたくはないと思うのよ。


殺されたくもないけどね。



…でも。



あの兄に押し倒されるくらいなら、

死んだ方がマシな気もするかな?



だけど死にたくはないから。



「絶対に助けてね、百花っ!」



本気で願ってしまったわ。



「大丈夫よ。約束するわ。里沙は必ず私が守ってあげる。」


「絶対だからねっ!絶対に助けてねっ!」


「ええ、必ず守るわ。必ずね」



必死に願う私を百花は優しく抱きしめてくれたのよ。



…さすが百花。



私の心の支えは百花だけよ。



優しい親友に抱きしめられながら安らぎを感じたの。



「信じてるからねっ。」



心から信頼できる親友なのよ。


百花に抱きしめられているだけで

不思議と心が落ち着いていく。



…持つべきモノは友達よね♪



心から思うの。



「ありがと♪百花っ♪」



笑顔を取り戻して微笑み合う。


そんな私達の隣で、

淳弥が米倉元代表に話しかけていたのよ。



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