30分耐えきれれば
《サイド:栗原薫》
…さて、さて。
私と成美ちゃんの着替えが終わったことで、
御堂君も加わった私達はのんびりとした時間を過ごしていたわ。
…だけど特にすることがないのよね~。
相変わらず船の揺れがすごいけど、
文句を言っても揺れがおさまるわけじゃないし。
大人しく堪えるしかないのよ。
…とりあえず、今の私に出来ることは何?
色々と考えてみる。
…う~ん。
…準備は必要かな?
現状でも出来ることが一つだけあったわ。
…薬を飲んだほうが良いかも。
『船酔い用の薬』なんて持ってないけど。
『馬車用の薬』なら鞄の中に入れていたはず。
…まあ、どっちも一緒だけどね。
乗り物酔いの薬としては同じような効果が期待できるはずなのよ。
効かなかったら効かなかったで、
その時に作り直せばいいだけだし。
とりあえず試してみるしかないわ。
…まあ、時間との戦いとも言えるけどね。
鞄の中から薬箱を取り出してテーブルの上に箱を載せてみる。
船の揺れでテーブルから箱が落ちないか不安を感じるけれど。
私の行動を成美ちゃんがじっと眺めていたわ。
「薬箱ですか?」
「ええ、そうよ」
「何が入ってるんですか?」
…何って言うか。
薬箱だから、もちろん中身は薬ばっかりよ。
「船の揺れが激しいから酔い止めの薬がいるかな~?って、思っただけなんだけどね。」
私の行動を眺める成美ちゃんと御堂君の視線を感じながら薬箱の中から酔い止めの薬を捜してみる。
…ん~?
…あっ!
…あった、あった。
「これよ。」
薬の入った袋をつまみとってからすぐに薬箱を閉じたわ。
船の揺れでテーブルから落ちて薬箱の中身が散乱なんてことになったら果てしなく面倒なことになるからよ。
しっかりと薬箱の蓋を閉じて鞄にしまったあとで、
取り出した薬を御堂君と成美ちゃんに差し出すことにしたの。
「酔い止めの薬なんだけど効果が現れるのは服用から30分後になるわ。だからもしもその間に酔ってしまったらもう手の施しようがないんだけど…。30分間耐え切れれば船酔いから逃れられるはずよ。」
まあ、耐えきれなかったとしても、
船酔いを軽減することはできるはず。
…どちらにしても飲んでおいて損はないってことよ。
二人に薬を手渡してから、
鞄の中から水筒を取り出して水も用意する。
「はい、どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
「ありがとう。」
差し出した薬と水の両方を受けとった二人は、
躊躇することなくすぐに薬を飲んでくれたわ。
「はう~。ちょっぴり甘いですっ♪」
成美ちゃんは嬉しそうに微笑んでいるわね。
「苦いかと思ったけど、飲みやすい薬だね」
御堂君も満足そうに見える。
そんな二人に微笑みを返してから、
私も薬を飲むことにしたのよ。
…ん~。
…まあまあかな?
薬の効果はこれから分かるとして、
味に関しては成功してると思うわ。
…あ~、でも、後味が少し苦いかな?
もう少し甘みを足すべきだったかもね。
…でも、あまり薬に小細工しすぎると薬の効果が下がるのよね~。
味を調整する為に配合を変えると薬の効果も変わってしまうからよ。
…まあ、このぐらいが妥当かな?
微調整は今後の課題として、
ひとまず水筒も鞄の中に詰め直しておく。
これで水筒が転がっていく心配もないはずよ。
「とりあえず、あとは様子を見るしかないわね。」
「ありがとうございますっ♪」
「ありがとう、栗原さん。」
「いえいえ、どういたしまして。」
お礼を言ってくれる二人に照れ笑いを返すと。
「やっぱり凄いですっ!」
成美ちゃんが褒めてくれていたのよ。




