表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1474/1587

治癒以外の理論

《サイド:御堂龍馬》



…ふう。


…少し遅くなったかな?



みんなを待たせているかもしれないと考えながら校門を目指していると。


校門のすぐ側で待ってくれている栗原さんの姿が見えた。



…あれ?


…まだ一人なのかな?



ひとりぼっちで何だか寂しそうに見えるから、

成美ちゃん達はまだ来ていないみたいだね。



…とりあえず、栗原さんと合流しよう。



そのために走り続けていると。


栗原さんも僕の姿に気付いてくれたようで、

大きく手を振ってくれたんだ。



「御堂君~!」



両手を上げて手を振ってくれている栗原さんに全力で駆け寄る。



「遅くなってごめん。」


「大丈夫、大丈夫。待つのには慣れてるから!」



真っ先に謝ってみたんだけど。


栗原さんは笑顔で出迎えてくれていた。



とても優しい微笑みを浮かべる栗原さんの笑顔を見ているだけで、

心が安らいでいくような不思議な感じがするね。



…成美ちゃんとは違った輝きかな?



どちらの笑顔にも安らぎを感じるけれど。


栗原さんの笑顔には優しさがあって、

『慈愛』に満ちているように思える。


ただ純粋に『可愛い』と思える成美ちゃんとは違って、

栗原さんの笑顔には安らぎを感じることができるんだ。



…沙織もこんなふうに微笑んでいたような気がするかな。



ふとしたことですぐに沙織を思い浮かべてしまう自分がいる。



…どうしてかな?



傍にいた時よりもね。



離れてしまった今のほうが、

沙織のことを考えてるかもしれない。



これが未練なのかな?


それとも後悔だろうか?



あるいは罪悪感…かもしれない。



今のこの気持ちを何て呼ぶのかは分からない。


だけどね。



こんなふうに想えることが愛なんじゃないかな?



例えもう会えないとしても。


例えこの想いは届かないとしても。



きっと一生忘れられないと思うんだ。



この想いはきっと一生僕の心の中にあると思うから。


だから僕の心にも沙織はいるんだ。



そう想えるだけで良い。



今はただ…それだけで良いんだ。



…忘れないよ。


…沙織。



思い浮かべる沙織の笑顔を大切に想いながら、

目の前にいる栗原さんと向き合うことにした。



「成美ちゃんはまだ来てないのかい?」


「ん?あれ?一緒じゃなかったの?」


「え、ああ…。今は別行動をしてるんだ。成美ちゃんにも色々と準備が必要だと思って、女子寮に行ってもらったんだよ。」


「女子寮?それって沙織の部屋にってこと?」


「そうだよ。沙織の部屋なら成美ちゃんに必要な物も揃うだろうし。色々と想い出の物も見付かるかも知れないからね。」


「あ~、なるほどね〜。」



栗原さんは納得してくれたようだ。



「…ああ、そうそう。」



それはそれとして、

栗原さんに渡さなければいけないものがあるんだった。



「先にこれを渡しておくよ。」



鞄の中から総魔のノートを取り出して手渡しておく。



「これって例のアレ?」


「ああ、そうだよ。」


「本当に他にもあるのね~。」



栗原さんは丁寧な手つきでノートを受け取ってくれた。


そして興味深そうにノートを眺める栗原さんだけど。


僕にはほとんど理解出来ない内容だったりする。



だけどすでに1冊のノートを解読している栗原さんは、

特に迷う様子もなく読み進めているように思えた。



「全部読めるのかい?」


「まあ、読むだけならね~。でも、実際に理論を構築して魔術として完成させるにはそれなりの研究が必要だけどね。」



控えめに答える栗原さんだけど。


僕としては読めるだけでも凄いと思うよ。



「それだけでも凄いね。」


「そう?読めても役立てないなら意味はないと思うけどね~。」



…うーん。



それはそうかもしれないけどれど。


そもそも読めない僕よりは良いんじゃないかな?



だけど栗原さんにしてみれば、

読めるだけで実現できなければ意味がないという考えらしい。



「でも、まあ…言いたいことは分からないでもないかな~?」



僕の気持ちを察してくれたのかな?


栗原さんはノートを大切そうに鞄の中に仕舞いながら照れ臭そうに笑っていた。



「魔術の理論が完成したとしても…攻撃系の魔術は苦手だから私には使えないしね。」



…ん?


…あれ?



栗原さんの言葉を聞いた瞬間にね。


ちょっとした違和感を感じてしまったんだ。



「もしかしてそのノートには治療以外の理論もあるのかい?」



てっきり総魔のノートは成美ちゃんの瞳に関連する研究資料か、

特性に関する調査資料だと思っていたんだけど。


それだけじゃないんだろうか?



「軽く内容に目を通しただけだから詳しいことは分からないけど。ルーンに関連する記述もあったわよ。もちろんそれに『連なる魔術』もね。」



ルーンと関連する魔術?


僕は気づかなかったけれど。


他の魔術に関しても書かれているらしい。



…そう言えば?



成美ちゃんの瞳に関してばかり見ていて、

他の研究はあまり見ていなかったかもしれない。



一応、全員の特性に関する記述があったことは覚えているけれど。


他にもあったのは気づかなかったんだ。



…まあ。



僕には読めないから気にしていなかったという理由もあるけどね。



だけど僕が気付かなかっただけで、

他にも色々とあるのかも知れない。



「解読が出来たら僕にも教えて欲しいんだけど…。」


「ええ、良いわよ。まあ、時間はかかると思うけどね。魔術の理論が完成次第、報告するわ。」



気楽に引き受けてくれた栗原さんだけど。


その表情が、

ふいに明るさを増したような気がした。



「あっ!成美ちゃんが来たわよ!」



…ん?



栗原さんの視線を追って振り返ってみると。


里沙と百花に手を引かれながら近付いて来る成美ちゃんの姿が見えたんだ。



…ふう、良かった。


…これで全員集合かな?



まだ淳弥がいないけれど。


淳弥を捜すのは難しいと思う。



…諜報部は翔子が責任者と言われていたけれど。



実質的に諜報部を仕切っていたのは淳弥だからね。



もしも淳弥が本気で隠れたら、

風紀委員を総動員しても捜し出すのは不可能だと思うんだ。



…まあ、隠れてはいないとしても捜すのは無理かな?



その為の時間もないし。


集合場所は決まってる。



無理に合流を急がなくても港に向かえば会えるはず。



だから今は成美ちゃん達を出迎えることにしたんだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ