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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1452/1587

281

…えっと?


…あれ〜?



私の予想としてはね。


二人きりになった瞬間にね。



『色々』と危険なことになると思っていたのよ。



それなのに。


美咲さんは表の顔?のままで、

優しく接してくれていたわ。



「ひとまず食事はあとで用意するとして…。家まで荷物を取りに戻るのなら、そのあとでこれからのことを話し合いましょう。訓練についてもそうだけど、方向性に関しても詳しく知りたいでしょう?」



…そ、それはまあ。


…そうなんだけど?



予想と違う展開のせいで、

どう対応すればいいのか悩んでしまったのよ。



「えっと…?それじゃあ、よろしくお願いします?」



とても優しい笑顔で接してくれる美咲さんからは悪意なんて感じられないわ。



全力で感じていた危機感も、

今は完全に消え去っているのよ。



…ものすごく普通よね?



どう見ても美咲さんは普通に見える。



…もしかして気にしすぎだったのかな?



笑顔で優しく見守ってくれている感じ?



…う~ん。


…何て言うのかな?



魔性とか悪女とかそんな雰囲気は微塵もなくて、

保母さんというか聖職者的な?



むしろ聖女級の微笑みなのよ。



この顔しか知らなかったら、

間違いなく信者になっていたでしょうね。



溢れ出る聖輝?聖光?



表現が難しいけれど。


存在そのものが女神様に思えるくらいに輝いて見えるの。



…何だか逆に落ち着かないわね。



予想に反する行動のせいで余計に不安を感じてしまうわ。



「…えっ~と。とりあえず私はどうしたら良いですか?」


「そうね~?一旦、荷物を取りに帰って良いわよ。この部屋の場所と番号さえ覚えておいてくれればそれで良いから。」



…場所と番号?



怪しい展開は何もないまま、

ここで一旦、解散っていう流れみたい。



「部屋の番号は覚えてるかしら?281番で『二人は一つ』って覚えるのよ♪」



…うっわ〜。



何て嫌な覚え方なの?


もっと他の表現はなかったのかな?



明るい笑顔で番号を教えてくれた美咲さんは、

あっさりとこの部屋の鍵を私に貸してくれたのよ。



…ん~。



『二人は一つ』って、

『(2)人(8)(1)つ』ってことよね?



覚えやすいようで、覚えにくいような不思議な感じ。



むしろ素直に281で良いと思うわ。



「一応、覚えました。」



美咲さんから部屋の鍵を受けとって、

しっかりと握り締める。



「またここに戻ってくればいいんですよね?」


「ええ、そうよ。その間に私は晩御飯の用意をしてくるから、乃絵瑠ちゃんはお家に戻って荷物を用意してきて良いわよ♪」


「あ…はい。分かりました。」



美咲さんに背中を向けてから部屋を出ようとしたところで。



「入口のところに傘があるから、持って行って良いからね~♪」



あっさりと私を見送ってくれたのよ。



「ありがとうございます。それじゃあ、お借りして行きますね。」



部屋の入口に立て掛けてある傘を手にして部屋を出る。



そうして通路に出た私に、

美咲さんは小さく手を振ってくれていたわ。



「またあとでね~♪」


「あ、はい。すぐに戻ります…って言っても、往復で1時間くらいかかると思いますけど?」


「大丈夫よ♪そのくらいの時間に食事が出来るように調整しておくわ♪」


「あ、はい。ありがとうございます。」



短い挨拶を終えて美咲さんと別れる。



そして一階へと続く階段を目指して歩きだした私の背後から。



「ちゃんと準備をしておくわね♪乃・絵・瑠・ちゃん♪」



…うあっ!?



美咲さんが声をかけてくれた瞬間にね。


『ゾワゾワッ!!!』って悪寒が駆け巡ったのよ。



…うあぁぁぁっ!!!



…す、すごく、嫌な予感がっ!?



恐怖を感じた私は足早に美咲さんから逃げ出してしまったわ。



…ほ、本気で帰りたいかもっ!!



急ぎ足から駆け足へ。


そして全力疾走へと変わる勢いで美咲さんからの離脱を急いだのよ。



…でもね?



結局、ここに戻って来るんだから無駄な努力のような気がするわ。



むしろ急げば急いだ分だけ、

ここに戻って来るのが早くなるだけよね?



…もういいや。


…ゆっくり帰ろ。



とりあえず走るのは止めたわ。


せめて今だけでも心を休めたいのよ。



心の底から平穏を願いながらギルドの入口に戻ってみる。



…だけどね。



憂鬱な気持ちはさらに悪化してしまったわ。



「はあ…。雨が止む気配が皆無よね?」



今もまだ全力で降り続ける雨は、

ここへ来た時以上に勢いを増しているような…そんな気さえするのよ。



「でもまあ、色々な意味で洗い流したいかも?」



ここでの思い出の全てをね。


なかったことにしたい気持ちになったのよ。



…とは言え。



過ぎたことを歎いても現実は変わらないわ。



「とりあえず帰ろうかな。」



傘を開いて、外へと踏み出すことにしたの。



『ザアアアアアアアッ!!!!!』と、

容赦なく降り注ぐ雨が傘を強く打ち付けてくる。



「さすがに人が少ないわね~。」



雨の町は人気が少なく感じるわ。


傘を持たずに大慌てで走り抜ける人や、

水溜まりを避けてゆっくりと歩みを進める人達の姿は見えるけど。


普段と比べるとかなり少ないわね。



「う~ん。家に戻ったら、靴も履き変えないといけないわね。」



雨でびちょびちょの靴を履き続ける気力なんて私にはないわ。



…早く帰ろう。



雨から逃げるために?


美咲さんから逃げるために?



家路を急ぐことにしたのよ。




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