光と影
「乃絵瑠ちゃんは光属性を得意としてるみたいだけど。だからと言って、闇が使えないと思うのは間違いだから、そこはまず理解しておいてね。」
…え?
…間違いなの?
「でも、光と闇は相反する力ですよね?両方を覚えるのは難しいと思うんですけど…。」
実際に使える人がいるから絶対に無理っていうわけじゃないから控え目に問い掛けてみたんだけどね。
「いいえ。難しくはないわ。」
美咲さんは迷うことなく、さくっと答えてくれたのよ。
「難しいと思うから出来ないの。簡単に出来ると信じれば結果は必ず出るわ。」
…えっと、そういう問題なの?
気持ちの問題とかそういう話じゃないわよね?
美咲さんの言葉に疑問を感じてしまったことで、
美咲さんはさらに説明を続けてくれたのよ。
「大丈夫よ。疑問に思う必要はないわ。普通に考えれば良いの。魔術に限らず、どんな物事にも言えることだけど、出来ないと思えばそこまでよ。だけど出来ると思って努力すれば、結果は必ず訪れるの。それが失敗か成功かは別としても、動き出さなければ結果は出ないわ。」
…まあ、確かに?
…言ってることは正しいと思う。
でもね?
言葉の意味は納得出来るけど。
ここで重要なのは成功か失敗かっていう部分よね?
…やってみて、もしも失敗なら無意味じゃない?
なんて思うんだけど、
美咲さんはそうは思わないみたい。
「どんな魔術師だって最初から何でも出来るわけじゃないわ。誰だって最初は失敗を繰り返すものよ。そうして失敗を乗り越えた先に成長があるの。失敗を恐れて挑戦を諦めるくらいなら、最初から求めるべきじゃないわ。例えどれほどの失敗をしたとしても、失敗を乗り越えて高みを目指すのが本当の意味での成長なのよ。」
…う~ん。
…確かに。
完全完璧な正論よね。
今までの言動からは想像も出来ないような真面目な意見を聞いて、
私の考えが間違ってることに気付かされた気がしたわ。
「まずは努力をしなさい、と言うことですか?」
「ええ、そうね。そうなるわ。だけど間違った方向に進まないように私がちゃんと傍で見ていてあげるわ。進むべき方向と、やるべきことはすでに考えてあるから心配しないでね。」
…進む方向とやるべきことって何?
…わりと重要な問題よね?
「どうするんですか?」
「闇を学ぶのよ。その為にはまず『影』を知ることが重要になるわ。まずはそこからが訓練の始まりね。」
…影を知ること?
よくわからないけど。
そもそも闇と影って何が違うの?
「良い?乃絵瑠ちゃん。今から私が説明する話をしっかりと覚えるのよ。」
「あ、はい。」
素直に頷いてみると、
美咲さんはすぐに説明を続けてくれたわ。
「一見、光の魔術は闇を否定しているように見えなくもないわ。だけど良く考えてみてね?この世界は光と影で成り立っているのよ。光が在る所には必ず影が在るの。そして影が在る所には光が在るのよ。光が在るからこそ影は存在できるし、逆に言えば影がなければ光は光として存在できないということでもあるわ。」
…う~ん?
何だかややこしい説明よね?
光が在るから影が在る。
そして影が在るから光が在るっていうことは何となく理解できるけど。
だから何?っていう感じでもあるわよね?
どちらかが欠けると互いの存在は失われるっていうことかな?
光が光として。
闇が闇として。
互いに存在する為には、
どちらも存在しなくてはいけないっていう話よね。
どちらか片方だけの世界なんて有り得ないわ。
どちらも存在するからこそ世界は成り立っているのよ。
美咲さんの説明はそういうことだと思うの。
「そろそろ分かってきたかしら?光を扱えるということは、必然的に影も扱えるはずなのよ。もちろん、何の努力もなしに出来ることではないけどね。」
…まあ、うん。
…言いたいことは理解できるわ。
美咲さんの言葉には説得力があって、
私にもすぐに理解できる内容だったからよ。
「それじゃあ、影を極めることが私の訓練ですか?」
「ええ、まずはそこから始めることになるわ。光によって生まれる影を使いこなせるようになることが闇属性を極める為の第一歩になるでしょうね。」
…なるほど。
闇がどうこうじゃなくて、
光を駆使する感じなのね。
美咲さんの説明を聞いて、
ようやく希望を見出だせたような気がしたわ。
まずは影を極めること。
そこから闇属性に発展させていくこと。
それこそが私の乗り越えるべき試練で、
それこそが暗黒迷宮を突破するための唯一の方法ということみたい。
…要するにね。
間接的に闇を操れっていうことよ。
美咲さんの話を聞いて、
ようやく一連の流れが理解出来たわ。
学園にいるみんなに追いつく為に。
今も成長を続けているみんなに置いて行かれない為に。
私が私の為に出来ること。
その答えがようやく見つかったような気がしたの。
「まずは影を極めること。それが私の進むべき道なんですね。」
「ふふっ。そういうことよ。乃絵瑠ちゃんが闇属性を極めるまで私が面倒を見てあげるわ。だから絶対に最後まで諦めないでね?」
「はいっ!全力で頑張りますっ!!」
進むべき道が見えた以上。
些細なことで悩んでる場合じゃないわ。
私は私の目的の為に進み続けるだけよ!
…待っててね、彩花。
必ず成長して帰るから。
…だからそれまで待っててね!
「もう迷いませんっ!!最後まで美咲さんを信じますっ!」
しっかりと宣言した私の言葉を聞いた直後に。
「あらあら♪」
美咲さんの表情が変化してしまったのよ。




