逃げるな!
「えっと。答えは明らかですけど。一応、確認しても良いですか?」
「ふふっ。ええ、いいわよ♪」
問い掛ける私に笑顔で頷いてくれたわ。
だけどね。
「確認なんてしなくても、乃絵瑠ちゃんが考えてる通りだけどね♪」
私が問い掛ける前にあっさりと認めてしまったのよ。
「私と乃絵瑠ちゃんの『二人』でここに泊まるの♪ず〜〜〜っと一緒よっ♪」
…うあぁ。
…やっぱり!?
ずっと一緒だと言われた瞬間に、
私の心は恐怖で壊れてしまいそうな気がしたのよ。
…今までその言葉が怖いと思ったことなんて一度もなかったけど。
発言する人次第で、
恐ろしく怖く感じる言葉なのね。
本来なら『ずっと一緒』という言葉は良い意味のはずなのに。
だけど美咲さんが使うと恐怖しか感じられなかったのよ。
…言葉って、怖い。
そこに込められる意味によって感じ方が全然違うことを知ったからよ。
…逃げた方がいいかも?
考えると同時に視線が自然と出口に向かってた。
…鍵はかけてないはずっ!
今ならまだ逃げられると思った瞬間にね。
「ああ…そうそう。」
美咲さんが話しかけてきたのよ。
「言い忘れる所だったけれど…先にこれだけは言っておくわね♪」
聞きたくない…って思ったわ。
聞けば後悔する気がしたからよ。
だけどもう手遅れだったみたい。
「一応、私は乃絵瑠ちゃんの為に仕事を休んで、みんなに迷惑をかけてまで準備を整えたんだから、その苦労を無駄にはしないでねっ♪♪」
…うぁ。
ただただ死刑宣告でしかなかったわ。
ここから逃げ出す前に最後の警告を告げられてしまったのよ。
楽しそうな表情で私を見つめる美咲さんの言葉からは、
『逃げるな!』という想いがヒシヒシと伝わってくるの。
…はぅぅ。
美咲さんを含めてギルドの人達に迷惑をかけているのは事実だから、
もう何も言い返せなくなってしまったわ。
…ぅぅぁぁ。
…確実に追い込まれてるぅ!!
完璧な準備を整えて私の包囲網を完成させた美咲さんに抵抗なんて最初から不可能だったのよ。
…それなのに。
「ち・な・み・に♪途中で放り出したら、それ相応の『違約金』が発生するから気を付けてねっ♪」
更に追い込んでくるのよ。
「ええええええええええ…っ!?」
完全に退路を断たれたような気がしたわ。
「そ・れ・と♪乃絵瑠ちゃんに、もう一度だけ言っておくわね♪」
幸せ一杯の満面の笑みを浮かべながら宣告してくるのよ。
「絶対に逃がさないわよっ♪乃・絵・瑠・ちゃんっ♪♪」
…ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!
絶望的な恐怖。
美咲さんの恐怖の発言によって、
私の心は完全に壊れた気がしたわ。
…私の人生、終わったかも?
絶対に逃げられないって分かってしまったのよ。
きっと美咲さんは私がどこに逃げても追い掛けて来ると思うの。
それこそ…地の果てまでも、よ。
…助けて、彩花ぁぁぁ。
ここにいない親友に願ってみる。
そんな私に美咲さんは笑顔で告げてくるの。
「ふふっ。目の前の現実から逃げ出すような乃絵瑠ちゃんに手を差し延べてくれる優しい人なんているのかしら?」
…うあっ!?
…何で分かるのっ!?
戸惑い続けてしまう私に。
「ホントに乃絵瑠ちゃんは分かりやすいわね~♪」
美咲さんは当然のように答えてしまうのよ。
…もう嫌ぁぁぁぁぁ。
…誰か助けて。
心の底から願ってしまったわ。
きっと奈々香も今の私と同じ気持ちだったのかもしれないわね。
…助けて、奈々香ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
どれだけ願っても届かないけれど。
それでも私は必死に願い続けたのよ。
…誰か~〜〜〜っ!!!
必死に願いを込めてみる。
そんな私を美咲さんは楽しそうに眺めていたの。




