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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1451/1605

危険信号

《サイド:文塚乃絵瑠》



カリーナ魔術師ギルドの地下から1階に戻って、

今度は2階へと続く階段を上がって行く。



「ちゃんと着いてきてね。」


「あ、はい。」



広くも狭くもない通路を迷うことなく進んでく美咲さんの後ろを歩いているんだけど。


ギルド内を行動している人達とすれ違う度に、

ささやかな疑問を感じてしまうのよね~?



こうして普通にしていると普通の人に見えるのに。


どうしてあんなにも性格が変わっちゃうのかな?なんて思ってしまうのよ。



時折すれ違う人達に優しい微笑みを向ける美咲さんの笑顔は超絶完璧で、

清楚な立ち振る舞いと優しさを込めた瞳を見た人達はみんな笑顔で通り過ぎて行ったわ。



…うぅ〜ん。



これがギルド内において絶大な信頼を勝ち得てる美咲さんの表の顔ってことよね?



私とは全く違う対応なのよ。


その差を感じるからこそ、

激しい不安も感じたりもするんだけどね。



ここまで『裏表』に差がある人は珍しい気もするわ。



…でもね〜?



これってどうなのかな?



決して普通だとは思わないけれど。


誰だって裏表くらいはあると思うのよ。



…多分、だけど。


…ある、わよね?



…ん〜?



良く分からない気もするかな?



それでもね。


何となくみんなのことを考えてみると…ちょっと違う気がするかも?



彩花はないと思うのよ。



…むしろ。



裏しかない感じ?


表向きの顔なんて見たことがないわ。


だから裏表がないと思うんだけど。



あずさの場合はないって断言できるわ。


奈々香もなさそうだけど。


未来はどうなのかな?



難しい判断だけどね。



自分に正直に生きる彩花は裏表がないはず。


彩花と出会ってから今に至るまでその辺りに差を感じたことは一度もないわ。



そして自分の想いを一切隠すことなく、

常にまっすぐに表現出来るあずさも裏表という言葉からは遠い気がするのよね〜。



奈々香はどうかな?


そもそも何を考えてるのか分からないけれど。


実はものすごく話をする子…なんてことは絶対になさそうよね?



奈々香は何があっても、

あのままな気がするわ。



そう考えると未来だけはありそうな気がするかも?


まあ、未来は4人の中ではまだ普通の子だしね。


それなりにあってもおかしくはないと思うのよ。



…って言っても。



世間一般から見たら未来も十分すぎるくらい変わった子かもしれないけどね。



…と、まあ。



そんなふうにね。


一通り考えてから、

今度は自分のことも考えてみることにしたの。



…私はどうなのかな?



もちろん自分ではないと思っているわ。


あったとしても美咲さんほどの落差はないはずよ。



…表の顔と裏の顔よね?



ここまで完璧に使い分ける美咲さんは完全な悪女だと思う。



『魔性の女』なんて恰好良い言葉よりも、

『悪女』と言った方がぴったりだと思うのよ。



…だってそうでしょ?



美咲さんには絶対に『悪意』があるわよね?



…まあ。



悪意とまでいかなくても、

意図的に使い分けてる時点で確信犯だし。



いたずら好き?って言うか…何て言うか。


激しく変わった人だと思うのよ。



もしもこんなお姉さんが傍にいたら、

一日中、疲れるでしょうね。



そんなふうに思うからこそ、

奈々香の性格が構築された理由が分かる気もしたわ。



…心を閉ざしたくなるのも当然かな?



普段は全く話をしない奈々香だけど。


多分それは美咲さんとの会話を拒絶する心の現れなのかもしれないわね。



…私でも黙り込んで放置する気がするかも?



一切の会話を断って、

関わらないことを選ぶ気がするわ。



…だとすると。



今の奈々香の性格は美咲さんに対する自己防衛なのかな?



もしもそうなら奈々香が可哀相に思えてくるわね。



…今日まで知らなかったけど。



奈々香も苦労してたのね~。



事実はどうか知らないけれど。


きっとそういうことだと思うのよ。



学園に戻ったら優しくしてあげようかな?なんて考えていると。



「着いたわよ~っ♪」



何故か美咲さんはとても嬉しそうな笑顔で私に部屋を示してくれたわ。



ささっと扉を開いて中に案内してくれる美咲さんだけど。



………。



美咲さんと二人で一緒に部屋に入ることに対して絶大な不安を感じてしまうのよね。



心の底から危険信号を感じるのよ。



体全体で感じてしまう異様な恐怖感。


尋常じゃない冷や汗が全身から溢れ出してくるの。



…すっごく、嫌な予感がするわ。



そのせいで入口で足を止めていると、

美咲さんに手招きされてしまったのよ。



「そんな所で遠慮しなくていいのよ。乃絵瑠ちゃん♪」



…うあぁぁぁぁぁぁっ!!!!!



美咲さんに呼ばれた瞬間に、

心臓が凍り付きそうなほどの悪寒を感じてしまったの。



…は、入れないっ!!



恐怖ですくみ上がる体。


何故か足の震えが止まらなかったのよ。



…こ、怖いっ。



全身が危険を訴えてる。


ここには絶対に入ってはいけないって体が訴えているのよ。



これはもう直感と言うか…本能と言うか。



とにかく何かが危険を訴えていたわ。



…や、やっぱり家に帰ろうかな?



なんて思うよりも先に。



「さあさあ♪」



目の前の美咲さんに手を引かれてしまって、

強制的に室内に拉致られてしまったのよ。



…うぅぅぅっ!!!!!!



言葉にならない恐怖。



部屋の奥へと連れ去られた私は逃げ場を失ってしまったわ。



…か、鍵っ!!


…鍵は開いてたよねっ!?



錯乱する思考。


それでもその一点に心の底から願いを込めてしまう。



…危なくなったら即逃走っ!!



なんて、必死に退路を探していると。



「今日からしばらくの間は、この部屋を自由に使って良いわよ♪特に期限も決めてないから、ゆっくりして良いからね♪」



美咲さんは優しい笑顔のままで、

ごくごく普通に部屋の案内をしてくれたのよ。






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