それはそれ。これはこれ
《サイド:鈴置美春》
『ブォォォォォーーーーーン!!!』
『ブォォォォォーーーーーン!!!』
『ブォォォォォーーーーーン!!!』
突然鳴り響いた警報音は、
町中に響いているように思えたわ。
「これって集合の合図かな?」
「かもね~。」
呟く私に千夏が答えてくれたのよ。
「さっきから町が騒がしいし、何かあったのんじゃない?」
…ああ、確かにね。
千夏の言葉を聞いて私も考てみたわ。
…何かあったのかしら?
やたらと海軍の人達が走り回ってたような気がするのよ。
私の家はジェノスの南西の隅っこのほうだから、
北側にある学園や離れた町中で何かがあってもここにいると分からないわ。
ジェノスの内部でも、
わりと静かなこの辺りの住宅街では詳しい状況が分からないのよ。
「気になるわね。」
疑問を感じるけれど。
忙しそうに走り回る海軍の人を引き止めてまで確認しようとは思わないわ。
声をかけたくらいで迷惑ってことはないでしょうけど。
気になるっていうくらいで邪魔をする気にはなれないからよ。
「どうするの?美春。」
…って。
聞かれても、選択肢は一つしかないわよね?
「とりあえず港に集合すれば良いんじゃない?」
それしか思い付かないし。
今から学園に向かうのは時間がかかるし。
港に着いてから話を聞いたほうが圧倒的に早いはず。
…ここから港までは10分くらいで行けるしね。
ひとまず準備を始めることにしたのよ。
「荷物をまとめてから港に向かいましょう。」
「うあ~。またしばらく海の上の生活なのね~。」
ぼやく千夏だけど。
元気付ける方法は知っているわ。
「また御堂先輩に会えるんじゃない?」
「そ、そうよねっ!それだけが唯一の楽しみよねっ!!」
嬉しそうにはしゃぐ千夏の姿を眺めながら準備を進めていく。
…まあ、ほとんどは鞄に詰め込んだままだからそんなに慌てる必要はないんだけどね。
すでに準備万端と思う私とは対照的に、
千夏は全力で荷物をまとめていたわ。
「あのね~。片付けをしないで適当に放置してるから慌てるのよ…。」
呆れてしまうんだけど。
「まあまあ、良いじゃない。」
千夏は楽しそうに荷物をまとめながら笑っていたわ。
「ふう。別に良いけどね…。」
ドタバタと暴れているようにしか見えないけれど。
それでも千夏は楽しそうに見えるのよ。
「そんなに御堂先輩に会いたいの?」
「ん?あはははっ。違うわよ。」
千夏は首を左右に振っていたわ。
「そうじゃなくて、美春と一緒に出掛けられるから楽しいのよ!内容はともかく、こうして一緒に頑張れるのが楽しいの。美春はそうは思わない?」
…う~ん。
…どうかしらね?
「これが単純な旅行なら、それでも良いと思うけど…。」
…実際にはそうじゃないのよね。
少し言葉に迷ってしまったわ。
千夏の気持ちは分からなくもないけれど。
そういう風に割り切ってしまうと、
色々と問題がある気がするから。
「あくまでも医師として参加するんだから、浮かれるのは良くないと思うわよ?」
「だから、それはそれ。これはこれでしょ?」
…はぁ?
良く分からない言葉だったわ。
私が何を言っても、
千夏の考えは変わらないのかもしれないわね。
…まあ、良いけど。
召集がかかったからと言って『一分一秒を争う』というわけでもないし。
少しくらい時間がかかっても特に害はないはずよ。
…とりあえずは千夏の準備待ちね。
焦っても仕方がないし、
千夏の準備が終わるまで黙って待つことにしたの。




