何人くらい
「うふふっ♪」
戸惑い怯える私を眺めながら、
美咲さんは満面の笑みで幸せそうに微笑んでる。
…うぅ。
美咲さんと同じ部屋なんて、
何をされるか激しく不安よね。
『契約』はキスだけだから、
その先までは心配しなくても良いはずなんだけど。
美咲さんを信用することなんて出来ないわ。
…全く信用出来ないのよ。
…全っ然無理!
…とにかく出来ないの!
むしろ信用という言葉からは掛け離れてる存在だと思っているわ。
…ちゃんと寝れるのかな?
その一点において不安が尽きないのよ。
…寝込みを襲われるとか、恐すぎるんだけど。
なんて考えているとね。
「心配しなくても大丈夫よ♪」
そんな私の考えさえもお見通しなの?
美咲さんは笑顔のままで告げてきたわ。
「寝てる子にいたずらをする趣味はないから♪起きてる時の反応は見ていて楽しいと思うけれど。寝てる子にいたずらをしても面白くないでしょう?私としては乃絵瑠ちゃんの恥ずかしがる顔が見たいだけだから寝込みを襲ったりなんてしないわよ♪」
自信満々に答えてくる。
寝込みは襲わないと言い切る美咲さんだけど。
…全く信用出来ないわ。
だけどもしもその言葉が真実ならちょっとは安心できるはず?
…でもね~。
私の恥ずかしがる顔が見たいっていうところが、
それはそれでちょっと問題よね?
激しくご遠慮願いたいわ。
…そもそも美咲さんって、どういう人なの?
色々な意味で危険な人なのはもう十分すぎるくらい分かってるけど。
何がそんなに楽しくて、
何を目的としているのかがよく分からないのよね。
…そもそも、私の訓練も謎のままだし。
良いように美咲さんに遊ばれてるだけの気がするのよ。
…うぅ~ん。
…美咲さんと一緒にいて大丈夫なのかな?
身の危険も感じるけれど。
それ以上にこれから先のことにも不安を感じてしまうのよ。
…何を教えてくれるのかな?
そんな疑問を感じながら美咲さんを見つめてみると。
「聞きたいことがあるんでしょう?遠慮せずに聞いても良いわよ♪」
美咲さんは笑顔のままで、
必要以上にゆっくりかつ丁寧に告げてくるのよ。
「私のことなら何でも教えてあげるわよ♪ありとあらゆることを、たっぷりと、丁寧に、心行くまで、乃絵瑠ちゃんが、満足するまで、何十時間でも…ねっ♪♪」
…うぅっ。
美咲さんの言葉を聞いて『ゾクゾク…ッ!!!!!』と、感じる悪寒。
これ以上はないって思えるほどの悪寒が私の体を駆け巡ってる。
…恐すぎ。
…って言うか、気持ち悪い。
こういう言い方は失礼かもしれないけれど。
ただただ嫌悪感を感じてしまったわ。
…ここまで特殊な人は初めて見たかも?
今では見慣れた彩花でさえも、
かつては変な子だと思っていたけれど。
美咲さんは更にその上を行く存在だったのよ。
彩花に一途なあずさも相当変わった子だけどね。
美咲さんには遠く及ばないと思うわ。
…と言うか。
美咲さんと比べれば未来も奈々香も私の知る人全員が普通に思えるのよ。
それくらい美咲さんは特殊だと思うの。
…まあ、男女問わずって言う時点でまともじゃないけどね。
…って、あれ?
今更だけど些細な疑問を感じてしまったわ。
…聞いてみようかな?
…どうかな?
…聞かないほうが良いのかな?
聞けば更に不安が増すかもしれないからよ。
だけど聞いてみたい気がしたの。
「あの…。美咲さんって、今まで何人くらいの人とお付き合いされたんですか?」
「お付き合い?…う~ん?そうね~。」
好奇心で問い掛けてしまった私に、
美咲さんは笑顔のままで答えてくれたのよ。
「正確な数は覚えていないけれど…男性で10人くらいかしら?」
…男性で?
…と言うことは?
「女性は20人くらいかしらね?私も学生時代には楽しい青春の想い出が沢山あるわ。」
…えっと?
あっさりと教えてくれた美咲さんだけど。
後半の言葉を聞いて猛烈な危機感を感じてしまったのよ。
…女性のほうが多いってどういうこと!?
その一点も気になったけど。
…青春の想い出って?
普通そういう使い方はしないわよね?
疑問が多すぎて何から問いただせばいいのか分からなくなってしまったわ。
質問してみたことで余計に分からなくなってしまったのよ。
…美咲さんって、昔からそんな感じなんだ?
…だとすれば?
やっぱり奈々香は気苦労の絶えない日々を過ごしていたのかもしれないわね。
…心を閉ざすのも当然かも?
…せめて私は優しくしてあげようかな。
本気で奈々香が心配になってしまったんだけど。
「うふふっ♪その気があるのなら、乃絵瑠ちゃんと付き合ってあげても良いわよ♪」
聞きたくなかった言葉をあっさりと告げてくるのよ。
「お断りしますっ!!!!!」
速攻で断ったわ。
全力で否定したの。
本気で嫌だったからよ。
「そんな趣味はありませんっ!」
「あらそう?」
断言する私に美咲さんはさらりと告げてくる。
「そんな趣味も良いものよ♪普通では味わえない極上の幸せを感じさせてあげるわよ♪」
…ぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!
『ゾワァァァァァァッ!!!!!』と全身に広がる鳥肌が止まらない。
過去最高の悪寒。
今の美咲さんの一言は本気で怖かったわ。
『恐怖を越えた戦慄』ってやつよ。
ここが戦場なら間違いなく今の一撃で死んでたと思う。
そう思えるくらい尋常じゃない恐怖を感じてしまったのよ。
…もう無理。
…限界かも。
これ以上美咲さんと一緒にいると取り返しのつかないことになりそうな気がしたわ。
…あとで何があるとしても。
ここは逃げるべきかもしれないわね。
何もかも放り出して逃げ出そうと思ったところで。
「まあまあ、冗談はここまでにしておくとして、そろそろ本題に入りましょうか♪」
美咲さんが真面目な顔で話し始めたのよ。




