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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1471/1602

香水

「里沙。準備は終わったの?」



百花に聞かれた直後に、

何もしてないことを思い出してしまったわ。



「あ、あは…あははは…っ。」



渇いた笑い声をあげながら後ろに振り返ってみるとね。


すでに鞄を背負って準備を整え終えた姿が見えたのよ。



「早っ!?」


「私の部屋は2つ隣だから、早くて当然でしょう?」



驚く私に呆れ顔で答える百花の言葉を聞いて思い出す。



…あ〜、そっか。


…百花は同じ階だっけ?



翔子や他の知り合いの子達は別の寮に部屋があるんだけど。


私と百花と沙織の部屋は同じ寮の中にあるのよね~。



百花は1年先輩だから単なる偶然なんだけど。


沙織と一緒なのもたまたまだとは思うわ。


翔子は全力で羨ましがっていたけどね。



…って!



無駄なことばかり考えていないで準備よ!



…じゅ・ん・び!!



服の準備は出来てるって言ってたわよね?



だけど成美ちゃんの為に他に必要な物も集めないといけないのよ。



…まあ、女の子だしね~。



男子と違って着替えさえあればそれで良いというわけにはいかないわ。



例え向かう先が戦場であろうとも!


女性としての努力は必須なのよ!



くしや化粧品。


そしてリボン等の装飾品諸々。



必要な小物を全て揃えて常に美しさを維持するべきなのよ!!



どろまみれ、

ほこりまみれで、

あせくさい、

きずだらけの女ってどうなの?



…なんてことにならないように!



最小限の準備は揃えるべきなのよ!!



…って、まあ。



そんなふうに考えてる人がどの程度いるのかは知らないけどね。



私はそう思うのよ。



…で。



実際に翔子と優奈ちゃんの鞄を見た限りでは二人もちゃんと用意していたと思うわ。


鞄の中に詰め込まれていた小物の数々。



邪魔にならない程度に、だけど。


やっぱり用意するのは当然だと思うのよね。



「適当に探せば良いのかな〜?」



ちょっぴり気が引けるけれど。


沙織の部屋を探ることにしたわ。



…成美ちゃんには言い難いけど。



沙織の手荷物は全て戦場で消失したでしょうしね。



だから全てが揃えられるとは思っていないわ。



でもね?



ある程度あればそれで良いと思うのよ。


足りない分は私が用意しても良いしね。



…一応よ、一応。



必要な物は色々とあるわ。


女性である以上は色々とね。



でも、どこかへ出掛けるという経験がなさそうな成美ちゃん一人だと準備が整わないと思うから私達が手伝う必要があるのよ。



「どう、百花?これくらいで良いと思う?」



必要な物を適当に揃えて机の上に置いてみると。



「良いんじゃない?」



百花は小物を眺めて少し考えてから小さく頷いてくれたわ。



「大体、揃ってると思うわよ。」


「おっけ~!」



百花の確認もとれたことだし。


ひとまず沙織の荷物を成美ちゃんの鞄の中に詰め込むことにしたのよ。



「よしっ!これで準備万端!いつでも出発出来るわよっ!」


「ありがとうございますっ♪」



準備を終えて鞄を閉じる私に、

成美ちゃんは素敵な笑顔を見せてくれたわ。



…か、可愛い〜〜〜〜っ!



全力で成美ちゃんを抱きしめたい気持ちになったけれど。


あまり時間をかけると百花に怒られそうな気がしたから勿体ないけど諦める。



…いつでも出来るしね~。



ひとまず成美ちゃんと手を繋いで歩きだすことにしたのよ。



「校門へ急ぎましょう。きっと御堂君が待っているわ。」


「あ、はいっ!」



素直に着いて来る成美ちゃんだけど。


その表情はどこか寂しそうに見えるわね。



「…どうかしたの?」


「い、いえ…。ただ少しだけ…寂しいと思っただけです。」



…寂しい?


…何が?



よくわからないけれど。


成美ちゃんなりに思うことがあるようね。



…う~ん。


…どうすれば良いのかな?



たぶん沙織の想い出が残るこの部屋を離れるのが寂しいっていう意味だと思うけど。



成美ちゃんに笑顔を取り戻してもらう方法って何?



…そんな都合の良い方法なんてあるの?



難しい問題に頭を悩ませる私の背後で、

百花が沙織の机に歩みを進めて引き出しの中を探り始めたわ。



「どうしたの、百花?」


「ちょっとね…。あっ…!あったわ。」



私の質問に答える前に目的の物を捜し当てたようで、

笑顔を浮かべながら成美ちゃんに近付いてきたのよ。



「予備があったから、これで当分の間は使えるはずよ。」



…ん?


…予備?


…それって、もしかして?



何かを持ち出した百花が成美ちゃんに差し出したのは香水だったわ。



沙織が愛用していたものよ。


百花は沙織の匂いを感じられる香水を成美ちゃんに吹き掛けてる。



「こうして少しだけ付けて…」



成美ちゃんの手首に一度だけシュッと吹き掛けて、使い方を教えていたのよ。


百花の指示に従う成美ちゃんからは、

ほんのりと沙織の匂いが漂ってきたわね。



甘くて柔らかな香りなのよ。



沙織の部屋に残る匂いと同一の香りでもあるわ。



「あっ!お姉ちゃんの匂いがします♪」



沙織の香りが自分から漂うことに気付いたようね。


少しだけ驚くような表情を見せた成美ちゃんだけど。


すぐに笑顔を取り戻してくれたのよ。



「ありがとうございますっ♪」



成美ちゃんの笑顔を見て、

私と百花も微笑んでおく。



「鞄に入れてあげるわね~。」



百花から香水を受け取った私は、

沙織の香水を成美ちゃんの鞄に仕舞ってあげたわ。



…これで今度こそ準備万端ね。



「それじゃあ、そろそろ行くわよ~!」



成美ちゃんと百花が部屋の外に出たあとで扉をしめて鍵をかける。



…あとは管理人さんに鍵を返してから校門に向かうだけね。



「出発~!」



成美ちゃんの手を引きながら、

百花と一緒に1階を目指して歩きだすことにしたのよ。



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