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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1521/1564

いない間に

《サイド:文塚乃絵瑠》



…あれ?


…そう言えば?



些細な疑問を感じて美咲さんに視線を向けてみる。


テーブルの上の料理をテキパキと片付けていく美咲さんのエプロン姿はすごく可愛く見えるんだけど。


それは今はどうでもいい話よね。



「ちょっと聞きたいことがあるんですけど?」


「あら?なあに?」



話しかけてみるとね。


美咲さんは手を休めることなく、

作業を進めながら微笑んでくれたのよ。



「どうかしたの?」


「あ…いえ、その…大したことじゃないんですけど。いつの間に用意したのかな?と思って…」


「料理のこと?」


「あ、はい。もちろんそれもあるんですけど…この部屋もです。最初に私の話を聞いてからここへ来るまでの間の、どの段階でこれだけの準備をしたのかな?って…。」


「…ああ、そのことね。」



思い浮かぶ限りの疑問を言葉にしたことで、

美咲さんは笑顔で答えてくれたわ。



「さすがの私も短時間で全てを用意するのは難しいわ。だから最初に乃絵瑠ちゃんがギルドに来た時点で『これは何かあるかも?』と思って、先にこの部屋だけは押さえておいたのよ。多分『帰れない事情でもあるんじゃないかな~?』って思ってね♪」



…ああ、なるほど。



ギルドに迷い込んだ私に気付いた時点で、

真っ先に部屋の確保をしてくれていたのね。



「その段階ではまだ何もしてなかったけれど、控室で乃絵瑠ちゃんの話を聞いてから『やっぱり準備しておくべきかな~?』と思って、地下に下りる前に受付で部屋の鍵だけは回収しておいたのよ♪もちろん、その時点ではまだ私の休暇も部屋の使用許可も出てない状況だけどね♪」



…うわ〜。


…あの時はまだ無断だったんだ?



私をここに案内した時点ではまだ無許可で、

実際に美咲さんが休暇届けと部屋の使用許可を得たのは私がギルドを出てから家に帰っている間みたい。


そして私が帰ってくるまでの1時間ほどの時間で、

美咲さんはこれだけの量の料理を用意したってことよね。



…って、あれ?


…でも、これって一人で作れる量じゃないわよね?



「もちろんこの料理は私一人で作ったわけじゃなくて、食堂の人達と協力して作ったのよ♪他にも沢山の料理を用意したけれど。すでに大半の料理がギルドの各所に出回ってるんじゃないかしら。」



…ああ、そっか。



何も美咲さん一人で作らなきゃいけないっていうわけじゃないわよね。


他にも手伝ってくれる人がいるのなら、

下準備を任せて味付けだけすれば時間の短縮が出来るのかも?



「基本的には乃絵瑠ちゃんがいない間に手回しした感じになるわね。」



…と言うことみたい。



料理の片付けてくれる美咲さんのおかげで、

テーブルの上からはあっという間に料理がなくなったわ。


全ての料理が台車に詰め込まれて、

美咲さんの手によって部屋の外へと運ばれていったのよ。



「しばらく休憩しててね♪」


「…あ、はい」



私を残して部屋を出て行った美咲さんの後ろ姿を見送ってから、

激しくため息を吐いてしまう。



「はぁ…。やっと解放された~」



美咲さんのいない部屋。


ただそれだけで心が安らぐ気がしたのよ。



…って言っても、すぐに戻って来ると思うけどね。



わずか数分の開放感なのよ。


それでもこの一時に幸せを感じてしまったわ。



…ああ~。


…心が安らぐわね。



なんて思った瞬間に、お腹が『ぐぅ~』って鳴ってた。



…う~ん。


…あんまり食べてなかったから?



そうは思うけど。


お腹が空いた感じはあるけれど。


食欲は壊滅的になかったのよ。



…これからしばらくこんな感じなのかな?



そう思うだけで憂鬱になるけれど。


ここで諦めるわけにはいかないわ。



…成長できる可能性があるんだから。


…この程度で歎いてる場合じゃないのよっ。



今よりも強くなる為に。


強くなってみんなを守れるように。


私の力で大切なモノを守れるように。



その為に私は『力』が欲しいの。



…最後まで諦めないっ!



必ずたどり着いて見せるわ。



進むべき道の先に望むべき未来があるのなら頑張れるから。



美咲さんも。


暗黒迷宮も。


そして彩花も。



…何もかも越えて見せるっ!



ウィッチクイーンとの戦いで起きた悲劇を二度と繰り返さないために必ず強くなってみせるわ!



そのためにね。



美咲さんが帰ってくるのを待つことにしたの。




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