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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1464/1574

お父さん

…これでもう十分です。



3割にまで回復した魔力があれば、

竜崎一族に伝わる秘術が使えます。



…お父さんが最期に見せてくれた自己犠牲魔術。



それは美袋翔子さんや北条真哉さんが見せた最期と同種の秘術になります。



「私はもう…大切な人を失いたくありません。」



ゆっくりと北条さんを見上げました。


そして一度だけ微笑んだあとでセルビナ軍へと振り返ります。



「最後まで協力します。それが私の役目だからです。」



踏み出す一歩。


徐々に迫り来るセルビナ軍を眺めながら最期の魔術を展開しました。



…ごめんね、お兄ちゃん。


…生きて帰りたかったけれど出来ないみたい。



死にたくないって思うけど。



…だけど北条さんを置いて逃げることは出来ないよ。



…あの時のように。



お父さんを置いて逃げることはもう…出来ないんです。



だから私は覚悟を決めました。



「もう弱音は吐きません!私も最期まで戦います!」



両手に魔術を展開します。


そんな私の正面に北条さんが立ってくれました。



「…お前を死なせはしない。俺がお前の盾となろう。」



私を庇うようにルーンを構える北条さんの背中はとても大きくて。


とても頼もしく見えました。



…だから、というわけではないんですけど。



「あ、あの…。」



目の前に立つ北条さんに一つだけお願いしたいと思ってしまったんです。



「あの…。こんな時に言うべきことではないですけど。お父さん…って呼んでも良いですか?」


「………?」



自分でも変なことを言ってると思います。


ですが言わずにはいられなかったんです。



そうして返事を待つ私に、

北条さんは笑ってくれました。



「ははっ!好きにすれば良い。」



何の関係もない他人でしかないのに。


私の願いを聞いてくれたんです。



…だから。



だから言わずにはいられませんでした。



「お、お父…さん。」


「ははははっ!!」



呟いた私の言葉を聞いて、

北条さんは楽しそうに笑ってくれました。



「意外と悪い気はしないな。ぜひとも馬鹿息子の嫁に貰いたいものだ。」



楽しそうに笑ったあとで、

北条さんは優しく語りかけてくれました。



「娘を死なせるわけにはいかんな。我が子が死ぬのは…もう十分だ。」



………。



もう十分だと話す言葉の意味を私は知っています。


北条真哉さんが亡くなったことを私も知っているからです。



両親を失った私と、

息子さんを失った北条さん。



だから…かもしれませんね。



私達は同じ悲しみを知ってるんだと思います。



家族を失った悲しみを心に抱えて、

私達は今を生きているんです。



「守ります。絶対に死なせません。だから…生きてください。お父さん。」


「ははっ。良いむすめだな。」



必死に願う私の言葉を聞いて、

北条さんはとても楽しそうでした。



「実に守り甲斐がある。確か名は竜崎雪だったな?」


「あ…はいっ!」


「ならば雪と呼ばせて貰おうか。雪…例え何があっても親よりも先に死ぬな。それだけは心に誓え。そして一秒でも長く生き延びろ。それが真の親孝行というものだ。」


「…分かりました。約束します。」


「うむ。あと少しの辛抱だ。ランベリアの町は近い。そろそろ援軍も来るだろう。今はそれを信じてここでセルビナ軍を食い止めるしかない。」


「はいっ♪」



笑顔で答えてから魔術を切り替えて展開します。



「ダイダルウェーブ!!!!」



残り少ない魔力で生まれる津波でセルビナ軍の足止めを行いながら時間を稼ぐことに集中しました。



「援軍が来るまで持ちこたえます!」



自爆を諦めて宣言する私に同調するかのように、

反乱軍のみんなも魔術を発動させてくれています。



決して逃げることなく。


決して怯えることなく。


みんなも戦ってくれているんです。



…もしかしたら。


…お兄ちゃんにまた会えるのかな?



可能性は低いかもしれませんが、

諦めてしまえばそこで終わりです。


ですが諦めなければ願いは叶うのかもしれません。



…ここは守るよ、お兄ちゃん。



精霊を解除して通信が出来なくなった状況でも心の中で願いました。



…また、会いたいな。



お兄ちゃんとお姉ちゃんに…です。


それと…淳弥君にも。



…きっとまた、会えるよね?


…ずっと会ってないけど、また会いたいな。



そんなふうに思いながら、

最後まで戦うことを選びました。



「決して諦めません!!」



セルビナ軍が徐々に私達を取り囲もうとしていますが、

ここまで頑張って戦ってきたんです。


共和国軍の援軍が来るのを信じて戦い続けようと思います。



…範囲魔術はもう無理だけど。



少しずつでも数を減らせれば、

まだ持ちこたえられるはずです。



大魔術は諦めて小規模の魔術を連続で発動させました。


詠唱がいらない私の攻撃は先読みも回避も不可能です。


私の連続攻撃によってセルビナ軍の兵士達が次々と倒れてくれるのですが、

それでも数の差には勝てないようですね。



確実にせまりくるセルビナ軍。



…なのに。



私に残された魔力は…あと僅かでした。




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