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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1462/1574

誰も逃げない

《サイド:竜崎雪りゅうざきゆき



…なかなか思うようにはいかないですね。



セルビナ軍の包囲網を突破して国境から東に撤退した私達は、

ランベリアの町へと続く街道に布陣して再び防衛戦を行うことになりました。



「西の守りを固めろっ!!敵の進軍を許すなっ!!」



大声を出しながら部隊の指揮をとる北条さんの指示を受けて、

国境警備隊の方々がセルビナ軍に対して必死の防衛を試みています。



…ですが。



セルビナ軍は推定5万です。



対するこちらは私が率いる1000人と、

北条さんが率いる2000人のみ。



国境警備隊の死者はすでに1000人を越えていて、

まともな防衛網を維持することさえ出来ていません。



そして私の部隊も限界が近づいているようです。



私はまだ大丈夫なのですが、

私が率いている反乱軍のみんなの魔力はすでに底を尽きかけているからです。



意識を保つのが精一杯という状況の人達も数多くいます。



これ以上の無理は出来ません。



…だから。



今の私にできることは限られています。



「みなさんは撤退してください。ここで命を落とすわけにはいきません。生きてここを離脱して、お兄ちゃんを助けてあげてください。」



せめて撤退のための時間稼ぎを…と思ったのですが。


私の指示は聞き入れてもらえないようで、

誰一人として動き出そうとはしませんでした。



「…お願いです。撤退してください。」



もう一度願いました。


ですがそれでも誰も逃げ出そうとはしないんです。



それどころか。



「守るべき姫を置いて逃げる馬鹿はいませんよ。」


「我々は全力で姫を守るように指示を受けています。その姫を置いて逃げることなんて出来ません。」


「ここから逃げる必要があるとすれば、それは姫がここから離脱したあとです。」



…みんな。



私を守ろうとしてくれるみんなの言葉を聞いて、

泣いてしまいそうになってしまいました。



ですが、今は泣いている場合ではありません。



みんなを守る為に。


生きてここから離脱する為に。


私は私に出来ることをしなくてはいけないからです。



「全員生きてください。絶対に死なないでください。それだけが私の願いです。」



撤退が出来ないのなら戦うしかありません。



私が逃げ出せばそれで済むのかもしれませんが、

私にも部隊を率いる責任者としての意地があります。



任された任務を放棄して逃げ出すくらいなら、

最初から戦場に立とうなんて思いません。



「国境警備隊の背後について援護をお願いします!」



みんなに指示を出してから、

最前線に向かって精霊を走らせました。



「竜崎の名に賭けて!これ以上の横暴は認めませんっ!!」



精霊『麒麟きりん』の背中に乗り、

戦場を駆け抜けて魔術を展開します。



「ダイダルウェーブ!!!」



激しくうねる激流が雨を吸収して、

巨大化して大きな津波へと姿を変えました。


そしてセルビナ軍を西へと押し流します。



「うあああああああっ!!!」


「誰かっ!!助けっ!!!!」


「ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」



波に飲まれて流されていくセルビナ軍の前線部隊の接近を阻むために更なる攻撃を仕掛けました。



「レッドクリムゾン!!!」



突き出す両手から生まれる炎は私の体よりも数倍に大きく膨れ上がって、

直径10メートルを越える巨大な炎の球になります。



「知っていますか?雨の日の炎は…とても危険なんですよ。」



手加減抜きで放つの炎がセルビナ軍の中心付近に降り注ぎます。



地響きが鳴り響くほどの激しい爆発音が鳴り響き。


一気に燃え広がる炎によって数百人の命を奪った炎は瞬く間に燃え広がって、

火の海がセルビナ軍を飲み込みました。



…そして。



雨の影響を受けて勢いが弱まる炎なのですが、

消火と同時に発生する蒸気がさらに範囲を広げてセルビナ軍を包み込みつつあります。



「一気に殲滅しますっ!!」



宣言してから放つのは雷撃です。



「ディスチャージ!!!!」



空へと高く突き出した右手から生まれるのは雷の粒子です。


数千に及ぶ粒子は瞬時に肥大化して光の槍へと姿を変えました。



「手加減はしませんっ!!」



右手を振り下ろして全ての槍を放ちます。



『バチバチバチバチッ!!!!』と放電しながら雨の中を突き抜ける光りの槍の余波によって、

国境警備隊の方々にも少しだけ被害が出てしまうかもしれませんが、

そこは謝ることしかできません。



…ごめんなさいっ!



心の中で謝罪しつつ。


光りの槍がセルビナ軍を貫く瞬間を最後まで見届けます。



それは一瞬の出来事でした。



夜が迫って薄暗くなっていく空を『チカッ!』と光が瞬いて、

誰もが眩しさに目を閉じた次の瞬間に。


セルビナ軍を包み込んでいた蒸気と融合した雷撃が、

直径1キロ圏内の全ての人達を標的として広がっていったんです。



「っづぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「ぐぅぅぅぅっっっっ!!!!」


「がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」



戦場に響き渡る数千の悲鳴。


炎と雨と蒸気と雷撃。


複合魔術による絶望がセルビナ軍の部隊の1/3を飲み込んで、

1万を越える死者を出していました。




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