沙織の部屋
《サイド:芹澤里沙》
…さて、と。
御堂君の依頼を受けた私と百花は、
ひとまず成美ちゃんを女子寮に案内することにしたわ。
「ここが沙織の部屋よ〜。」
率先して扉の前に立って、
管理室で借りてきた鍵を使って扉を開く。
『キィー…ッ。』と小さな音を立てながら開く扉。
…だけど。
考えてみると沙織の部屋に入るのって実は初めてかも?
「遠慮なく入って良いわよ~。」
なんて言ってみるけれど。
どっちかって言うと、
私が遠慮してしまう立場だったりするわね。
…まあ、翔子は意味もなく入り浸ってたみたいだけど。
私がここに来るのは初めてのはず。
だからたぶん、百花もそうなんじゃないかな?
「とりあえず私達はお邪魔だと思うから、必要な荷物は成美ちゃんが探してみて。」
成美ちゃんの背中を後押しして部屋の中へと押し込む。
そして笑顔で見送ることにしたのよ。
「すぐに戻ってくるつもりだけど、私達もこれから自分達の部屋に戻るわ。準備を整えたら迎えに来るから、成美ちゃんも適当に荷物を集めて準備を進めておいてね~。」
「あ、はい。頑張ってみます。」
「うんうん。それでこそ沙織の妹よ!」
相思相愛の姉妹なんだから、
遠慮せずに好きな物を持ち出せば良いのよ。
「それじゃあ、またあとでね~。」
声をかけてから扉をしめて鍵をかけたわ。
もちろん内側からは簡単に開くけどね。
ひとまずこれで外から中に入ることは出来ないはずよ。
「でもこれって、力付くで突破されたら無駄な努力よね~?」
「ふふっ。」
何気なくぼやいてみた私の言葉を聞いて、
百花は小さく笑っていたわ。
「基本的に問題を起こすつもりで来るような人物は鍵なんて気にしないでしょうね。」
やっぱり百花も同意見みたい。
だから、かな?
百花は扉に背中を向けて静かにもたれかかったのよ。
「一応、私が警戒しておくわ。里沙は先に部屋に戻って荷物を用意して来て良いわよ。」
…ん~。
「じゃあ、そうしようかな?」
成美ちゃんの護衛は百花に任せることにしたの。
…って、言っても。
ここまでする必要はないかもしれないけどね。
だけど一応、御堂君に托されてるわけだし。
放っておくわけにはいかないわよね?
だからこれは必要な判断だと思うのよ。
「それじゃあ、行ってくるわね~。」
「ええ、待っているわ。」
短い挨拶を交わしてから百花に背中を向ける。
…沙織と同じ寮なんだけど。
…私は3つ上の階なのよね~。
全力で階段を駆け抜けるのは結構きつかったわ。
…まあ、文句を言っても仕方がないけどね。
小さくため息を吐きつつ自分は部屋を目指して走り続ける。
…ささっと用意して、早く戻らないとね~。
さすがに女子寮の中でキモイ兄貴に攫われるような心配はないから、
さっさと自室を目指すことにしたのよ。




