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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1459/1579

私のせいで

《サイド:常盤成美》



御堂さんと二人で校舎を離れてからしばらくして、

検定会場と呼ばれる場所にたどり着きました。



「あそこだよ。」



全力で走り続ける御堂さんの視線の先にはとても大きな建物があって、

その入口に見覚えのある人達がいます。



名前は覚えていませんけれど。


学園の偉い人だったと思います。



「もう少しだからね。」



御堂さんは私を背負ったまま走り続けて、

検定会場の入口の近くで降ろしてくれました。



「着いたよ、成美ちゃん。歩けるかい?」


「あ、はい。大丈夫です♪」



ちょっぴり熱っぽくて体がふらふらする感じはありますけれど。


動けないというほどではありません。



「ちゃんと歩けます♪」



笑顔で返事をしてみたところで。



「御堂さんもご無事でしたか。」


「こっちは雑魚の相手でウンザリだったけどね~。」


「ご苦労さまです。」



話し掛けてきた二人に笑顔を見せてから、

御堂さんはそっと頭を下げていました。



「琴平さんと桜井さんもお怪我はありませんか?」


「ええ、健康そのものですよ。もちろん中にいる方々も全員無事です。」



丁寧に答えてくれた琴平さんに続いて、

桜井さんも話を聞かせてくれました。



「戦えない人達を人質にでもしようと思ったんでしょうけどね。全員返り討ちにしてあげたわ。」



誇らしげに胸を張る桜井さんの視線の先には、

地面に倒れている沢山の人達の姿があります。



「この人達を…全員ですか?」


「え…?あ、あははは…っ。」



尋ねてみたのが良くなかったのでしょうか?


桜井さんは苦笑しながら否定していました。



「違うわよ。大半は米倉元代表の魔術で死亡しただけで、私が倒したのはホンの一部よ。」



全部ではないそうです。


指を折りながら数を数えているようでした。



「ざっと数えて15人くらいかしら?まあ、重郎と二人で…だけどね。」



控えめに答えてくれた桜井さんの笑顔は、

何となくお母さんを見ているようなそんな感じがします。



…あ、いえ。



たぶんお母さんよりも若いとは思いますけど。


同じような雰囲気が感じられるんです。



「ふふっ。」



優しそうな人だと思う私に微笑んでくれた桜井さんは、

私の手を引いて建物の中へと案内してくれました。



「お父さんとお母さんを捜してるのなら、中にいると思うわよ。」


「あ、はい。捜してみます。」



私の手を引く桜井さんに連れられて、

建物の中へと歩みを進めることになりました。



…どこにいるのかな?



桜井さんに手を引かれながら建物の中に入って室内を見回していると。



「おお!成美!無事だったか!」


「良かったわ、成美。無事だったのね。」



すぐ近くにいたみたいで、

お父さんとお母さんが駆け寄ってきてくれました。



二人とも怪我はしていないようです。



私を心配して抱きしめてくれるお父さんとお母さんに、

まずは「ただいま」と答えました。



…良かったよ〜。



お父さんとお母さんが無事で良かったです。



「ふふっ。良かったわね。」



道案内をしてくれた桜井さんは、

私達に微笑んでから離れて行ってしまいました。



その後ろ姿を見送りながら、

何気なく入口に視線を向けてみると。


御堂さんは中に入らずに、

遠くから私を眺めている様子でした。



…多分きっと。



私を見守ってくれているんだと思います。



お父さんとお母さんにちゃんと話をするのを待ってくれているんだと思います。



以前、お姉ちゃんがそうしたように。


今度は私がお父さんとお母さんにお別れを伝えるのを見守ってくれているんだと思います。



…きっと、そういうことだよね?



ちゃんと私が自分の意思で話をするまで、

離れた場所から見守ってくれているんだと思うんです。



…だから。



私もちゃんと向き合おうと思います。



かつてお姉ちゃんがそうしたように。


今度は私が向き合おうと思うんです。



…そのために。



お父さんとお母さんに話し掛けることにしました。



「…ねえ、お父さん、お母さん。あのね。怒らないで聞いて欲しいの…。」



控えめに願う私をお父さんとお母さんは不思議そうに見つめています。



「どうかしたの?」



お母さんは心配してくれています。



「何かあったのか?」



お父さんも不安そうな表情でした。



…それでも。



私は伝えなければいけないんです。



私を抱きしめてくれるお父さんとお母さんの温もりを感じながら、

私は私の気持ちを伝えることにしました。



「あのね。お父さん、お母さん。私ね…お父さんとお母さんが大好きだよ。だからね、あのね。私…私ね…。」



一言、一言を言葉にする度に溢れる想い。



自然とこぼれ落ちる涙を必死に堪えながら、

私は別れを選びました。



「…あのね。私ね。しばらく出掛けようと思うの。お姉ちゃんがそうしたように…私にも出来ることがあると思うから…だから私もね…。」



上手になんて伝えられません。


お姉ちゃんと同じようには出来ないんです。



どう話せば良いのかが分からなくて。


想いが言葉に出来なくて。


それでも伝えたくて。


もどかしい思いを感じながら必死に言葉を続けようとする私を見ていたお父さんとお母さんは、

私の体をぎゅっと抱きしめてくれました。



「どこに行くつもりなんだ?」



お父さんが聞いてくれましたけれど。



「…いや、聞かないでおこう。聞けば成美を引き止めてしまうだろうからな。成美の気持ちは十分に伝わった。だから、それだけで良いんだ。」



お父さんは何も聞かない代わりに、

涙を堪えながらそっと微笑んでくれました。



…そして。



「成美…。あなたまで行ってしまうのね。」



お母さんは俯いてしまって、

悲しみの涙を流していました。



…私のせいで、です。



私のせいで、

お父さんとお母さんが泣いているんです。



そう思うだけでとても胸が苦しくなって、

とてもせつなくなって、

とても辛く感じてしまいました。



…だけど。



そんな私を強く抱きしめてくれるお父さんは、

優しい声で話し掛けてくれたんです。



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