創始者の意思を
「ここから先は僕と近藤君だけで行動する。みんなは砦に戻って、竜の牙との戦いに備えてほしい。」
「「「「「了解しました!!」」」」」
僕の指示に従って、
仲間達は一斉に行動を始めてくれた。
隠れ家とも呼ぶべき僕達の砦に戻るためだ。
それはミッドガルム国内に広がる樹海の中にある。
竜の牙から離脱した僕達は樹海に身を潜めていたからね。
共和国と合流して竜の牙を叩き潰すために、
全戦力を本拠地に集めるつもりでいるんだ。
その目的と並行して、
彼女との交渉を進めることになるんだけど。
その為にはまずセルビナを叩く必要がある。
5人の希望を生存させるの為には、
セルビナに負けるわけにはいかないからだ。
…それに。
雪の部隊の安否も確認する必要がある。
雪の無事を願うと同時に、
最悪の状況も考慮しなければいけない。
…考えたくはないけれど。
派遣していた部隊が全滅となれば、
1千人の仲間を失うことになってしまう。
だけどね。
限られた戦力である大切な仲間達や、
愛すべき妹を失ったとしても、
僕達の戦いは止まらないんだ。
…最期まで戦い抜かなければいけない。
例えどれ程の犠牲が出たとしても。
例えどれ程の絶望が待っているとしても。
この戦いを止めることは出来ないからだ。
竜の牙を潰さない限り、
無意味な犠牲は今後も増え続ける。
秘宝を求める者達の欲望によって、
必要のない殺戮が繰り返されてしまうんだ。
…そんな暴虐を見逃すことは出来ない!
創始者の意志を受け継ぐ者として、
狂ってしまった竜の牙をこの手で壊滅させるつもりでいる。
…それが僕の役目だ!
単に竜の牙から離脱するだけでは意味がない。
竜の牙の名に与えられてしまった数々の汚名。
それら全てを清算する必要がある。
…竜の牙の名は世界中の魔術師にとっての希望でなければ意味がないんだ!
「…取り戻してみせる。」
離れていく仲間達の背中を見送りながら呟いて、
唯一残っている近藤君に振り返ることにした。
「さあ、国境を越えようか。きみを共和国まで送り届けるよ。」
「………。」
先行して歩きだす僕の後ろを近藤君がついて来る。
余計な会話は一切行わずに静かに行動する近藤君と共に、
国境を隔てるカルナック山脈へと足を踏み入れることにしたんだ。




