出港
《サイド:長野淳弥》
…一旦、お別れだな。
御堂達が去ったあとで、
町中に響いていた警報が鳴り止んだ。
おそらく黒柳大悟が指示を出しているのだろう。
警報の代わりに船の汽笛が鳴り響いて、
海軍の軍船がゆっくりと動き始める。
どしゃぶりの雨の中を動き出す船だが、
大荒れの波によって大きく揺れる船の甲板に御堂が立っている姿が見えた。
「御堂っ!!」
どうして呼び掛けたのか?
自分でも良く分からない気持ちだったが、
それでも俺は船に向かって駆け出していた。
「御堂!!お前は絶対に生き残れっ!!」
少しずつ離れていく船に限界まで駆け寄って全力で叫ぶ。
「何があっても絶対に死ぬなっ!あとで俺も追い掛ける!だからそれまで死ぬんじゃねえぞっ!!」
「ああ、淳弥!きみが来てくれるのを待っているよ!だからきみも生き残るんだっ!!」
御堂は笑顔を浮かべながら、
大きく手を振ってくれていた。
「もう一度再会出来る日を待ってるから!だから必ずまた会おう!」
…ああ、約束だ!
「俺は必ずお前の隣にたどり着く!それまで…それまで絶対に死ぬなよ!御堂!!」
互いに叫ぶ間にも徐々に距離の離れていく船。
その距離は数メートルから十数メートルへと広がっていく。
…翔子が守り抜いた共和国だ。
俺も全力で守り抜く!
それだけは絶対に約束する!
心で誓う俺の側に里沙が駆け寄ってきた。
そして俺と同じように船に向かって叫んでいた。
「またね~っ!!!」
全力で手を降る里沙の声に誘われたのか?
常盤成美がおぼつかないあしどりで御堂の側に寄り添っている。
「さ……ん…!……っ!」
必死に手を降り返す常盤成美の声は雨と風に遮られて聞き取れないが、
その想いはまっすぐに里沙に向いているような気がした。
「ばいば~いっ!成美ちゃんも、体には気をつけてね~!!」
必死に叫ぶ里沙の声が届いているかどうかは分からない。
だがそれでも常盤成美が懸命に手を振り返しているのは何となく分かった。
「ばいば~い!!またね~~~~!!」
明るく元気に見送る里沙だが。
ふと気が付けば、
いつの間にか百花も里沙の傍に寄り添うように立っていた。
「…行っちゃったわね。」
「うん。」
呟く百花に頷く里沙。
少し離れた場所では米倉宗一郎と琴平重郎と桜井由美の3人が去り行く船を見送っている。
…まあ、色々とあったが。
米倉宗一郎は秘宝を奪い取らなかったようだな。
これで秘宝は常盤成美と共に海の上だ。
そしてセルビナへ…か。
秘宝を持っているのを直接確認したわけではないが、
おそらく秘宝は常盤成美が持っているはずだ。
…ただの直感だけどな。
そんなふうに思いながら船に背中を向けて米倉宗一郎に歩み寄る。
「俺達は竜の牙の掃討に協力します。」
「ああ、きみ達の活躍を期待している。」
礼儀として頭を下げる俺に、
米倉宗一郎は温かな言葉をかけてくれていた。
………。
微笑む米倉宗一郎の笑顔には、
俺を疑うような猜疑心は感じられない。
…これは演技か?
…それとも本心か?
どちらかは分からない。
米倉宗一郎が気付いているのかどうかもまだ分からないからだ。
だが、今の言葉が嘘でないことは何となく感じられる。
…仮に敵だとしても使える間は使うってところかもしれないな。
だとしたらそれでいいと思う。
「御堂にばかり無理はさせられません。俺も強くなって共和国を守る為に戦います。」
「ああ、頼りにしている。」
米倉宗一郎は笑顔で頷いてくれた。
そして船に背中を向けて動き出す。
「一度学園に戻って、今後の方針を話し合おう。」
「はい!」
歩きだす米倉宗一郎のあとを追って、
俺達は再び学園に戻ることになった。
ここで共和国編は終了になります。
次からがセルビナ編です。




