縁起が悪い
「成美ちゃん…大丈夫かい?」
「だ、大丈夫…です…っ。」
激しく揺れる船の影響で倒れないか心配になるんだけど。
成美ちゃんは健気に微笑んでくれていた。
「私なら、平気…ですっ。」
弱音を吐かない姿は頼もしいけれど。
…だけどね。
か細い声で答えてくれた成美ちゃんの表情は、
どう見ても大丈夫そうには思えないんだ。
…慣れない環境での悪天候だからね。
今はまだ笑顔を見せてくれているけれど。
そもそも体調もあまり良くないだろうから、
どこかで休ませてあげたほうが良いと思う。
…どうするべきだろうか?
ひとまず成美ちゃんが倒れないように支えてあげたほうが良いのかな?
成美ちゃんをそっと抱き寄せてみる。
そして船の中に戻ろうと考えたんだけど。
僕のすぐ隣では、
疲れ切った表情の栗原さんが完全に座り込んでいた。
「…もう無理ぃぃぃ。揺れすぎて…立てない…。」
船内へと続く入口の前で、
ぺたりと甲板に座り込んでいる。
栗原さんの結界のおかげで雨に濡れる心配はなかったんだけどね。
濡れた甲板に座っている栗原さんの制服のスカートはずぶ濡れになってしまっている。
…まあ、栗原さんもそうだけど。
成美ちゃんの服も着替えたほうが良いだろうね。
今もまだ喪服のままだからだ。
見た目的に動き難そうな雰囲気があるけれど、
それ以上に縁起が悪い気がしてしまう。
…二人とも着替えたほうが良いんじゃないかな?
そのために。
栗原さんにも手を差し延べることにしたんだ。
「ここにいても風邪をひくだけだからね。一旦、中に入ろうか。」
「あ…ありがと。」
震えながら差し出してきた栗原さんの手をつかみ取る。
「大丈夫かい?」
「ま、まあ…なんとか…?」
ふらつく栗原さんを立たせてから、
僕達は船内に移動することにした。




