優奈よりも…?
《サイド:御堂龍馬》
校舎の屋上から階段を下り続けて一階に戻ってきた。
そして僕と成美ちゃんは、
ひとまず校舎から外に出ることにしたんだ。
今でもまだ救急班によって医務室に運び込まれていく生徒達の姿や、
状況が理解出来ずに戸惑い怯える生徒の姿があちこちで見られるけれど。
彼等に状況を説明している暇はない。
今も鳴り続ける警報に耳を傾けながら、
成美ちゃんの手を引いて走り出すことにした。
「検定会場へ急ごう!」
「は…はいっ。」
ご両親に会いに行くために走る僕に手を引かれて成美ちゃんも走ってくれているけれど。
………。
成美ちゃんの速度はあまり速くない…というよりも遅かった。
たぶんだけど…深海さんよりも遅いんじゃないかな?
…とは言え。
これは仕方がないのかもしれない。
おそらく今まで『走る』という経験がなかったと思うから。
そんな成美ちゃんに急げと言うほうが無理がある。
遅くても必死に走る成美ちゃんに文句は言えない。
「成美ちゃん、大丈夫かい?」
「え?あ…は、はい…っ!大丈夫です。」
息を切らせながら答える成美ちゃんの表情は熱を帯びているように思えた。
…もしかして?
成美ちゃんはまだ体調が戻っていないのかもしれないね。
ある意味で過労だから。
少し寝たくらいでは完治は難しいと思う。
「ちょっと、ごめんね。」
足を止めてから成美ちゃんの額に手を当ててみる。
「え?あ、あの…。私…」
僕の行動に戸惑う成美ちゃんだけど。
やっぱりまだ熱があるように思えた。
…この状態で走るのは無理があるかな?
本人がどう思うかに関係なく、
僕の判断としては危険に思えるんだ。
…どうせ速度が低下するのなら。
成美ちゃんに背中を向けて、
成美ちゃんの体を背負うことにした。
「え?あ、あの…っ、私…っ!」
僕の背中で慌てる成美ちゃんに出来る限り優しく語りかけておく。
「良いんだよ。無理をしなくて良いんだ。」
「はぅぅぅ…。」
恥ずかしそうに小さな声で呻く成美ちゃんをしっかりと抱える。
「少しの間だけ掴まっていてね。」
声をかけてから走り出す。
桜井さんと琴平さんがいるはずの検定会場。
そこに成美ちゃんのご両親もいるはずだからね。
急いで移動することにしたんだ。




