やせ我慢
《サイド:常磐成美》
「お待たせ~!」
「遅くなってごめんなさい。」
元気良く挨拶をする芹澤さんと矢野さんに連れられて、
ようやく御堂さんと合流することが出来ました。
…ただ。
今日は走ってばかりなので、
少し疲れてしまいました。
ほとんど運動をしたことがなかったので、
ちょっぴり気持ち悪いです。
「ふぅ…はぁ…。」
何度も深呼吸をして呼吸を整えようと思うのですが、
熱っぽくて頭も痛くて今にも座り込んでしまいそうな気分です。
だけどここで倒れたらみなさんに心配をかけてしまうので、
もう少しだけ頑張りたいと思います。
…なんとか、今は。
精一杯頑張ろうと思っていると。
「………。」
何故か栗原さんが近付いてきました。
そして覗き込むように、
私の表情を見つめられてしまったんです。
「…ん〜?」
…あぅぅぅ。
私は隠しているつもりでも、
栗原さんは気付いたのかもしれません。
…だからでしょうか?
「精神的な疲労はともかく、肉体的な疲労なら…?」
私を診ていた栗原さんは、
私の胸に手を添えてから魔術を発動してくれました。
「ヒーリング!!」
魔術が発動すると同時に栗原さんの両手が輝いて、
私の体を優しい光が包み込んだんです。
その瞬間に気分が良くなったような不思議な感じがしました。
…あ、あれ?
光に包まれてすぐに楽になったんです。
さっきまで苦しかった呼吸が落ち着いて、
重く感じていた体もいつも通りの感覚に戻っていました。
…もしかして治ったのかな?
戸惑う私の顔を眺めていた栗原さんが微笑んでくれています。
「うんうん。顔色が良くなったみたいね~」
治療を終えて魔術を解除したようです。
光りが消えたあとでも、
先ほどまでの気持ち悪さが嘘のように消えていました。
「あ、ありがとうございますっ!」
「いいのいいの。でも、それはそうと…。成美ちゃん、何だか良い匂いがするわね。」
「え?あ…は、はい。お姉ちゃんが使っていた香水があったので、借りてきたんです。」
「あ~!なるほどね~。」
私の説明を聞いてから、
栗原さんは私に顔を近付けて香水の匂いを嗅ぎ始めました。
…あぅぅぅぅ。
ちょっぴり恥ずかしいです。
「確かに沙織と同じ香りね。」
納得してくれた様子の栗原さんの後ろにいる御堂さんも楽しそうに微笑んでくれていました。
「良かったね。成美ちゃん。」
「あ、はいっ♪」
御堂さんの言葉がすごく嬉しくて、
寮に行って良かったと思えました。
「お姉ちゃんのお部屋に行けて良かったです♪」
「ははっ。」
「ふふっ。」
素直に喜ぶ私を見て微笑みを向けてくれる御堂さんと栗原さんすぐ側では、
芹澤さんと矢野さんも微笑んでくれています。
こんなふうに優しい人達に囲まれていることに幸せを感じてしまいました。
…お姉ちゃん。
…翔子さん。
…私ね。
…幸せだよ♪
これからどうなるかは分からないけれど。
この幸せな気持ちがずっとずっと続いて欲しいと思います。
これからもずっと。
いつまでもずっと。
…続いて欲しいです。




