純白のエプロン
《サイド:文塚乃絵瑠》
…うぅ~ん。
色々と考え事をしてる間に結構な時間が経った気がするわ。
気が付けば問題の部屋の前まで戻ってきていたからよ。
「確か…281番だったわよね?」
『二人は一つ』なんて、
どうでも良い覚え方は…本当に心の底からどうでも良いんだけど。
その読み方の裏には絶望すら感じるくらい深い意味がある気がするわ。
それはもう…そこはかとなく感じる恐怖なのよ。
…違うよね?
…それはないよね?
なんて全く思い込めない絶大な不安が拭えなかったわ。
「まさか…ね〜?」
恐る恐る扉に手をかけてみる。
すでに鍵は開いてるみたい。
「もう中にいるのかな?」
ゆっくり扉を開けてみると。
部屋の中からとんでもなく良い匂いが漂ってきたのよ。
「…うっわぁ~。匂いを嗅いだだけでお腹が鳴るわね…。」
こんなに良い匂いがが漂ってくるなんて、
どんな料理を用意したのかな?
ちょっぴり期待しながらお腹を手でさすっていると。
「お帰りっ♪乃絵瑠ちゃん♪」
部屋の奥から美咲さんが顔を覗かせたのよ。
「丁度良い時間よ♪」
出迎えてくれる美咲さんの笑顔はとても眩しくて、
とても魅力的に見えるわ。
だけどさっきまでの美咲さんとはホンの少しだけ違うところがあるのよ。
服装自体はさっきまでと同じなんだけどね。
今はフリル付きの純白のエプロンをかけているの。
…うっわ~〜〜。
…すっごく可愛いエプロン。
まるで新婚の奥さんが身に着けてるような、
とっても素敵なエプロンなのよ。
別に高級品でもないし、
どこにでもありそうなエプロンなのにね。
美咲さんが身につけているだけでね。
それだけで超一級品のエプロンに見えるの。
…あ~!
そう言えば料理の準備をするって言ってたっけ?
…と言うことは?
どこかから運んで来たのかな?
これって服が汚れない為のエプロン姿よね?
そんなふうに考えていると、
美咲さんが私の手を引いてくれたの。
「さあさあ、夕食の準備が出来てるわよ♪」
元気いっぱいに微笑んでくれる美咲さんだけど。
この笑顔が逆に怖いわね。
色々な意味で危険な人だからよ。
美咲さんを前にすると絶対に油断なんて出来ないわ。
…うぁぁ〜。
…胃が〜。
…胃が痛いぃぃぃぃぃ。
別に神経質な性格じゃないけど。
美咲さんを相手にする為には、
細心の注意を払わなければいけないのよ。
考えるだけで胃が痛くなってくるわ。
…とりあえず、部屋に入るしかないわね。
出迎えてくれた美咲さんに笑顔を返しつつ。
密かに怯えながら部屋の中へ足を踏み入れることにしたのよ。




