表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1505/1570

演技力

「…そうね~?」



幸せそうな笑顔で小さく呟きながら微笑み続ける美咲さんが、

私を見つめながらスプーンを構えてる。



「悩んでいるのなら、私が食べさせてあげても良いわよ♪」



…うぁっ!?



「い、いえっ!結構ですっ!!」



適当な料理に狙いを定め始める美咲さんの動きに気付いて即座に拒絶することにしたわ。



「ちゃ…ちゃんと自分で食べれますからっ!!」



動きを止めた瞬間に美咲さんが襲い掛かってくる危険性を感じたことで、

大慌てで料理と向かい合うことにしたのよ。



…と、とにかく食べるしかっ!!



右手にお箸。


左手に小皿を構えて料理を取り集める。



そんな私の必死の動きを美咲さんは笑顔で見つめてる。


スプーンを手にしたまま私に狙いを定めているのよ。



…ま、負けないっ!!



自分でも意味不明な戦いを開始した私は、

一心不乱に料理と向き合うことにしたの。



そうしてまずはお箸でつまみ取ったミニトマトを口に運ぼうとしたんだけどね。



「あらあら…手が震えてるわよ?何なら口移しで食べさせてあげましょうか♪」



…ぶふぅっ!!



口に入れて食べようとした瞬間に、

危険度がさらに上昇してしまったのよ。



「い、いえっ。結構ですっ!!」



即行で拒絶したんだけど。


恐怖を通り越して嫌悪感としか言いようのない戦慄を感じてしまったことで、

盛大にミニトマトを吹き飛ばしていたみたい。



「ぅわぁ…っ?」



ミニトマトがテーブルの上に落ちて転がってく。



幸にもまだ噛んでなかったから汚くはないんだけど。


一緒に吹いた『唾』が料理にかかった気がしなくもないのよね。



「ご、ごめんなさい…っ。」



慌てて謝ったわ。


だけど美咲さんは笑顔を浮かべたままで、

私が吹き飛ばしたミニトマトを無言で回収してる。


そして全く自然な動きでミニトマトをお箸でつまんでから、

『パクッ』と自分の口に入れてしまったのよ。



…た、食べたっ!?



私が吹き飛ばしてしまったミニトマトを、

何の迷いも見せずにあっさりと口に入れたのよ。



そして。



「乃絵瑠ちゃんの味がするわ♪」



言わなくていいことを言ってくる。



…ぬあああああああああああああああああああああああっ!!!



全身を駆け抜ける悪寒。


絶望的な恐怖が私の心を支配していく。



…気持ち悪すぎっっっっっ!!!!



幸せそうな笑顔でミニトマトを咀嚼する美咲さんは、

必要以上にミニトマトを噛み続けてから私に問い掛けてくるのよ。



「口移しで食べさせてあげましょうか?」



…絶っっっっ対に嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!



心の中で絶叫しつつ全力で首を左右に振る。



それはもう『ブンブン』と音が鳴りそうなほどの勢いで美咲さんの提案を拒絶したわ。



「結構ですっ!!」


「ううっ…。」



はっきりと拒絶する私を見て、

美咲さんは瞳に涙を浮かべてた。



「ちょっと言ってみただけなのに…そんなふうに言わなくても良いじゃない…っ。」



演技とかそんな雰囲気じゃなくて、

本当にポロポロと涙を流して見せたのよ。



…うぅぅぅっ。



美咲さんの涙を見ただけで、

激しい罪悪感を感じてしまったわ。



…でも、ね?



ここで私が折れてしまったら口移しの餌食になってしまうのよ。



…それだけは断固として阻止っ!!!



「しくしく…。」



………。



涙を流し続ける美咲さんだけど。


もちろん私は気付いているわ。



さすがにね。


何度も騙されるほどお人よしじゃないの。



「演技はもう良いです。」


「………。」



ばっさりと言い切った私にちらりと視線を向けた美咲さんは、

一瞬で気持ちを切り替えて笑顔を見せてくれたのよ。



「あらあら、乃絵瑠ちゃんならすぐに引っ掛かると思ったのに随分と成長したわね。」



さっきまでの涙は最初からなかったかのように渇ききってる。



…演技にしても上手過ぎるでしょ。



嘘泣きの演技力は世界一かもしれないわね。



…なんて、馬鹿な考えはどうでも良いんだけど。



ひとまず危機は去ったってことよ。


それだけは安心できるわ。



…とは言え。



この料理の全てを食べるのは不可能だと思う。



唾をかけておいて言うのも何だけどね。


絶対に残る量なの。



「これ…全部は食べきれないですよね?」


「ふふっ。別に良いのよ。」



…良いの?



「最初から残す為にあるから、無理に食べる必要なんてないわ♪」



…は?


…残す為ってどういうこと?



食べないのなら用意する必要なんてないわよね?



色々と疑問を感じてしまうんだけど。


美咲さんは説明を放棄して微笑み続けてる。



「ちゃんとあとで説明してあげるわね♪」



…う~ん?



あとで話を聞いても遅いような気がするんだけど?



美咲さんはすでに自分の分の料理を取り分け始めてる。


そして楽しそうに私を見つめてくるのよ。



「乃絵瑠ちゃんの分も取り分けてあげましょうか?」


「あ、いえ。大丈夫ですっ!」



…またこの流れなのね。



いい加減に疲れてきたから、

素直に食事を再開することにしようかな?



悩むのも馬鹿馬鹿しくなってきたし。


お箸と小皿を持ち直すことにしたのよ。



…とりあえず今はご飯に集中。



色々な疑問は放置して、

さっさと夕食を済ませたほうが話が早いように思えたの。



「いただきます。」


「ふふっ。遠慮なくどうぞ。」



………。



食事を再開する私を美咲さんが楽しそうな表情で眺めてるけれど。


頑張って気にしないことにしたわ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ