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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1473/1579

個人的な考え

《サイド:栗原薫》



…うぅ~ん。


…暇ね〜。



「早く着きすぎたのかな?」



待ち合わせ場所の校門に着いてからそれなりの時間が過ぎたような気がするんだけど。


肝心の二人がまだ来ないのよ。



御堂君と成美ちゃんの二人と校舎の屋上で別れたあとでマールグリナから乗ってきた馬車に荷物を取りに行って急いで校門まで来たんだけどね。



御堂君と成美ちゃんはまだ校門に来ていないわ。



「知らない場所で一人きりって結構寂しいわね〜。」



…って言っても。



周囲ではこの学園の生徒や教員が戦闘の後始末に追われているし。


中断した葬儀の親族や関係者が校門から出て帰宅しようとしているから、

完全にひとりぼっちっていうわけじゃないんだけどね。



だからと言って知らない人達に話し掛けようとは思わないわ。



…別に話し相手が欲しいわけじゃないしね。



大人しく待ってるのが一番良いと思うのよ。



…ただ、なんとなく暇なだけで。



急ぐべき状況で足止め状態って思うから、

心が焦ってしまうっていうだけなのよ。



「まだかな〜?」



声にだしてみても御堂君と成美ちゃんはまだ来そうにないわ。



…代わりに誰か知り合いが来ないかな?



なんて考えていたらね。



「あっ!」



知り合いが校門に近付いて来る姿が見えたのよ。



見えたのは3人。



琴平学園長と桜井学園長に米倉元代表だったわ。



「学園長~っ!」


「ああ、栗原さん。」



校門から呼び掛ける私に気付いて、

学園長が私に駆け寄ってくれたのよ。



「ここにいらしたのですね。お怪我はありませんか?」



足を止めて尋ねてくれた学園長の傍で、

桜井さんと米倉元代表も足を止めて呼吸を整えてる。


その様子を眺めながら学園長に頷くことにしたのよ。




「私なら大丈夫です。御堂君達と行動していたので特に問題はありません。」


「そうですか。無事で何よりですね。」



笑顔で答えた私に学園長が微笑んでくれたわ。



…そして、尋ねられてしまったのよ。



「これから港に向かいますが、栗原さんはどうされますか?」



…う~ん。


…どう答えるべきなのかな?



「えっと、御堂君達と合流してから私も港に向かうつもりです。ですが…」



少しだけ言い難い気持ちを感じるけれど。


それでも学園長にお願いしてみることにしたのよ。



「そのあとで私も御堂君達と一緒に船に乗ろうと思ってるんですけど…。ダメでしょうか?」


「船にですか?それは戦争に参加するという意味でしょうか?」


「えっと~…はい。」


「………。」



控え目に答える私を眺めてから、

学園長は後ろにいる米倉元代表に振り返ったわ。



「よろしいのでしょうか?」


「…ああ、そうだな。」



問い掛ける学園長に対して、

米倉元代表は微笑みながら頷いてた。



「彼女なら大歓迎だ。これから始まる戦いにおいて、どれほどの負傷者が出るか分からんからな。一人でも多くの医師が増えるのはありがたい。」


「…だそうです。」



米倉元代表の意見を聞いてから私に振り返った学園長の表情はどことなく寂しそうに思えたわ。



「…どうかされましたか?」


「いえ…個人的な感傷です。」



…個人的?



「私としては愛里の願いを叶えるために栗原さんには出来る限り安全な場所にいていただきたいのですが…あなたが望むのであれば無理に引き止めることはしません。」



…ああ、なるほど。



学園長としては私が戦争に参加するのは反対ってことなのね。



…まあ、そう思うのは当然かもね。



そもそも私を『戦争に巻き込まない』ことが、

兄貴がアストリアの潜入部隊に名乗り出た理由でもあるし。


愛里も私の安全を願って、

マールグリナに私を残していったのよ。



…だからね。



私は御堂君達と一緒にアストリアに行くことができなかったの。



兄貴と愛里が命懸けで反対したから。


その想いを無下にしないために、

一人でマールグリナに残ったの。



…だけどね。



今の私の立場的に戦争から逃げるのは難しいと思うのよね〜?



クイーンは私を利用しようとしているし。


私に託された力や想いに関しても分からないままだし。



…何よりもね。



またみんなを見送って、

私だけが安全な場所にいるっていうのはもう嫌なのよ。



「心配していただいているのに…申し訳ありません。」


「いえいえ。栗原さんが決めたことなら仕方がありません。大人しく見送らせていただきます。」



…う~ん。


…ちょっぴり気まずいわね。



だけど私の自由を認めてくれた学園長に、

今度は私が尋ねてみることにしたわ。



「学園長はこれからどうされるのですか?」


「私はマールグリナに戻ります。朱鷺田知事や三倉さん等の主力とも言える方々が亡くなってしまった現状で町を放置することは出来ませんからね。」



…確かに。



指導者と呼べる人達が軒並みいなくなってしまったのよ。



アストリアの消滅と町の襲撃事件。



その二つのせいで、

学園長と理事長以外のほとんどの有力者が亡くなってしまったから。



「戦争を終わらせることも重要ですが、竜の牙の動向も気になりますので、海軍の一部隊を率いて町に戻るつもりでいます。」



…ああ、そっか。



そう言えば学園長の目的は海軍の戦力を借りて、

町の治安を維持することだったっけ?



ジェノスには海軍の本部があるから、

常駐する部隊を借りるためにマールグリナから出向いて来たのよ。



…すっかり忘れていたわ。



だけど改めて当初の目的を思い出したことで、

学園長に頭を下げて謝ることにしたのよ。



「わがままを言ってすみません。でも…私も何か出来ることをしたいと思うんです。戦争に参加してお役に立てるかどうかは分かりませんけど、精一杯の努力はしたいと思っていま

す。」


「…そうですか。栗原さんが自分で選んだ人生に私が口出しすることは出来ませんね。あなたはあなたの思うように行動して下さい。」


「すみません…。」


「いえいえ、あなたが帰るべき町は私が責任を持って守ります。ですから、必ず帰ってきてください。あなたが生きること。そしてあなたの幸せこそが愛里の一番の願いなのですから。」


「はい。」



私の幸せを願ってくれる学園長に、

もう一度頭を下げることにしたの。



「約束します。私は必ずマールグリナに帰ります。生きて、必ず帰ります。」


「ええ。」



真剣に答えた私を見て、

学園長は嬉しそうに微笑んでくれたわ。



「栗原さんの言葉を信じます。せめてあなただけでも幸せになって頂きたいと思いますからね。亡き愛里の為に…。そして栗原徹君の為にも。」


「ありがとうございます。」


「いえいえ、良いんですよ。」



話を終えた学園長は、

冷静な態度で米倉元代表に振り返ったわ。



「それでは行きましょうか。」


「ああ、そうだな。」



先を促す学園長に頷いた米倉元代表が、

校門に視線を向けて歩き始める。



「俺達は先に行くが、御堂君達が来たら港で待っていると伝えてくれ。」


「あ…はい。分かりました。」


「頼んだぞ。」



即座に答えた私に微笑んでから、

米倉元代表は走り出したわ。


そのあとを追って桜井さんと学園長も動き出す。



「先に行くわね〜。」


「それではまた後ほど…。」



学園長達は一度も振り返ることなく、

全力で校門を走り抜けて行ったのよ。




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